環境庁長官のアスベスト工事

石井環境庁長官は
理事長を務めていた病院が1996年に行ったアスベスト工事について
ずさんな工事でなかったかどうか、
参議院の環境特別委員会で追求されたというが ・・・



−以下、1997年6月に行われた、参議院環境特別委員会の記録などをもとにしています−


石井環境庁長官は、1975年から1996年まで20年間あまりにわたって、医療法人橘会「飯能中央病院」の理事長を務めてきた。

この病院で1996年3月21日から8月にかけて行われてた工事が、1997年6月ころ、参議院環境特別委員会において取り上げられ、

 行われた工事がアスベスト除去工事だったかどうか、
 労働安全衛生法によって求められている届け出や、飛散防止のための対策を行って、除去工事が適切に行われ、処理されたか

などが問題にされた。

石井長官は当初、質問に対して、この病院で行われたアスベスト工事は、除去工事ではなく、囲い込み工事であると報告していた。

6月4日の参議院環境特別委員会において、再度問題にされ、石井長官は、

「病院内のアスベスト除去工事につきましては、5月21日に本委員会で報告した内容と異なり、アスベストを除去した事実がございました。 すでに本委員会で報告いたしました内容と異なった結果になりましたことについて陳謝いたします。」
との内容の謝罪をした(詳細は以下のとおり)。


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質問で、囲い込みと除去が問題にされたのは、次のようなことから。

・同病院では、防音のために、天井に吹き付けアスベストが使われていた。

・同病院では、消防法令に基づくスプリンクラーの設置工事が、1996年3月21日から8月27日にかけて行われてた。

(委員会では、スプリンクラーの設置工事についても、消防庁から再三指導されていながら、工事が遅れた点も問題にされた。)

・(消防庁の説明によれば)スプリンクラーの設置工事は、天井をいったん取り外して工事を行う。

・吹き付けアスベストの天井が取り外されたとすれば、何らかの形で、吹き付けアスベストの除去工事が行われていたはずである。

・環境庁長官は、スプリンクラー工事の際にアスベスト工事を行ったことは認めているが、囲い込み工事を行ったと言っている。

・囲い込み工事は、吹き付けアスベストの天井を建材によって覆う工事であって、これではスプリンクラーの設置工事ができない。

・除去工事が行われたのではないか。

・除去工事であれば、労働法上や廃棄物処理法上の規制があり、危険な工事なので、飛散防止には特に配慮し、現場を隔離して行うなど特別の方法が義務づけら れている。

・この工事はこれらの要件を満たした、適切な工事であったか。

・もしそうでなかった場合、法を守るべき国務大臣という国の最高責任者の一人として、また、特に環境庁長官という職務からみて、適格であるといえるのか。
(石井長官が環境庁長官になったのは平成8年11月)


これに対して石井環境庁長官は、6月4日の委員会の時は、

「スプリンクラー工事の時に、アスベスト工事も行ったと報告を受けっておりまして、これは囲い込み方式であるという報告を受けております。」
と答弁していた。


これに対して、質問の議員は、

同病院306号室(4人部屋、長期療養患者やお年寄りが多い部屋と言う)1996年6月21日の、スプリンクラー設置工事中の写真を示して、

・吹き付けアスベスト除去工事であったこと

・この写真が、吹き付けアスベスト除去工事が適切に行われていないことの証拠であること

・長官の報告した内容がで事実と違うこと

を指摘。
この責任をどうとるかと詰め寄って審議が中断した。


議長が、石井長官に再調査と報告を促し、これを受けて長官は、病院に問い合わせて調べると返事をした。

そのあと、6月6日の環境特別委員会で、石井環境庁長官は、上記のように、

「5月21日に本委員会で報告した内容と異なり、アスベストを除去した事実がございました。」
と、報告が事実と異なっていたことを認めて、陳謝した。


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この質疑の中にも出てくるが、吹き付けアスベスト除去工事に関しては、大気汚染防止法の改正に伴い、1997年4月から、一定面積以上の定められた工事について、都道府県知事等に届け出なければならないことになった。
(大気汚染防止法は、環境庁が所轄する法律であって、1996年5月ころに国会を通過している。)


問題になっているスプリンクラー工事が行われたのは、改正された大気汚染防止法の施行前ではあったが、吹き付けアスベストの除去工事に関しては、それ以前でも、労働安全衛生法によって、事業者からの届け出が義務づけられており(労働安全衛生法第88条第4項)、工事にあたっては、湿潤化、呼吸用保護具等の使用、作業場所の隔離などの特別な作業方法が必要とされている。


さらに、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」などによって、除去された吹き付けアスベストは「廃石綿等」にあたり、特別管理産業廃棄物として、特に厳しい処分方法が決められている。

当病院の吹き付けアスベスト除去工事が、このような法令を守って適正に行われたかどうかが疑問となる。


さらに、特に問題になるのは、除去工事が不十分だった場合には、入院患者をはじめ、病院利用者、病院勤務者に対して、健康上の危害を加えているおそれがあるという点。


これらについては、現時点では、工事内容が不明のためよく分かっていない。


**  長官及び病院関係者は、以上のような問題がなく、吹き付けアスベスト除去工事が適切に行われ、適正に処分されたことを明確に示して、病院の施設管理に手落ちがなかったことを説明する必要が出ている。  **


(なお、関連する記事が「サンデー毎日」の1997,4,27号に載っています。)



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