繊維状物質セミナー報告−(5)

2001年7月16日に行われた、「『繊維状物質の生態影響に関する最近の研究動向』セミナー」(中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター主催、繊維状物質研究協議会協賛)に参加したのでその概略を報告します。

ここでお伝えする内容は、録音テープと当日の資料をもとに、参加者が聞き取った内容をまとめたものです。聞き違いなどの間違いがある場合がありますので、どうぞご了解ください。

あくまでも講演のおおよその内容をお伝えするためのものですので、詳細についてはご確認をお願いいたします。



『繊維状物質の生態影響に関する最近の研究動向』セミナー

人造鉱物繊維の規制等に関する国際動向に係る話題
 神山宣彦(独立行政法人産業医学総合研究所 作業環境計測研究部部長)

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国際機関による職業暴露値と発がん物質分類について、基本的な話、 ACGIHアメリカの学会組織の人造鉱物繊維のTLV、ILOで最近、人造鉱物 繊維、非晶質繊維、ガラスウール、ロックウールなどの安全使用要綱が 決まったのでそれについて話す。各国の規制値はレジュメに入っている ので触れない。

各国、あるいは国際機関の職業暴露値について
職業暴露値、Exposure Valueの直訳。職業暴露の限界値とか許容濃度と かいろいろな表現がある。

アメリカの労働省の機関、OSHAオーシャ、PELペル (permissible exposure limit)
アメリカの厚生省のような組織にある国立職業安全衛生研究所、NIOSH ナイオッシュではRELs(Recommendable Exposure Limits)
ドイツ、研究組合、MAKsマック
アメリカ民間組織、ACGIH米国労働衛生専門家会議、TLV(Threshold Limit Values:ACGIHの登録商標)
日本、労働省、管理濃度、ACL(Administrative Control Level)、場の 濃度で暴露値ではない。
日本の民間組織、日本産業衛生学会、OEL(Occupational Exposure Limit)

これらの値はそれぞれ数値化されている。全体としては職業暴露の限 界、最高値を示している。

発がん物質の規定が別途ある。

WHO、IARC国際癌研究組織、1発がん性あり、2A人に発がん性がたぶんに可能性高い、2B可能性若干あり
アメリカEPA、K(Known human carcinogen発ガン性確定)、L(Likely) 、CDD、LL、でランキング
アメリカ、厚生省としての組織、NIOSH、Ca(carcinogen: potential human carcinogen)
OSHA、同じくCaのカテゴリー
アメリカNational Toxicology Program、K (Known To Be Human Carcinogens)、R(Reasonably Anticipated To Be Human Carcinogens )
MAKs、ドイツ、職業暴露値をあらわすランキング、1(発がん物質とし て確認されたもの)、2、3、4、5
アメリカの民間組織TLV、A1(人に発がんありが確認されたもの)、A2 (非常に疑わしい)、A3

発がん物質としては、こうした分類に入るか入らないかで、数値化はさ れていない。

暴露限界値及び発がん分類の中でACGIH、2001年発刊されたものの中 で、合成非晶質繊維、その他の繊維、1ファイバー。

その中で、リフラクトリーセラミックファイバーは0.2ファイバー。非 常に厳しくなっている。今年の1月、2001年に提案する。A2。発がん性 でも高いほう。その他の硝子繊維関係は発ガン性ついていない。大きな 問題を呼んでいる。

シリコンカーバイド、ウィスカで初めての0.1ファイバーでA2にノミネ ート。ほぼ決定。

セラミックファイバーでは、昨年12月、ACGIH 62年の歴史で始めて訴訟 を受けた。3件。

セスキ炭酸ナトリウム、ACGIHがTLVを0.5にした。ACGIHのTLVを決める メンバーの中には、政府組織の公的機関の研究者が相当数入っている、 国のアドバイザーコミッティを代表しているようなものだから、1972年 のものとはずれるのはおかしいと主張。ACGIHは全くの民間組織と反 論。

耐火セラミック繊維(リフラクトリーセラミックファイバー)、0.2かつ A2に指定したことに対して関連団体4社は、ACGIHデータリサーチには欠 陥があって結論は誤り、もっと高い値が保証されるとして訴訟。

もう一つは個人が追加訴訟したもの。15年間塩ビモノマーに暴露して脳 腫瘍。ACGIHも責任ありとして訴訟。ACGIHが重要な情報を隠していると して争う。

TLVにしても発がん機関にしてもかなり厳しい状況になってきている。 企業としても労働者サイドとしてもいいかげんな状況ではやっていけな い。シリアスな状況になっている。

ILOが去年の1月に決めた、グラスウール、ロックウール、スラグウール の安全使用に関する情報を話す。

秋口に小冊子で出て、硝子繊維工業会、ロックウール工業会で翻訳され ている(※注)。
会議は座長を中心にして、グループがドラフトを作って、政府代表、企 業代表、労働者代表が固まってドラフトをたたいていくという進め方。 合意が取れるまで時間を取る。

安全使用上の実効規定の適用範囲、原則の取り組み方、手順、ハザード の分類、暴露限界などについて逐一吟味。

製造業者の一般的な義務、ガラス繊維、ロックウールの扱うビル設計 者、特定業者、雇用者、労働者の義務、疾病の予防方法、製品にはどの ような情報を明記しておくか、MSDS、ラベリングの義務、包装、輸送中 の問題、貯蔵、工学技術的な方法、衛生施設、工事現場でのシャワー等 の設置等。

義務でないものもある。国の状況による。
保護具、個別の予防方法、屋根断熱、吹きつけ断熱、充填断熱、ボイラ ー、ボード断熱材、断熱ウール、天井タイル等、撤去補修作業等、マニ ュアル的に決める。

情報、教育、訓練、専門知識、作業環境調査、個人暴露、静的モニタリ ング、測定方法まで決めている。日本の場合、労働者の健康調査結果は 5年間か。20年くらいもある。

生体内の耐久性。ドイツがリードしている。
carcinogenetic index: CI、ドイツはクレブスインデックス、KIケーア イ。議論が伯仲。EUでは一部入っている。ILOではそのまま盛り込むの はできないとされたが各国に影響を与えている。

生体内耐久性の低い、溶解しやすい繊維は発がん性が低いという考えを ベースにした指標。

動物実験、化学実験をする前に化学組成、化学分析をする。こういう組 成から二酸化アルミニウムの2倍の値を引く。直接CIとおく。

30以下の場合は発がん性の可能性はある。30以上40以下は弱い発がん性 があるかもしれない。40以上はほとんど発がん性がない。

化学組成だけでかなり予測ができるという指標。数値でデータを出して いる。

CIの値が高くなると、half life time半減期は短くなる。CIの数字が大 きいほど溶けやすい。解けやすいものは発がん性は低い。これだけで予 測できるというメリットを強調した考え方。ドイツのグループが提案し ているCI index。

正式には、ILOで時期尚早ということで否定したが、オーストラリア、 フランス、などでは取り入れている様子が見られる。

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 ※注:ロックウール工業会によれば、この冊子は2001年10月頃にできあがる予定とのことです。


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