繊維状物質セミナー報告 −(4)

2001年7月16日に行われた、「『繊維状物質の生態影響に関する最近の研究動向』セミナー」(中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター主催、繊維状物質研究協議会協賛)に参加したのでその概略を報告します。

ここでお伝えする内容は、録音テープと当日の資料をもとに、参加者が聞き取った内容をまとめたものです。聞き違いなどの間違いがある場合がありますので、どうぞご了解ください。

あくまでも講演のおおよその内容をお伝えするためのものですので、詳細についてはご確認をお願いいたします。



『繊維状物質の生態影響に関する最近の研究動向』セミナー

繊維状物質の生態影響評価の現状
(3)吸入(inhalation)実験
  田中勇武(産業医科大学 産業生態科学研究所教授)

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インダストリアルヘルス(INDUSTRIAL HEALTH※)、研究会の主だったメン バー、日本の繊維関係の研究をしている人、1冊の本にまとめた。 それを記念して、内容をわかりやすく話したらどうかということでこの 研究会が開かれたと理解している。
   ※Industrial Health Vol.39 No.2,April 2001
   (Special Issue:Health Effect Of Asbestos And Other Mineral Fibers)

全部で14、5名で吸入暴露実験をしている。そのくらいの人数がかか る。
進入経路。人間と同じような経路で行うということだが、なかなか実際 にやるのは難しい。
粉塵はどういう有害性を持つか、ハザード、ハザードを持っている有害 物質をどのくらい暴露するのか、暴露量、この二つのことがきちっとわ からないとできない。

労働環境でどういうハザードがあって、それがどのくらい暴露されてい るのか、これを反映させるために吸入暴露実験をする。
現場で、低濃度、長期間、それと同じような動物実験をしながら吸入暴 露実験をする。

暴露量は暴露濃度、暴露時間、呼吸量、粉塵は固体なので呼吸器内に入 るのかが問題。
粉塵は大きさ、粒子が呼吸器内に入るのかどうか、吸入性であるという ことがハザードの原因となる。ハザードとしてあるが、エクスポージャ ーはどれくらいか考えてやる。

肺に沈着、排出、その間に肺の中に癌化を起こす。繊維化、肺がんを起 こすなら、生態の防御機構、どのようなものが働くかを解しながら健康 影響を考えていく。

吸入暴露実験をどうしてやっているのか話す。
繊維状物質においては吸入暴露実験がもっとも望ましい。

暴露量を考えるときに、どのくらい入ったか、そのくらいの濃度でどの くらい暴露したか、暴露量がきちっとわかるように、そのためには粉塵 は、暴露期間中濃度が一定でなければならない。doseのことをきちっと しなければならない。

繊維状物質の場合、一定の濃度できちっと出すのは難しい技術が必要。 それを克服した。その方法を話す。

ダスト発生装置は、長期間の連続運転、慢性暴露は2年間、長期間の運 転に耐えること、ダスト濃度が一定、粒子径が一定、長さと径がいっし ょ、ダストの組成が一定、構造が簡単、操作が容易、設備費維持費が安 い、そういう装置がいる。

流動化法、流動槽。
ある槽の中に粉塵を入れ、下から空気を入れる。短いのは下の固定槽に とどまる。空気を送ると変わる。一定の濃度になると空気は液体のよう に動く。小さな粒子は上に出て行って、大きな粒子は横に流れる。

流動層の上でサンプリング。1日、15日間、一定の繊維が出てくるのが わかった。暴露チャンパーに導く。ダストの場合、粒子径を計ると所定 の物が出ている。

繊維状物質ではどういうことを考えていったらいいか。
事前影響評価、人での影響は出にくい。

おおざっぱにいって、試験管内試験数十万、生体内数百万、急性数千 万、慢性数億というオーダー。気軽に吸入暴露実験をやろうとは言えな い。

試験管内試験、生体内注入試験で何とかわかればそのほうがいい。しか しその信頼性は十分ではない。吸入暴露実験との結果と比較をしながら やっていこうということ。

理化学特性では繊維のサイズ、長いものが危ないのではないかとか、細 くて長い、化学組成、表面毒性、現在最も注目されているのが生体内の 耐久性、これだけではできないというのが安達先生で出てきたが、耐久 性というのは繊維化、癌化ではあるのではないかというのが私の考え。 いろいろな考え方がある。

INDUSTRIAL HEALTHの114頁に、吸入暴露実験でどのようなことがわかる かを書いている。("Biopersistence of Man-Made Fibers by Animal Inhalation Experiments in Recent Reports")

硫酸マグネシウムウィスカについて、繊維の長さの違いについて手に入 った。12ミクロン、4.9ミクロン。繊維の長さで変わるならわかる。

1ヶ月の急性暴露実験、12ヶ月吸入暴露の実験を見ても、何の生態影響 が出てこない。低い濃度でやっているせいもあるかもしれないが、影響 が出ない。1ヵ月後、1年後でも肺の中から出てこない、普通は回収でき るが、肺から回収できない。

42匹のラット、トータルで120時間暴露した。影響が出てこない。
27匹で1年間、1512時間暴露した。しかし顕著な変化はない。

溶解性が高いのではないかということ。
吸入実験では量が少なくて難しいので、強制的に注入実験をやった。
1ミリグラム。半減期17.6分。1日もあれば生体内から出る。

こういう程度の暴露量であれば、生体内から出やすいもの、生体内に長 く留まらない繊維ならば影響が小さいのではないか。

新しく開発する場合でも、できるだけ生体の中に長くとどまらない、で きるだけ短い、太い、そういうものの方がより安全に近いのではないか ということを考えながらやってほしいというのが希望。

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