繊維状物質セミナー報告−(1)

2001年7月16日に行われた、「『繊維状物質の生態影響に関する最近の研究動向』セミナー」(中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター主催、繊維状物質研究協議会協賛)に参加したのでその概略を報告します。

ここでお伝えする内容は、録音テープと当日の資料をもとに、参加者が聞き取った内容をまとめたものです。聞き違いなどの間違いがある場合がありますので、どうぞご了解ください。

あくまでも講演のおおよその内容をお伝えするためのものですので、詳細についてはご確認をお願いいたします。



『繊維状物質の生態影響に関する最近の研究動向』セミナー   (2001.7.16)

    主催:中央労働災害防止協会 労働衛生調査分析センター
    協賛:繊維状物質研究協議会

[挨拶] 中災防労働衛生調査分析センター所長 櫻井治彦
           (13:00〜13:10)

化学物質の危険有害性については常に注意を払っていなければならない 時代である。
MSDS義務化の動き、化学物質提供者は危険有害物質の情報を収集し提供 する、そのような負担が増してきている。
できるだけ安全な繊維物質を開発することは、技術上大きな課題になっ ている。

ダイオキシン類の場合、毒性のメカニズム、共通のメカニズムがある。 個々の化合物に相対的な毒性の強さ、数字を当てはめ、それで混合物の トータルな毒性を評価しようとしている。
繊維物質の場合、エンドポイントがわりあいにはっきりしている。毒性 にかかわる要因が、繊維の太さ、生態内での残留性、表面の構造、構成 元素、結晶構造、こういった特性の組み合わせで決まると考えられてい る。それぞれの組み合わせで評価値を算出できないかという方向が考え られている。どこまでそういう方向に進みうるのか。

新しく開発する繊維の有害性を予測することが考えられている。

ユーザーに提供する際、用途に応じてリスクを最小にできるように工夫 した製品を提供することも考えていると思う。

「機械の包括的安全についての指針」が6月1日に出た。
機械のメーカーが、ユーザーが使う状況を知った上でリスクを最低限に する、持っているハザード、暴露する労働者の危険の程度、暴露の程度 を勘案して、できるだけリスクを削減して機械を提供することを努力目 標としている。

残存リスクについて、どういうリスクがあるのか文書で情報を提供する ことを求めている。
繊維状物質もそういう方向にいくのかな、という気もしている。

中央労働災害防止協会の労働衛生調査分析センターは旧労働省の委託を 受けて、「石綿及び繊維状物質等の有害性に関する調査研究委員会」を 設置し、こういった問題についての情報収集に努めている。

今回、委員の方におはかりをしてこのセミナーを開催する運びとなっ た。

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[化学物質管理と労働基準行政]
 厚生労働省安全衛生部化学物質調査課 中村富也
 (13:10〜13:40)

*化学物質による健康障害の発生状況---

地方労働局47、監督所350位、健康障害が発生すると報告がある。 数値に表わせないもの、中長期的な暴露による健康影響に関心が集まっ ている。
化学物質の安全な取り扱いに向けての要請をすすめていかなければなら ないと考えている。

*労働安全衛生法令に基づく化学物質の管理---

有害性がはっきりしているものには厳しい規制をかける、はっきりしな いものは極力事前に事業者に調査してもらい、事前の対応を図る。

有害性がはっきりしているもののうち、有害性がきわめて高い物質は製 造等の禁止をする(9物質ある)。ついで高い物質108物質については、 製造の許可を義務付ける、きめ細かな取り扱い等の基準を設けて管理対 象、規制対象としている。

有害性調査が未実施、評価が未定の物質は約5万5千物質ある。 有害性の調査を事業者に義務付けている(昭和54年に法制化)。 新規化学物質の届出、最近では年に700を超える物質の届出がある。

279物質については変異原性がある、癌を引き起こす疑いがあるとされ ている。行政指導で適切な取り扱いをするように求めている。

*厚生労働省としての化学物質対策の基本的な考え方と今後の対応---

5万5千物質の化学物質がある。できるだけ有害性を調べて情報を集めて 提供していくことが大事。はっきり確認できたものには規制の網をかけ ていく、取り扱いのルールを整理する。はっきりしないものについて は、事業者の自主的な管理にゆだねる。
自主管理が不可欠。労働安全マネイジメントシステム、ILOで採択され る。リスクアセスメントの考え方をベースにしてすすめる。

*化学物質管理指針---

化学物質管理計画の策定、法令の遵守に関すること、リスクアセスメン トに関すること、保管貯蔵運搬等に適切な管理をする、大量漏洩時の管 理、健康影響に関すること、化学物質管理者を指名、など。監査、記 録、人材の養成など。

有害性の特定、アセスメントをしていく。有害性の程度と暴露量が問題 になる。暴露量を特定して評価し、措置を考える。暴露時間で制限する 等の対応をする。

これらのを取りまとめた管理指針を普及定着させていこうとしている。 化学物質管理支援事業の一つとして、中災防に「化学物質管理支援セン ター」を置いて支援をしていこうとしている。

化学物質管理者研修の実施(地方レベル)、モデル的なMSDSの作成、既存 のMSDSの評価、好事例やラベル集の作成をして企業の管理を支援してい こうとしている。

*トピックス的な話---

廃棄物焼却施設におけるダイオキシン類の暴露防止対策、エチレンオキ シド対策(滅菌剤)、シックハウス問題(ホルムアルデヒド)、PCB処 理等。

*石綿の関係について---

クロシドライト等については製造禁止措置がとられている。今後の焦点 はクリソタイル。自主的に使用を止めようとする企業が出てきている。 国際的動向の中でも全面禁止に近い形で対応していかなければならない ということも言われている。
われわれとしては、クリソタイルの使用の一層の削減、今後ともさらに 検討をすすめて一層の使用削減を図っていこうと考えている。

*結び---

われわれもできるだけ有害性を調べ、情報を集め、提供をしていく。必 要なものは規制をかけていく。企業における主体的な自主管理の推進に 努めていただきたい。

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