(3) 参加

 環境政策の推進には国民の協力が不可欠であるから、環境保全に対する意識を高める上からも参加を呼び掛けることは重要なことである。行政との橋渡しをする役割からも、環境問題にかかわるリーダーを育てる必要はあるし、それが多様化する環境政策をサポートする役割も果たす。特に、有害物質にはリスクコミュニケーションの必要から、一般国民の参加や、行政と企業と国民との3者のコミュニケーションの重要性が指摘されている。

 しかし、このような社会的な要請を受けながらも、地方自治体など行政の現場では、国民からの働きかけや意見交流の求めに対して、それを受け入れるだけの素地ができていない実状もかなり見受けられる。

 「参加」の重要性は次第に浸透しつつあるようだが、一般国民の参加のためのシステムが十分に整っておらず、形式的な意見発表の場は与えられても、それが行政の政策決定に反映されているとは思えない場面も多い。
 

 審議会、委員会、研究会などの委員として、意思決定にある程度関与できる場合もあるが、多くの場合、選ばれる委員は、行政の代表者と企業の代表、それに学識経験者といわれる限られた範囲の知識人と、ごく一部の民間の代表者に限定されている。

 大気汚染防止法の改正にあたって、ワーキンググループに参加したメンバーも、行政や企業からの代表者ばかりであった。

 私たちを含め、全国のアスベストに関係する民間団体では、アスベストについての知識の普及や飛散防止のための対策の充実に努め、一般の人からの相談を受け付けたり、被害者の救済に取り組むなど、ある意味では行政のやるべきことを日常的に肩代わりしている。

 アスベストによる被害をなくしたいという気持ちはある意味では行政よりも強いかもしれず、アスベスト除去工事の実態などをはじめ、十分な知識や関心を持っている。

 行政や学識経験者や企業などの代表者だけでは意見が行政や企業よりに偏ってしまうことも考えられるので、そのような方向を是正し、より公正な意見形成に努めるためにも、話し合いの場に、その問題に積極的に取り組んでいる民間団体を加えていくことはどうしても必要なはずだ。それが現実にはほとんど参加を求めることもなく、意見を反映させることもできないような状況では、民間団体の育成や参加の推進といっても、机上の空論に過ぎないのではないかと思ってしまう。

 民間団体の育成や参加の推進のためにも、意志形成の場に、国民の代表として、その問題に取り組んでいる民間団体の参加は必要不可欠だ。

 また、国や地方公共団体の、審議会や研究会、検討会などの委員の選定にあたって、一部の限られた人に参加の機会が集中している実状があるように思う。
 一部の人に参加の機会が集中することは、他の人の参加の機会を奪うことにつながる。

 平等な参加の機会を保障するためにも、一部の人に委員が偏っていないか、国民の立場でチェックするシステムが必要である。
 さらに併任の禁止、留任の制限などの決まりをつくることも必要である。
 それによって、行政との癒着関係を防ぎ、閉鎖的な意志決定の流れを改善して、より国民の意見が反映されやすい参加の形を作り上げることが可能になる。

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