200362

 

厚生労働省労働基準局
安全衛生部化学物質調査課 御中

 

 

厚生労働省が、平成1552日から意見募集を行っている「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案」について、別紙のとおり意見を提出します。

      氏名 住所  (略)

 

 


 

−意見の概要(意見は別紙に記載する)−

 

T 「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案」について

 

【意見1

現行の施行令第16条において、製造等が禁止されている有害物質に定められているアモサイトとクロシドライトを、その他の石綿も含めてまとめて「石綿」とし、現時点で代替化が困難と判断される製品を限定的に除外する形で条文の改正を行うべきである。

【意見2

禁止の除外となる製品の特定は、今後速やかに行われる必要がある。

ただし、現段階では困難であることを考慮した場合、施行令附則に経過措置についての規定を設け、特定までの時期をある程度猶予することが適切と考える。

【意見3

禁止の除外となる製品の特定はいつまでに行われるか、時期を明示するべきである。

具体的には、平成15年度中を目処に行うことが適切と考える。

それとともに、除外品の見直しは何年ごとに行われるのかを明示する必要がある。

 

U 意見募集のあり方について

 

【意見】

今後の意見募集にあたっては、概要だけではなく、改正案自体を示して意見を求めるようにするべきである。

意見募集にあたっては、検討事項に対する厚生労働省の考え方が明確になるように、改正案についての説明を添付することとし、その中で、改正案の提出にいたった背景、根拠、特に検討を要する問題点等を示して、国民ができるだけ意見を提出しやすいように、意見募集のあり方を改めるべきである。

 

以上



(別紙)

「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案」についての意見

 



T 「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案」について

 

【意見1

 

現行の施行令第16条において、製造等が禁止されている有害物質に定められているアモサイトとクロシドライトを、その他の石綿も含めてまとめて「石綿」とし、現時点で代替化が困難と判断される製品を限定的に除外する形で条文の改正を行うべきである。

具体的には、施行令第16条を次のように改正することが適切と考えられる。

 

*現行

労働安全衛生法施行令

(製造等が禁止される有害物等)

16条 法第55条の政令で定める物は、次のとおりとする。
4
.アモサイト
5
.クロシドライト

*改正後

4.石綿、ただし、次に掲げる物を除く。

イ 耐熱・電気絶縁板に用いられるクリソタイル(国民の安全確保等の観点から石綿の使用が不可欠な物として厚生労働省令で定める耐熱・電気絶縁板に限る。)
ロ ジョイントシート・シール材に用いられるクリソタイル(国民の安全確保等の観点から石綿の使用が不可欠な物として厚生労働省令で定めるジョイントシート・シール材に限る。)

 

 

【理由】

 

今回の提案では、「製造、輸入、使用等が禁止される物」として、「石綿を含有する製品のうち、押出成形セメント板、住宅屋根用化粧スレート、繊維強化セメント板、窯業系サイディング、石綿セメント円筒、断熱材用接着剤、ブレーキ及びクラッチに使用される摩擦材」があげられている。

 このような形で施行令の改正が行われた場合には、一部の石綿含有製品の製造等が禁止されるだけで、石綿の原則的な禁止とはならないことになる。

 

石綿は、最盛期には3000種類もの製品に使われたといわれるほど使用される範囲が広く、これまで、理科の実験金網から、ドライヤー、防塵マスクやタバコのフィルター、ベビーパウダーに至るまで、幅広い日常的な生活製品に使われてきた。

現在では次第に代替化が進み、石綿は使われなくなっているといわれているが、製品の種類やメーカーは多岐に及び、輸入される商品も多いうえ次々に新しい製品が流通するため、実際に使用されていないことを確認することは難しい状況にある。


特に、吹き付け石綿は1975年に原則的に禁止されたといわれているが、現在でも石綿含有の吹き付けが行われている可能性は残されている。原則禁止といっても、「吹き付ける作業に労働者を従事させてはならない」と定められているだけで、送気マスク等の保護具を使用する等の措置を講じれば従事させることができるとされている。このようなことから、現在もなお石綿の吹き付けが行われている可能性が指摘されている。

それ以外にも、繊維強化プラスティック(WTOの裁定文書の中で使用例としてあげられている)、木造住宅の壁材(けいそう土を含む保温材は廃棄物処理法上で規制対象になっており、木造住宅の壁材には同種の材料が使用されている)、浄水器の濾過材や化粧品(タルク等のパウダー状の鉱物が使われている製品があり、タルクには石綿を含有している場合があることが知られている)、バーミキュライトなどの土(アメリカのモンタナ州リビーで石綿含有のバーミキュライトが大勢の被害者を発生させて問題になっている)等々、石綿含有の製品が現在も流通している可能性は否定できない。


