<< 私たちは原子力発電に頼らない温暖化防止対策を求めて、意見書を出しました >>


去る14日、地球温暖化のための国内対策について話し合う「関係審議会合同会議」が首相に提出した報告書には、国内対策の基本方針として、約20基の原子力発電所の増設が、前提とされていました。

国内でも国外でも、一般的に受け入れられているとは思えないこのような方針が、実際の政策論議の中では、当然の前提のようにとらえられていることは、とても大きな問題ではないでしょうか。

特に静岡県では、地震の発生が間近と伝えられ、原発の安全性についても問題になってきています。安易な増設計画が、地球温暖化防止のために推進されるとすれば、より多くの問題を新たに生むことになるでしょう。

私たちは、原子力発電所について問題が深刻化する今日、このような方針が推進されようとしていることに疑問を感じ、原子力発電に頼らない温暖化防止対策を求めるために、この合同会議の議長をはじめ、総理大臣、通産大臣、環境庁長官などに意見書を出しました。


約20基の原発の増設なんて誰が見ても不可能だから、心配することはないという意見も多く聞かれます。

それでも、COP3が終わって、温暖化防止のための国内政策に取り組もうとするとき、原発20基の増設という政策が、当然の前提のように取り扱われていたとしたら、それは私たちにとって、温暖化と同じかそれ以上に不幸なことは間違いないでしょう。

国民と政府との間で生じている大きな意見の隔たりが、実際の政策の中では、ほとんど省みられることもなく、政府主導のまま推進されていってしまうのは、いったいどこに本当の原因があるのでしょうか。

このようなあり方こそ、誰もが皆危険だと認め、対策がとられているように見えて、その実、世界でも飛び抜けた量のアスベストを使用している国、日本を作っている土壌なのではないでしょうか。


** この意見書は、橋本内閣総理大臣、通産大臣、環境庁長官宛にもお送りしています **

 地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議
  議長  近藤次郎 様
  委  員  各  位    

 

原子力発電所の増設を地球温暖化防止の手段と考える政策に反対する意見書


 去る11月14日、「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議」は、温暖化防止のためのエネルギー対策として、約20基の原子力発電所の増設に相当する、7050万キロワットの原子力発電への依存を前提とした最終報告書を、首相に提出しました。

 私たちは、地球温暖化防止が、将来の私たちの生活に深刻な影響を及ぼす重要課題であって、早急に有効な対策が必要であることは十分理解していますが、この報告書にあるように、原子力発電所の増設を温暖化防止のための対策とすることには、下記の点で重大な誤りがあると考えています。

 今後、現在のような経過のまま、原子力発電を増設する方針が推進されてしまうことがないように、ここに、原子力発電所の増設を温暖化防止のための対策とすることに反対する意見を表明するとともに、このような重要な政策決定が、十分な議論も経ずに、うやむやのうちに行われてしまう今の政策決定のあり方に対し、強く抗議するものです。

  1.  原子力発電は、日常的に、放射性廃棄物による環境汚染や労働現場での放射能被爆などの問題を引き起こしているだけでなく、万一の場合には、私たちの生命や環境に取り返しのつかない被害を与える事故が発生する可能性もあり、その潜在的危険性は計り知れない。

     このようなことから、原子力発電の安全性については、国民の中でも大きく意見が分かれているところであって、地球温暖化防止という理由があっても、安易に推進を決めることは許されるものではない。

     地球温暖化防止に取り組むためには、原発増設のような、危険性が高く、深刻な環境汚染を引き起こすおそれがある手段によるのではなく、自然エネルギーの普及や省エネルギーの促進など、国民の生命を危険にさらすことのない、安全な政策を基礎とするべきである。

  2.  わが国のCO削減案では、原子力発電所の増設を条件に加えることによって、2010年頃のCO排出量は、見かけ上1990年と同レベルかそれよりも低い値まで削減されるように見えるが、増設を条件に加えなければ排出量はかなり高い値となる。

     原発増設は、エネルギー利用やCOの排出量の増加を一方で認めながら、削減率を高くみせかけるための手段に使われている。

     先のボン会合でも、原子力発電を温暖化防止の対策として提案しようとしたわが国が、他国からひんしゅくをかったと報道されている。実現が難しいといわれている原発20基の増設を前提として、見かけだけ削減率を高く見せるような、うわべだけの削減計画によって地球温暖化防止に取り組む姿勢は、国際社会でのわが国の信頼を損なう。

  3.  原子力発電の大幅な増設という、私たちの安全と生命に直結する重要な政策が、他の問題に付随する政策として、国会での議論や国民の同意もないまま決められ、既成事実として取り扱われようとしていることは、民主主義国家の根幹を揺るがすたいへん憂慮すべき事態である。

     特に、地域住民の合意が必ず必要な問題を、合意が得られるかどうかわからない段階で国の将来設計の基本方針として盛り込むことは、地域住民の意思をないがしろにした、極めて横暴なやり方である。

  4.  世界でも有数の地震国であるわが国には、すでに50基を越える原子力発電所があり、現在でも住民に対する大きな脅威になっている。他国でも原発離れが進んでいる情勢がありながら、地震の活動期に入っている今の時期に、さらに20基も増設する方針を決めることは、あまりにも無謀にすぎ、国民の安全が考慮されているとはいえない。

     ことに、地震発生が間近といわれている静岡県では、震源域の中央に位置する浜岡原子力発電所が、地震により重大事故を引き起こす可能性は現実的なものとなってきており、住民の不安も日増しに高まっている。

     原子力発電所の増設によって負わなければならないリスクは、地球温暖化によるリスクとは比べようもなく大きなものであって、温暖化防止という理由によって、原子力発電所の増設をいとも簡単に認めようとする今のやり方は、このようなリスクを負わなければならない住民の精神的負担を、あまりにも軽視した不当なものである。

    以上          

          1997年11月28日


アスベストについて考える会           
浜岡原発を考える静岡ネットワーク           
健やかな命のための生活講座           
ぐるーぷ・みるめ           
わくわくクラブ           
エコネット静岡           
浜岡原発とめようネットワーク           
みんなでビオトープシティ           
いもづるネット           
『週刊金曜日』浜松地区読者の会有志           
松林養生所           
地球を守る小さな手の会           
あしたの会           
( 順不同 代表者氏名および連絡先 略 )           



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