届かなかったFAX(2000.5)
(県政記者クラブの記者の人に直接情報を送るのが、どういう風に難しくなっているかということ)

1996年12月10日   

報道関係の皆様へ

アスベストについて考える静岡県民の会 ヘパフィルター   

私たちは、本日、静岡県のアスベスト対策の改善を求める要望書を、県に提出しました。
ここで求めている内容は、地震対策の一環としてアスベスト問題を考えること、解体工事によるアスベストの飛散を、環境保全と労働者保護の見地から防止する必要があることなどが主になっています。

これらは、いずれも、具体的な問題として考えた場合、それ自体として重要であるのはもちろんですが、関連する問題として、地震によって生じる環境問題、廃棄物問題などのほか、有害物質によって生じる発癌のリスクを我々がどの程度受け入れてゆく必要があるかや、その他にも、国レベルの法改正が地方公共団体においてどの程度実効あるものとして運用されているのかなど、数々の重要な問題を含んでいます。

しかし、これらの問題の重要性にもかかわらず、今回、私たちは、この問題を取り上げるにあたって、たった一つだけを、問題として提起したいと思います。

それは、危険であると知っていれば避けられる危険性について、知るべき人が知らないことによって生じる健康被害に対して、知らせるべき人が知らせないことを、私たちがどのようなかたちで、責任として追及できるのかという問題です。

ご存じのように、アスベストは、日本においても、10年ほど前に学校の吹き付けアスベストの除去問題として大きくクローズアップされ、マスコミでも取り上げられました。その経過で、皆が、アスベストは、それ以前に考えられていたものとは全く異なる、極めて危険な、有害な物質であるということを知りました。しかし、その問題が次第に解決されたような様相を見せ始めると、徐々に関心は失われ、過去の問題になっていきました。

しかしその後も、アスベストは、ピーク時の年間35万トンには及ばないものの、今なお、毎年20万トンも、この日本で使われ続けており、その多くがスレートや木造家屋の屋根材などの建材として、広く一般に使用され、その使用量は、この狭い国土と、密集した生活環境にもかかわらず、ロシア共和国についで、中国と第2位を争っている状況ということです。

アスベストの有害性が問題になって、1980年代から、ヨーロッパ諸国で相次いで使用禁止などの措置が取られ、アメリカでも、他には例を見ないほどの大量の集団訴訟が起きて大きな社会問題となり、使用量が激減しているという事実や、使用量が1万トンにまで落ち込んでいるイギリスにおいても、アスベストによる癌の発生が問題とされ、フランスにおいても、この7月に、アスベストの全面的な使用禁止が決まったという事実などを考えてみたとき、日本において、相変わらず、このような膨大な量のアスベストが使われ、それに対しての法規制もほとんどないばかりか、このような事実すらも一般国民がほとんど知っていないというような事態は、とても許されないとは言えないでしょうか。

今日のアスベスト問題の重要性について考えると、この問題は、すでに、80年代後半に問題にされた時とは大きく異なる、全く異質な問題になってきていると思います。

問題の本質は、アスベストの危険性自体よりもむしろ、このような情報を国民に伝えるべき役割を担っているのが、一体誰であるのか、私たちはなぜこのように重要な、健康に直接かかわってくる問題を今まで知らないできているのか、そして、将来、このような事実を知らなかったことによって健康被害を生じた人は、アスベストの危険性を知らされていなかったことを、どこに、どのような形で責任を求めることができるのか、という点に移っているように見えます。

これは、HIV訴訟のような深刻な薬害問題をはじめ、医療情報の公開の問題、O157で生じているような調査情報の開示における判断の妥当性の問題、そして、地震の際の緊急事態で原発事故の発生をどのように住民に伝えてゆくのかなどの危機管理の問題と同じ次元か、むしろ、それらを象徴的に表現している問題として考えることができます。

私たちが、どのような情報をどのように与えられる必要があり、またその必要性の根拠をどこに求めることが可能なのか、広くは癌告知や情報公開の在り方などにも共通する問題として、もう一度とらえ直してゆく必要があると思います。

世界で、特に危険性があるため使用禁止になったり使用されなくなっているアスベストが、わが国においては、毎年20万トンも使用され続けているという事実を、まず私たちは知る必要があります。吹き付けアスベストの危険性はもちろんのこと、そのアスベストが、今は、気づかないうちに私たちの家の屋根などにどんどん使われていて、解体工事や、地震の際に壊されて吸い込んでしまうと、それによって将来癌になる恐れが生じることを、解体工事の作業をする人や、周辺の人たちは知っているべきです。また、壊さないよう注意しなければならないことや、マスクをすれば危険性を小さくできることを、皆が知っているべきです。

そしてそれ以上に、このようなことを、我々の健康や安全を守るべき立場の行政が、私たちに知らせる義務があると思います。

県庁別館において、アスベスト含有建材が一切使用されておらず、丸子の県職員住宅などでも、使用しない方針が明らかにされているように、今日、アスベストの代替化がほぼ完全といっていいほど可能になっているにもかかわらず、アスベストの危険性と、使用されている事実が知らされていないために、以前と変わりなく使用され、代替化が現実には進んでいないという実態に対して、国や地方自治体は責任を負うべきです。

国の情報公開法の制定も間近といわれる中で、私たちは、アスベスト問題を通じて、我々がどの程度知ることを求め得るのかという問題とともに、より根本的な問題として、行政が、私たちに、何を、どのように知らせる責務を負っているのかという問題について、今後も強く問いかけてゆきたいと思います。

同時に、情報を発信する側の皆様が、我々の健康を守るために必要な情報を伝えるための大きな役割を担っていることを、この機会に訴えたいと思います。


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