(社)日本石綿協会は、昭和23年5月26日に社団法人として認可された。
当初の事業目的は、「石綿及び石綿に関する事業に従事するもの並びにその共同団体若しくは学識経験者を以て組織し、綿密な連絡により相互の親睦を厚くして技術の向上を図り、石綿事業文化の振興に貢献することを以て目的とする」とされていた(平成2年7月に目的変更)。
設立と同時に広報委員会を設置。機関誌として発行している「せきめん」は今年4月で627号になった。
内容はどちらかと言えばかなり専門的で、疫学調査などの報告を主とした、ほぼ20ページ前後の小冊子である。この「せきめん」について、同協会発行の「せきめん読本」(平成8年発行)には、「近年、機関誌の内容は諸外国の文献並びに規制状況等を主体に構成し、学術誌として学者、マスコミ、業界等一般に広く購読されている」とある。
静岡県立図書館では、昭和59年8月からとっている。静岡県の建築課でも購読しており、ここからアスベストについての情報を得ているという。どちらかと言えば公的な資料の一つとして受け止められているようである。行政機関では、法改正などに関連した国からの資料のほか、アスベストについての基礎的な知識を、公益法人であり、同時に業界団体である当協会の発行する本や機関誌から得ている。
今年の「せきめん」の新年号も、昨年に引き続き、通産省住宅産業窯業建材課長の福水健文氏の年頭所感で幕を開けた。
「我が国経済を取り巻く環境は・・・」にはじまるわずか2頁の簡単な挨拶ではあるが、そこには、「省エネ住宅」「自然環境調和型住宅」「住宅コストの低減」など、新年号にふさわしい華々しい言葉が並ぶ。そして奇妙なことに、アスベストや石綿の文字はどこにも出てこない。
今年の新年号も、昨年のものと見間違うようなほぼ同じ内容となっているが、一つだけ違っていたことがあった。その前月開かれた温暖化防止に向けた京都会議にふれ、省エネルギーの推進について述べている点である。
「当課といたしましても、民生部門の省エネルギーを推進するため、既存の建築物に関する省エネ改修事業の拡張、環境に調和した地域開発の推進、省エネ建材・住宅設備及びソーラシステム等の普及・導入に関する取り組みを引き続き推進して参ります」ということである。
引き続く挨拶の中で、(社)日本石綿協会の会長であり、同時に日本石綿製品工業会、日本保温保冷工業協会の会長もかねている、音馬峻氏(ニチアス(株)社長)は、京都会議に触れて次のように述べた。
『「昨年12月京都で開催された「地球温暖化防止会議」のテーマの一つである「省エネルギー」の観点からすると、石綿セメント製品は「地球に優しい」と言えます。』
今年1月に行われた通産省の代替化政策についての回答では、同省住宅産業窯業建材課の担当者は、アスベスト代替化の方針を認めていた。
「せきめん」新年号で、同課長は、昨年と同じように「本年が皆様にとってより一層の飛躍の年となりますように心から祈念致しまして」と結んで年頭の挨拶を終えた。
アスベストの代替化の方針はどの様な方向に向かおうとしているのだろうか。