繊維状物質セミナー報告−(7)

2001年7月16日に行われた、「『繊維状物質の生態影響に関する最近の研究動向』セミナー」(中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター主催、繊維状物質研究協議会協賛)に参加したので、その概略を報告します。

ここでお伝えする内容は、録音テープと当日の資料をもとに、参加者が聞き取った内容をまとめたものです。聞き違いなどの間違いがある場合がありますので、どうぞご了解ください。

あくまでも講演のおおよその内容をお伝えするためのものですので、詳細についてはご確認をお願いいたします。



『繊維状物質の生態影響に関する最近の研究動向』セミナー

繊維状物質及び粉じんによる健康障害
 相澤好治(北里大学医学部 衛生学公衆衛生学教授)

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じん肺。粉じんによって生じる。
沈着する部位によってからだ影響を与えるかどうか決められてくる。

粒子の大きいものは鼻腔に沈着。それより少し小さなもの気管支に沈 着。1ミクロンくらいのもの、肺胞に沈着。
気管支の表面には線毛があって、ビート運動をしている。沈着したとし ても粒子が粘膜について、ビート運動によって食道に運ばれ、飲み込ま れる。

溶けない限り排出される。溶けると線毛上皮に影響を与える。
ガス状のものが運動を抑える。喫煙等が線毛運動に影響を与え、線毛運 動がとまる。正常な運動が止まり肺気腫などの病気を起こす。

粒子が小さい場合、肺胞に入る。線毛上皮がないので出されない。マク ロファージが粒子を食べる。アメーバー運動をして移動して排出され る。

肺胞マクロファージに障害を与える、粒子とか繊維状物質が入ると、マ クロファージがいろいろなサイトカイントを出して炎症が始まってしま う。ばい菌などは自己消化される。

一部はエスカレーションに乗らないで細胞の外に出て、リンパ管からリ ンパ節ににたまる、血管に入って前身を巡るというルートもあるが、ほ とんどはエスカレーターで運ばれてクリアランスされる。

ウサギの肺胞マクロファージ。
一酸化鉄を気管の中に注入すると、肺胞マクロファージにほとんどが食 べられてしまう。一酸化鉄自体は害はないので正常な肺胞構造が保たれ る。
そこにシリカなどの化学物質を入れると、細胞浸潤が起こり、肺胞構造 が壊れてしまう。

ウサギの気管に一酸化鉄を与えて磁界をかける。粒子の量が外からの磁 界測定でわかる。アイソトープでも行われる。
シリカ等をいっしょに注入すると普通では起こらないような現象が起こ る。

一酸化鉄とガリウム砒素をいっしょに加えると、普通はクリアランスで 下がっていくが、害のあるものをいっしょに加えると一酸化鉄が排出さ れない。

じん肺。肺の繊維増殖性変化をきたした疾患。
粉じんが肺胞付近に沈着。取り除く反応、炎症が起こる。組織の損傷が 生じる。それを修復するために繊維性の組織ができる。正常の反応だ が、その反応が強すぎると肺が弾力を失う。壁が壊されて空気がたまっ てくる。肺気腫。ほとんどのじん肺は肺気腫を伴う。

けい肺の症例。48歳でじん肺と診断、気胸、喘鳴、感染を起こした例。
粉じん作業を止めても進行する。
けい肺患者の肺。粉じん作業の現場の実例。
石綿製糸工場、零細企業の作業現場。石綿肺。
胸膜の肥厚から胸膜中皮腫が発生した例。

粉じんの種類 けい酸、石綿、タルク、カオリン、ロウ石、アルミニウム、アルミナ、 珪藻土、じん肺を起こしやすい粉じん。
比較的じん肺を起こしにくい粉じん、石炭、黒鉛、炭素、活性炭素、酸 化鉄。

産業構造の変化によって、時代の変遷とともに、粉じん作業の種類が変 わってきている。
じん肺発生要因。濃度、期間、化学的な性質、粒形。

1960年から今までの粉じん作業従事労働者数、健康診断の受診者数、有 所見者数。

新規の有所見者、労働者数の推移。今世紀の半ば頃にはじん肺は日本か らなくなるのではないかという推測をしている人もいる。

有所見率を規模別に見ると、小規模事業所では40%の有所見率。大きく なると下がっている。まだまだ対策をする必要がある。

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-------------*繊維状物質セミナー報告*おわり*-------


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