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横須賀基地:元従業員20名がアスベストなどによるじん肺・肺がんで補償請求(1998.4.21) 


1998年4月21日、米海軍横須賀艦船修理廠で働き、退職した日本人元従業員らが、在職中にアスベストなどの粉じんを吸い続けたことによって肺がんやじん肺症に罹ったことを理由に、日米地位協定に基づく民事特別法を根拠に、横浜防衛施設局に対して、総額約2億5千5百万円の補償を求めた。
請求したのは全部で20名。年齢は65歳から78歳で、うち3名は死亡している(うち2名は、死因がアスベストによる肺がんとじん肺と考えられ、休業補償とともに遺族補償も請求している)。

請求者の職歴はボイラー修理工(修理の際、防熱のために使用されているアスベストを直接取り扱う)や断熱工(船内配管用に使用される断熱材を直接取り付ける)が多いが、溶接工、板金工、カーペンターなども含む。
請求者によれば、アスベスト暴露が最もひどかった時期は朝鮮戦争の頃で、当時はアスベスト粉じんで前が見えなくなる程の中で、タオルで口を覆って作業したという。

また、「1950年頃から艦船修理の増加に伴ってアスベスト暴露量が増加した。1960年頃は防じんマスクもなく、作業場内の清掃も十分ではなかった。1970年代になって粉じん作業の隔離やマスクの着用指導、じん肺教育や局所排気装置などの使用、清掃などが始まり、1980年代になってそれらが実質的になった。」との聞き取り調査もある。

請求額は、死亡した2人の元作業者の遺族補償請求の総額が8千万円、じん肺で療養を必要とした20名の休業上積み補償額の総額が174,981,420円。ほとんどの被害者が労災の給付を受けているので、実質的には、一人あたりの休業補償の額の平均は8,749,071円となっている。

請求の根拠となっているのは、日米地位協定とそれに基づく民事特別法、及び、「合衆国軍隊等の行為等による被害者等に対する賠償金の支給等に関する総理府令」。

アスベストとの因果関係については、すでに労災認定を受けていることなどから証明は十分であると考えられているが、それを疫学的に説明する研究報告として、「造船労働に伴うアスベスト暴露作業者の死亡状況に関する歴史的コホート研究」(この報告の研究結果では、艦船修理廠のボイラー工や断熱工の場合、じん肺や肺がん、中皮腫の死亡率が通常より高いと結論づけている)をあげている。

請求の手続きに伴う実務の処理については、(社)神奈川労災職業病センターが被害者の代理人となってあたっている。 同職業病センターは、1997年7月に実施された「じん肺・石綿健康被害ホットライン」で相談を担当したが、その際に「退職者の上積み補償協定がないのか」という相談を受けて調査し、それがきっかけで今回の請求ができることがわかった。

横浜防衛施設局の説明では、これまで肺がんとじん肺で3件の請求があって、うち2名が死亡による遺族請求、1名が休業給付の請求だったが、いずれも支払いは済んでいるという。

神奈川労災職業病センターでは、「アスベストの関連する被害は山口県の岩国基地でも2名発生しており、この問題が全国の基地で働く従業員の退職後の健康問題の大きな課題となることは必至であろう。今回の集団請求に対して、米海軍と防衛施設局がどのような判断と見識を示すか注目される。」としている。


    参考:
    (社)神奈川労災職業病センター「基地退職者の労災上積み補償請求記者会見用資料」
    1998年4月22日読売新聞、同日東京新聞、産経新聞、神奈川新聞、朝日新聞(21日夕刊)など。




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