建築物の解体・改修時の石綿粉じん飛散の実態(その1)
今回は、石綿含有建築材料(石綿含有成形材料と過去に施工した吹き付け石綿)のうち、石綿含有成形材料として特に多く使用されている石綿スレートの解体や改修に伴って発生する石綿粉じんの飛散の実態を、諸機関が行った石綿粉じん濃度調査結果に基づいて報告します。なお、石綿スレートは、セメント等で固形化され、かつ密度も
1.6〜1.9g/cm3であり、石綿含有率も30%以下(ただし現在の石綿スレート製品の含有率は15%以下)で、種類はクリソタイル石綿を使用しているものです。*注) 調査結果の中で石綿が「アスベスト」と表現されている場合は、そのまま掲載した。
石綿粉じん濃度 ……………… 1.07〜5.16 f/l
バックグランド ……………… 0.666 f/l
面積約10,000uの石綿スレート葺鉄骨建屋を、十分に散水し湿潤させながら機械で破砕し解体撤去しました。解体作業時には、工場敷地境界線に沿って、建屋の屋根の高さまで防じんシートを張りました。
解体敷地内石綿粉じん濃度 ……… 幾何平均 0.9〜2.055 f/l
解体敷地外石綿粉じん濃度 ……… 幾何平均 0.57〜0.82 f/l
表−1 調 査 結 果 概 要
建物名 |
概 要 |
石綿含有建材使用状況 |
解体工法等 |
石綿粉じん濃度 |
事務所@ |
昭和29年建築 SRC造 9F.B1F
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吹付材なし、石綿含有建材はあまりない
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通常の圧砕機による解体、散水も一般的
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最高 0.9f/l |
事務所A |
昭和4年建築 SRC造 5F.B1F
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吹付材なし、石綿含有建材はあまりない
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外壁を防音壁として残るよう立体解体された |
最高 5.4f/l
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倉庫 |
昭和42年建築 RC造 1F |
吹付材なし、石綿スレートの屋根約 200u
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圧砕機で噛み砕く工法で解体。 約 200uのスレートを3日かけて解体 |
最高 1.8f/l
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工場 |
昭和30年建築 S造 1F
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吹付材なし、石綿スレートの屋根約 600u
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手壊しで屋根のスレートを解体
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1回目 1.7-4.5f/l平均2.9f/l 2回目〜3回目 定量下限 (ND) 〜1.1f/l |
下記のような条件の下で石綿スレート建屋解体作業を実施し、大気中のアスベスト濃度を測定しました。その結果を次頁の表-2に示します。
表−2 工場建屋解体撤去工事における大気中アスベスト測定結果
建屋名 |
工事前 |
工 事 中 作業方法 敷地境界付近 |
工事後 |
備 考 |
A |
2.98-0.36 (1.40) |
建機による解体 1.00-0.09(0.40)手作業による解体 0.21-0.06(0.13)保管中 0.16-0.06(0.12)積載・搬出 0.69-0.05(0.24) |
0.61-0.22 (0.39) |
解体工事期間 61.12.15 〜62.8.31廃棄物:石綿スレート 460t断熱材 0.08t |
B |
0.48-0.28 (0.32) |
建機による解体 1.01-0.26(0.51)積載・搬出 0.61-0.27(0.47) |
0.26-0.10 (0.15) |
解体工事期間 62.6.1〜7.15廃棄物:石綿スレート 390t |
C |
0.38-0.11 (0.18) |
建機による解体 1.82(1.82)手作業による解体 0.40(0.40) |
− |
解体工事期間 62.9.3〜11.30石綿スレート 44.1t |
備考) 単位は
f/lで最高値〜最低値を示し括弧内は平均値を示す。また、f/lとは、空気1l中に何本の吸入性石綿繊維(直径3μm未満、長さと直径の比3:1以上、長さ5μm以上のもの)があることを意味する。現在、建築物の解体・改修は、基本的に、石綿含有成形材料を使用した建築物か否かにかかわらず、防じんシートなどによる養生(作業エリアと一般エリアの区別)と十分な散水を行っています。
以上の実態調査の結果が示しているように、このような解体方法をとっている作業上では、石綿含有成形材料を使用している建築物であっても、解体時に飛散する石綿粉じん濃度は、環境庁が石綿製品製造工場のし基地境界線で定めている基準
10f/lよりもはるかに低いことがわかりました。