映画「慕情」の舞台の香港

音楽もロマンチックでした
8月の下旬に日本を発って中東の入り口パキスタンとアフガニスタンへ行くことになった。
日本も蒸し暑いがインド大陸の西側に位置するパキスタンも中近東のカラッとした暑さではなく、むしむしとしたジトッとした汗が噴き出す猛烈な暑さの国である。経由地は香港とバンコックの2カ所。

約4時間で最初の経由地香港につく。給油と機内清掃で約一時間半かかるので皆空港ビルに移動する。空港ビルの中はさすがに香港らしく、ありとあらゆる物があり見物している分には退屈しないが空港ビルに入るときと、出るときに通過するゲートの所で大変屈辱的な思いをさせられる。

一人ずつ、大勢の人の前で順番に実に小さな台の上に立たされる。その指示をするのが小柄な香港女性で奇妙なアクセントの片言の日本語で言われるのかえって見下されているようで不快な思いにさせられる。次いでその女性に金属探知器で体中こすられてチェックされ、問題ないと「はい、台から降りて。 次。」  一体なんだろうと思う。 皆不快な顔で女性検査官に聞こえよがしの声でブツブツ文句を言いながら通っていった。

香港から次の経由地バンコックへは約4時間のフライト。 ようやくバンコック着。 このあたりから中東の臭いと雰囲気が漂い始めてきた。空港ビルはエアコンが入っているとはいえ十分でなく気温、湿度ともは高くジトッとして、蒸し暑い。

バンコックはこのあたりの交通の要所で東南アジア各国のエアーラインや中近東との連絡便、そして成田発ヨーロッパ行き南回り線の経由地でありここで飛行機を乗り換えるトランジット客も多くごしゃごしゃと混み合っている。中東へ出稼ぎに行く人は飛行機の機内持ち込み重量制限などお構いなく手に多くの物を持ったり担いでいる。

毛布、ラジカセ、ポット、ジャー、食料の入ったズタ袋、ビニール製の大きなバックなど。この荷物が原因でよく乗客同士やエヤーラインスタッフともめたり時には喧嘩沙汰になったりする。 だんだんルールなき世界に入っていく気分となる。先が思いやられる。

空港ビルでトイレに行った。あまり綺麗な雰囲気ではないがむをえない。ところが入り口に太ったおばさんが椅子にドッカと腰掛けている。側に大きなカゴが置いてあり、中に各国のコインや紙幣が入っている。どうやらトイレを使用するに当たってチップを置いていくよう強制したり、そのままはいる人を阻止する役目らしい。

そんなことを強制する空港があるだろうか。あるはずがない。さすがにタイ政府はおばさんの後ろの壁に「チップ不要」の貼り紙を出している。そうでしょう。あまり綺麗ともいえない公共の空港のトイレでおばさんに強要されてチップを置かされるのは小銭故どうでもよいとも思うが何とも腹立たしい。
見ていると大部分の人は怪訝な面もちで「チップ不要」の貼り紙とおばさんの顔を見比べながら、しびしぶ、納得いかない顔つきで払っている。まるで有料トイレのように。

私はおばさんの前をゆっくりと通った。すかさずおばさん声を掛けてきた。しかも「マネー、マネー」と私も壁の「チップ不要」の貼り紙を指さし「ノーチップ、ノーチップ」と。 これはタイ国政府の規定である何故貴方は私にチップを強要する権利があるのかと言い返した。

周辺の人がこのやりとりを見ていた。見ていた人には小銭ぐらいあげればいいのにと思う人、変なおばさんに言い返してやれと思う人、いずれが多いか分からないが、私は今後の練習と思ってやってみた。小さな経験の第一歩であった。
次話へ