資料3−3

建築物の解体・改修時の石綿粉じん飛散の実態(その1)



最近、石綿について論議される中で、石綿含有建築材料を用いた建築物の解体や改修時における石綿粉じんの飛散が問題とされることが多くなりました。これに関して、様々な実態調査が実施されていますので、その結果を紹介いたします。

今回は、石綿含有建築材料(石綿含有成形材料と過去に施工した吹き付け石綿)のうち、石綿含有成形材料として特に多く使用されている石綿スレートの解体や改修に伴って発生する石綿粉じんの飛散の実態を、諸機関が行った石綿粉じん濃度調査結果に基づいて報告します。なお、石綿スレートは、セメント等で固形化され、かつ密度も1.61.9g/cm3であり、石綿含有率も30%以下(ただし現在の石綿スレート製品の含有率は15%以下)で、種類はクリソタイル石綿を使用しているものです。

*注) 調査結果の中で石綿が「アスベスト」と表現されている場合は、そのまま掲載した。

  1. 建設省官民連帯共同研究における、アスベスト含有建築材料を使用した建築物の解体に係わる実態調査結果(平成4年10月建設省)

    1. 横浜市内の倉庫上屋屋根解体工事

      面積736uの屋根の波形石綿スレートを手ばらしによる解体で除去しました。解体作業は屋根の高さまで防塵シートを張って行いました。

      石綿粉じん濃度 ……………… 1.07〜5.16 f/l

      バックグランド ……………… 0.666 f/l

    2. 工場解体撤去工事

      面積約10,000uの石綿スレート葺鉄骨建屋を、十分に散水し湿潤させながら機械で破砕し解体撤去しました。解体作業時には、工場敷地境界線に沿って、建屋の屋根の高さまで防じんシートを張りました。

      解体敷地内石綿粉じん濃度 ……… 幾何平均 0.9〜2.055 f/l

      解体敷地外石綿粉じん濃度 ……… 幾何平均 0.57〜0.82 f/l

  2. 東京都環境保全局委託調査:「昭和62年度建物解体等アスベスト飛散防止対策調査報告書」(エックス都市研究所)による実測調査結果
  3. 表−1に調査結果の概要を示します。

    表−1 調 査 結 果 概 要

    建物名

    概 要

    石綿含有建材使用状況

    解体工法等

    石綿粉じん濃度

    事務所@

    昭和29年建築

    SRC造9F.B1F

     

    吹付材なし、石綿含有建材はあまりない

     

    通常の圧砕機による解体、散水も一般的

     

    最高0.9f/l

    事務所A

    昭和4年建築

    SRC造5F.B1F

     

    吹付材なし、石綿含有建材はあまりない

     

    外壁を防音壁として残るよう立体解体された

    最高5.4f/l

     

     

    倉庫

    昭和42年建築

    RC造 1F

    吹付材なし、石綿スレートの屋根約200u

     

     

    圧砕機で噛み砕く工法で解体。

    200uのスレートを3日かけて解体

    最高1.8f/l

     

     

     

    工場

    昭和30年建築

    S造 1F

     

     

    吹付材なし、石綿スレートの屋根約600u

     

     

    手壊しで屋根のスレートを解体

     

    1回目 1.7-4.5f/l

     平均2.9f/l

    2回目〜3回目

    定量下限(ND) 1.1f/l



  4. 横浜市内工場建屋解体撤去工事における大気中のアスベスト測定濃度

    下記のような条件の下で石綿スレート建屋解体作業を実施し、大気中のアスベスト濃度を測定しました。その結果を次頁の表-2に示します。

    • 建屋と同じかそれ以上の高さのシート養生を十分に施した。
    • 手作業で解体を行うのに危険を伴う高所などの様な所は、建機を使用した。
    • アスベスト繊維が飛散しないように、前日に散水し、さらに当日も散水しながら解体作業を行った。
    • 作業後は、清掃の徹底と、再飛散防止のために散水した水はヒドロスイーパーで吸い取り、適正処分した。



    表−2 工場建屋解体撤去工事における大気中アスベスト測定結果

                    測定実施者:横浜市

    建屋名

    工事前

    工  事   中

    作業方法     敷地境界付近

    工事後

    備     考

    2.98-0.36

    (1.40)

    建機による解体 1.00-0.09(0.40)

    手作業による解体0.21-0.06(0.13)

    保管中     0.16-0.06(0.12)

    積載・搬出   0.69-0.05(0.24)

    0.61-0.22

    (0.39)

    解体工事期間

    61.12.1562.8.31

    廃棄物:石綿スレート 460t

    断熱材 0.08t

    0.48-0.28

    (0.32)

    建機による解体 1.01-0.26(0.51)

    積載・搬出   0.61-0.27(0.47)

    0.26-0.10

    (0.15)

    解体工事期間62.6.17.15

    廃棄物:石綿スレート 390t

    0.38-0.11

    (0.18)

    建機による解体 1.82(1.82)

    手作業による解体0.40(0.40)

    解体工事期間62.9.311.30

    石綿スレート 44.1t

    備考) 単位はf/lで最高値〜最低値を示し括弧内は平均値を示す。また、f/lとは、空気1l中に何本の吸入性石綿繊維(直径3μm未満、長さと直径の比3:1以上、長さ5μm以上のもの)があることを意味する。

現在、建築物の解体・改修は、基本的に、石綿含有成形材料を使用した建築物か否かにかかわらず、防じんシートなどによる養生(作業エリアと一般エリアの区別)と十分な散水を行っています。

以上の実態調査の結果が示しているように、このような解体方法をとっている作業上では、石綿含有成形材料を使用している建築物であっても、解体時に飛散する石綿粉じん濃度は、環境庁が石綿製品製造工場のし基地境界線で定めている基準10f/lよりもはるかに低いことがわかりました。

その2につづく

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