また、石綿布・石綿糸について、代替化検討委員会の報告書では、「シール材等として使用されるか、二次的にシール材等に加工されることから、シール材等の代替可能性に連動すると考えられる」とされているが、石綿を使用した防火服や防火用手袋が他国では禁止の除外品とされていることなどを考えると、現在の防火服には使われていないとしても、断熱用の布や紐等として使用されることもありうると考えるべきである。

このように、現在でも石綿の用途は広範囲に及んでいる可能性があり、今後の流れによっては、輸入品などに混じっていろいろな形で流通する可能性も十分に考慮する必要がある。

 

「石綿の代替化等検討委員会報告書」では、冒頭、この間の経緯について、「厚生労働省では、国民の安全等にとって石綿製品の使用がやむを得ないものを除き、原則として、使用等を禁止する方向で、検討を進めることとした」としていた。

石綿は、吸入することにより人に石綿肺、肺がん、中皮腫を発生させることが明らかになっている」ことを前提に、原則として使用等を禁止する方向で検討を進めてきたのにもかかわらず、最終的な結論を出す時になって、広範囲に使用される可能性があることを承知していながら、石綿そのものを禁止せずに一部の石綿含有製品だけを禁止するにとどめるのであれば、国民の理解はとうてい得られるはずはない。


不合理で現状にそぐわない政策決定を行えば、厚生労働行政全体に対する不信感が強まるばかりか、法的な規制と実態との乖離がますます広がってしまうことになる。

政策的な一貫性という点からみても、多くの人にとって理解しやすくわかりやすい政策がとられるべきであることからしても、石綿自体を禁止物質とし、現時点で代替化が難しい製品だけを除外する方向で、施行令の条文を改正するべきである。

 

 

【意見2


禁止の除外となる製品の特定は、今後速やかに行われる必要がある。

ただし、現段階では困難であることを考慮した場合、施行令附則に経過措置についての規定を設け、特定までの時期をある程度猶予することが適切と考える。

具体的には、改正後の労働安全衛生法施行令附則に次のような条項を加えることが考えられる。

 

 労働安全衛生法施行令 附則

*追加

(製造等が禁止される有害物等に関する経過措置)

第○条

平成十六年三月三十一日までの間に製造される、耐熱・電気絶縁板、又はジョイントシート・シール材は、改正後の労働安全衛生法施行令第十六条第四号イ、又はロに掲げる、国民の安全確保等の観点から石綿の使用が不可欠な物として厚生労働省令で定める耐熱・電気絶縁板、又はジョイントシート・シール材に該当するものとする。

 

 

【理由】

 

「石綿の代替化等検討委員会報告書」では、耐熱・電気絶縁板、及びジョイントシート・シール材について、「現時点で代替可能なものと代替困難なものを温度等の使用限界や使用される機器の種類等から明確に特定することは困難である」等としている。


だが、アンケートやヒアリングによる個々の製品についての検討結果では、耐熱・電気絶縁板、ジョイントシート・シール材の中には代替化が可能と考えられる製品も多くあることがわかったとしている。特に、耐熱・電気絶縁板については、メーカーは石綿製品の使用が不可欠とは回答していなかったということである。

 このような検討を行いながら、耐熱・電気絶縁板、ジョイントシート・シール材はすべて禁止の対象から除外し、「明確に特定することは困難」としてそれ以上踏み込んだ判断を行わない結果に終わってしまうのであれば、専門家の委員会としての役割が十分に果たされているとは考えられない。

報告書資料4の「海外の石綿の禁止措置の比較」を見てもわかるように、各国では、さまざまな検討を行って、使用禁止の例外とする製品の種類を厳しく絞り込んでいる。

 

 諸外国で、このような困難な課題に対しても一定の判断が下されている事実を参考にしていながら、このような結論だけですませそうとしているとすれば、たいへん残念である。

問題なく代替化できそうなものだけを列挙しただけで、すでにほとんどは使われていない分野で業界の反発もまず受けないだろうと思える範囲を、専門家が集まって確認しただけに終わってしまうことはできないはずである。

  今後、早急に検討を行い、本年度中くらいをめどに、現時点で禁止の除外とする製品の特定を行うべきである。

 施行令の改正にあたっては、附則の中に、このような内容の経過措置を定めた規定を設けるのが適切だと考える。

 

 

【意見3

 

禁止の除外となる製品の特定はいつまでに行われるか、時期を明示するべきである。

具体的には、平成15年度中を目処に行うことが適切と考える。

それとともに、除外品の見直しは何年ごとに行われるのかを明示する必要がある。

 

