3. 点検のための意見
- (1) 4つの目標
環境基本法は、1993年、前年に開かれた地球サミットの影響を強く受けて制定された。
その翌年、環境基本法によって策定された環境基本計画は、時代的な要請や成立の経緯を反映して、冒頭の前文だけを見てもわかるように、地球環境の保全に大きなウエイトが置かれている。
中心的な課題は、「環境への負荷の少ない循環を基調とする経済社会システムの実現」と「人間が多様な自然・生物と共に生きること」にあり、その実現のために「循環」「共生」「参加」「国際的取組」の4つ長期目標を掲げている。
この冒頭部分と基本方針、4つの長期目標を見ると、地球的な視野に立った環境の保全が先に立っていて、環境基本法が究極目的としてあげている「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与する」ための根本にある、私たちの生命を守るという視点が脇に追いやられてしまっているのではないかという印象を強くする。
地球環境の保全は非常に重要な課題ではあるが、私たちが健康で安心して暮らすためには、有害な物質をなくすための環境政策がまずその前提になければならない。しかし、有害物質に対する取り組みは「環境への負荷が少ない循環を基調とする経済社会システムの実現」の中で間接的に示されているに過ぎない。
中央環境審議会企画政策部会が平成8年に行なった、環境基本計画点検のためのヒアリングの中で、ある委員は「人の健康は環境問題の重要な一部分であるが全てではない。環境問題には、地球規模の環境問題など従来の公害対策基本法では対応できない部分がある」と発言しているが、この目標や基本方針で見る限り、果たして環境基本計画が「人の健康は環境問題の重要な一部分である」という認識に立っているのかどうか、疑問を感じる。
アスベストで見るように、欧米諸国に比べ我が国の有害物質対策が大きく遅れている原因が、環境基本計画の中心課題として、有害物質から私たちの生命を守るという目標が入れられていないことだけではないだろうが、環境基本計画の内容自体が、地球環境問題に大きなウェイトをおくという、時代的な制約に基づく限界を持っていることをまずはじめに指摘したい。
今後の環境基本計画の策定にあたっては、アスベスト、ダイオキシン、環境ホルモンなど、有害物質が私たちの生活に対する大きな脅威になっているという現実を踏まえ、その改善に向けて、未然防止を中心課題として、参加や情報公開などの重要性を再確認する方向で検討してほしい。以下、それぞれの点について述べる。
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