気候フォーラムからの回答
1997.10.18

 1997.10.18    

アスベストについて考える会 様

気候フォーラム事務局次長   

 10月14日付の質問を拝見しました。

今回のご質問と、先にご質問いただいた10月3日付けのご質問もあわせて説明させていただきます。

1 気候フォーラムのポジションについて

気候フォーラムの原子力発電についてのポジションは、「10の主張」のとおりです。原子力発電を地球温暖化対策として認めないことは、気候フォーラムの準備段階から気候フォーラムの基本的なポジションとして確認されてきました。「10の主張」にあるように、原子力発電の推進はもちろん新増設は認めないというのが気候フォーラムのポジションです。ただ、気候フォーラムは基本的にネットワークであり、それぞれの参加団体には、即時全面廃止から、順次廃止、現状の容認など、さまざまなポジションがあると思われます。

従って、気候フォーラムがCO2削減のために原子力発電をやむを得ない手段として受け入れる余地はまったくありません。

私たちは、そもそも政府のエネルギー計画に対して批判をしています。気候フォーラムの立場は、「10の主張」の前書きにあるように、「根本的な原因である資源を浪費する大量生産、大量消費、大量廃棄の社会・経済システムと物質的な欲望のみをひたすらに追及する価値観を変えることが求められている」との立場です。エネルギー需要そのものを抑制し、再生可能エネルギーの利用拡大を求めていることも、総合的にご理解いただきたいと思います。

 

2 政府の5%削減案が原子力発電を前提としているかどうかについて

まず、日本政府の今回の数値目標の提案は5%ではなく、限りなくゼロに近い提案であると考えています。政府の資料でも、日本の削減目標はGDP当たりの排出量により2012年までに1990年レベルで2.5%を削減するにすぎず、この2.5%も柔軟条項により前後2%までは法的義務を負わないとされていますので、結局、0.5%のみの削減目標であり、これに共同実施とか、排出権取引とか、吸収源を入れたネットアプローチをとれば、結局、2000年までに1990年レベルで安定化するという現在の条約上の努力目標の12年先延ばしにすぎないというのが気候フォーラムの事務局長見解です。

今回の日本政府の提案は議定書の内容の提案であり、原子力発電を前提にした提案には当然になっていません。(削減するためにどのようなエネルギー政策をとるかは各国の政策の問題であり、世界の趨勢からしても原子力発電を代替エネルギーとした政策をとる国は少数と思われます。)しかし、通産省は明らかに原子力発電の新設、増設を、日本における削減の前提としています。

 

3 緊急要請署名について 

緊急要請署名の内容は、今年7月〜8月にかけてボンで開催されたAGBM7で、日本政府がアメリカ政府に対し、削減どころか増加を許しかねない提案を密かにしたとの報道がなされ、アメリカと日本が数値目標を提案していないことが議定書交渉の障害になっているとAGBMのエストラーダ議長が記者会見で指摘するような状況のなかで、常任運営委員会で議論し、文案を決めたものです。

議定書交渉の状況からして、議長国である日本政府が具体的な数値目標を提案することは議論を噛み合わせるうえで重要であり、そのためには省庁に任せることなく橋本首相がリーダーシップを発揮することが重要だとの認識からです。

 

4 数値目標と原発増設の論議について

 「10の主張」を外務省、通産省や環境庁との交渉、国会議員との懇談、記者会見などで必ず配布しており、気候フォーラムが原子力発電を推進しているとか、暗黙に容認しているとか誤解される心配はないように思います。十分ではないかもしれませんが、気候フォーラムの主張を理解していただく努力は今もつづけています。

なお最近、気候フォーラムに参加している環境NGOであるWWFJやCASAなどで日本における削減可能性についての研究結果が報告されています。また、市民エネルギー研究所でも研究結果を発表しています。私自身はCASAの専務理事ですが、CASAの研究では原子力発電については新設や増設をいっさいせず、30年たった炉は順次廃止していく前提で検討しています。

 

ご質問に的確に答えているかわかりませんが、ご理解いただければ幸いです。

なお、COP3まで50日をきり、気候フォーラムの事務局は、事務局員、ボランティアスタッフを含めて多忙を極めており、すぐに返事ができなかったことをお詫びしたいと思います。これからもよろしく御支援、御協力をお願い致します。


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