 

【理由】

 

 検討委員会は、ジョイントシート・シール材について、「黒鉛等の非石綿製品への代替化が可能なものがあると考えられるが、一部のものについては、安全確保の観点から石綿の使用が必要とされており、現時点で代替可能なものと代替困難なものを温度等の使用限界や使用される機器の種類等から明確に特定することは困難である」とした。

 また、耐熱・電気絶縁板については「非石綿製品への代替化が可能なものがあると考えられる」としている。

このような代替可能な製品も含まれているので、現時点で特定することが困難であるとしても、耐熱・電気絶縁板、及びジョイントシート・シール材をすべて除外することは妥当とはいえず、今後早急に特定すべきことは当然と思われる。

現段階では、少なくとも、いつまでに特定を行うのか、時期だけは明確にしておく必要がある。

また、代替化可能な状況は変化していくわけであるから、今後も検討は継続して続けられる必要がある。それはどのような形で続けられるのか、見直しはどの程度の期間ごとに行われるのか、現時点でそれらの点を明らかにしておくべきである。

 

 

U 意見募集のあり方について

 

【意見】 

 

今後の意見募集にあたっては、概要だけではなく、改正案自体を示して意見を求めるようにするべきである。

意見募集にあたっては、検討事項に対する厚生労働省の考え方が明確になるように、改正案についての説明を添付することとし、その中で、改正案の提出にいたった背景、根拠、特に検討を要する問題点等を示して、国民ができるだけ意見を提出しやすいように、意見募集のあり方を改めるべきである。

【理由】

今回の意見募集の場合、意見募集の「概要」には、「労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)の一部を別紙のとおり改正する」と記載されていたが、別紙には「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案概要」が示されているだけで、改正案自体は示されていなかった。

条文の規定の仕方によって規制の内容は大きく異なってくるから、条文によっては、反対や賛成が分かれることも考えられる。法令の文言をどのように改められようとしているのか、意見募集の段階でわかるようにして意見を募集しなければ、意見を出すほうも困惑するし、意見の焦点もぼけてしまう。

 

 また、意見募集にいたる経過についても、「趣旨・目的・背景」の中に、平成1412月から「石綿の代替化等検討委員会」を開催したこと、同委員会からの報告書が取りまとめられたこと、その内容を踏まえて今回の政令案が提示されていることなどが書かれているだけである。
 「石綿の代替化委員会」の報告書を受けて、厚生労働省が、どのような考えに基づいて今回の案のような施行令の改正を行うこととしているのか、厚生労働省自身の考え方やそれにいたる過程は一切説明されていない。

 意見募集に先立って、「石綿の代替化等検討委員会報告書」が公表され、この報告書が意見募集の際の提案の説明のように使われているが、この報告書はあくまでも同委員会の出した報告書であって、厚生労働省がこのような改正案を提案する理由を説明した文書とは違うのである。

報告書の内容をうけて、厚生労働省がどのような判断をしたのかが問題であって、それに対する意見を提出しなければならないのに、その説明が抜けているので、何に対して意見を述べていいのかがわからなくなってしまう。
 
 1999年に、イギリスがアスベストの全面禁止に踏み切るにあたって、前年末にHSCthe Health and Safety Commission)が意見募集を行った際、国民に提示された提案文書には、提案されている改正案の内容、背景、理由をはじめ、主な検討事項や特にどのような点についての意見を求めているのかが事細かに説明されていた。

Proposals for amendments to the Asbestos (Prohibitions) Regulations 1992Consultation DocumentCD1401998.12

最近の意見募集:

The proposal to amend the Asbestos (Prohibition) Regulations (1992) Consultation DocumentCD1862003.2

http://www.hse.gov.uk/consult/condocs/cd186.pdf

わが国の場合、意見募集の提案文書の書式も非常に不親切で事務的に過ぎ、単なる手続きを踏んでいるという印象しかない。提案についての説明もなく、漠然とした改正の概要だけしか示されていないのに、期日だけは厳しく指定して意見を求めるとは、あまりにもひどいやり方に思える。
 意見を求めたいのであれば、何が提案されているのか、なぜそのような提案をするに至ったのか、厚生労働省自身の考え方がきちんとわかるように説明したうえで行うのは当然のことである。

また、今回の意見募集では、「個人又は法人の属性に関する情報は公開することがあります」とされ、問合せ先の電話番号も明記されていなかった。

意見募集についての質問を電話で受け付けたり、氏名等の情報も本人が望まない場合は公表されないようにするのは当然の配慮である。
 このように、意見募集のあり方については根本的に改めるべきである。

(2003.6.2)


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