” 自由への脱出 ”
ワニが待ち伏せしている大河を決死の覚悟で渡る縞馬の大群の先遣隊
ベトナム戦争時、川を渡って逃げる「母親とその子供達」
の写真は”自由への脱出”として世界的に有名になった

その必死な思いと行動、表情はどこか共通している
豊かな草原を目指して、川を渡ろうとするがワニがいることを知っており、怖くて渡れない 意を決して、何頭かが川に飛び込み、渡り始める
続いて、川に飛び込む ワニが来ないうちにと、必死で泳ぐ

野生の動物たちは、いつも豊富な草を求めて移動する。
移動時は、弱い動物ほど大群で移動する。 最大の大群は「ヌー」であろう。時に100万頭を越す。 次いで「縞馬」であろう。

これは、弱いがために、襲われて数が減っても、出生率の高さから数を維持し、種の保存を保とうとするためである。

縞馬の大群が、川を渡ろうとして、川岸に集まってきた。
私は対岸からこの様子を見ていた。

私の視界には、泥水の川の中に眼だけ出して、身を潜め、様子を窺っている「ワニ」の姿が確認できている。 時々、ゆっくり移動している。

縞馬の大群はこの川にはワニがいることを知っている。
川岸でしばらく、ウロウロしながら様子を窺っていたが、意を決して何頭かが川に飛び込み、必死で泳ぎだした。 続いて、数十頭が飛び込んだ。
これらの集団は、無事に対岸にたどり着くことが出来た。

ワニがゆっくりと、眼だけ出して、渡河している縞馬に近づいていった。

縞馬は、パニックになり懸命に対岸に泳ぐもの、あわてて、必死にもとの岸に戻ろうとするもの。
大混乱となる。

このとき私は、ベトナム戦争時、著名な報道カメラマンが、撮った写真 ”自由への脱出 ”の母親とその子供達の生々しい、必死の表情が思い起こされた。
これは、激しい戦火から逃れ、戦場より脱出するため、幼子を胸に抱えた母親が、他の子供達を引き連れ、急流の河に飛び込み、河を渡る緊迫した状況と表情を撮ったものである。

この写真は後に「ピュリッツア賞」を受賞した。
この報道カメラマンは、日本のロバート・キャバとも称されたが、おしくも、34歳の若さでゲリラ兵に狙撃され、戦場に散った。

「生への脱出」、「自由への脱出」は生きとし生きる者、全て共通であろう。

この緊迫したドラマはビデオにも撮影したが、ここでは紹介できないのが残念です。

野生の動物たちは、日々、大草原の中で「生へのドラマ」を展開している。

この自然のドラマは、動物に思いを馳せたとき、身震いするほど、感動的であった。

    難しく、厳しい渡世でも、ヤッパ人間で良かったんだろうなー。

               どうかなあー

数十頭が川を渡りきる ワニが近づいてきた
縞馬も気がついた
川の中から、岸に引き返し始めた 縞馬の大群は渡河を諦め、川岸から離れた
何頭かの縞馬は、まだ川の中にいた

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