西暦2000年も何とか無事に幕が開き、1月も半ばを過ぎようとしている。昨年7月22日、静岡県で第1回目の情報公開懇話会が開かれてから、半年が過ぎたことになる。この間、10月には、同じように閲覧手数料を取っていた岡山県が、閲覧手数料を廃止。東京都では、1月1日から、1枚10円、1件あたり100円を限度とする閲覧手数料を定めた新条例が施行となった。
もう一つ、公益目的の請求の場合に閲覧手数料の免除を認めているため、実質的には無料に近くなっている香川県を除くと、1件あたり200円という閲覧手数料を定めている都道府県は、ついに静岡県だけとなってしまった。1件200円の閲覧手数料をなぜ問題にするのか、それはただ金額が高いというだけではない。
第1に、1件の数え方が「事務手続を一にする」という基準により算定されるために、何回の決裁が行われたか、書類の作成された状況などの、請求とは無関係の内部の事情により、件数が左右され、それによって、ひとつの請求であっても莫大な手数料が課される場合が出てくることに大きな問題がある。
静岡県の場合、これまでに最高の閲覧手数料を徴収した例は、平成5年度の財政課、秘書課、東京事務書の食糧費のケースで、文書件数1,003件、文書枚数1,775枚で、閲覧手数料200,600円、コピー代53,250円、合計253,850円を徴収した例があるという。
この後、静岡県は平成9年5月から食糧費の支出に関する公文書は原則公開とし、県民サービスセンターで誰でも閲覧することができるようになった。これ以降も、監査調書関連の文書や業務棚卸表などを対象に、公開の範囲は徐々に広がってはいるものの、この閲覧手数料の算定方法は現在も続いている。
カウントの仕方によっては、1つの請求で、1冊のファイルに閉じられた単純な冊子に見えても、1枚づつ決裁を取られていると判断されれば、1件あたり200円で、何万円にものぼる閲覧手数料が徴収されることになるのだ。さすがに、昨年暮に行われた、改正条例について審議する情報公開懇話会においても、このような手数料の取り方が適切でないという考えは、ほとんどの委員においてほぼ共通の認識になっていたようで、閲覧手数料は廃止すべきという意見が大勢を占めていた。
しかし、懇話会の答申が3月に出される予定とはいっても、これから条例改正に至る道のりは長い。仮に県が改正を急いだとしても、答申を待って、まだ庁内の議論も行われていないという状況で、改正案すらできていない現段階では、規則や運用の規定を含めて考えると、最悪の場合、今後、あと1年以上もこの制度が存続することもありうるという。
正真正銘のビリの汚名を着て、静岡県は、競争相手もなくなった孤独のランナーのまま、これからまだ1年以上も走り続けることになってしまうのだろうか。他の都府県で採用されなかったり、廃止された制度が、これほどまで遅れたまま続いている原因はどこにあるのか。それを考えると、情報公開条例の改正問題の背景に、いくつかの問題が浮かび上がってくるような気がする。