訪れる人もまばらな暑さの中を、悠久の時間がずーと見つめているように思える 古からの歳月を経た階段ピラミッド
何を思って今日もたたずむか


サッカラの階段ピラミッド群を案内してくれたエジプト人と
通常1段の墓を、6段の階段状に積み上げピラミッド状にした断面図

サッカラはカイロから車で一時間ほどの所にある古王国時代の遺跡の宝庫で、初期王朝時代から墓地として王や貴族の墓が営まれ、最古のピラミッドである階段ピラミッドや貴族達の墓であるマスタバ墳などがあり、その後に建造された巨大ピラミッドのあるギザとはまた趣の違った遺跡群である。

墓所は王朝により、あちこちに移転した。 サッカラも一時期、影を失なったが、有名なツタンカーメン王が隣のメンフィスに都を置いたため再び墓所として使われるようになり、都がカイロに移るまでその役割を果たした。

写真はサッカラで最も有名な古王国第三王朝のジェセル王の階段ピラミッドである。
この階段ピラミッドは王の宰相イムヘテプの設計による世界最古の石造建造物である。 彼は今でいうマルチ人間で、政治家だけでなく、医師であり、建築家でもあった。

従来は王といえども墓は一段であったが、彼は王の永遠の家である墓を段積みすることにより、高いピラミッド状の記念碑として完成させた。

この階段ピラミッドのもう一つの特徴は、従来建築資材に日干しレンガを使用していたが、彼は永遠の象徴である石材を用いたことだった。
以後ギザの巨大ピラミッドの如く、強大な権力を持った王は石材による巨大建造物を造った。

階段ピラミッドは何度かの変更を経て、最終的に6段で高さ60m、基底部は140m×128mという巨大なものとして完成した。

ピラミッドの北側に葬祭殿がある(左下の写真)。
上部はコブラがグルリと取り巻いている。

コブラはエジプトを代表する毒蛇である。 古代から王権を守護する象徴として、ハゲワシとともに王の額につけられた装飾として使用された。

エジプトではコブラは猛毒をもつ神の使いの聖蛇なのである。

クレオパトラがローマ帝国との戦いに敗れ自殺するとき、神の使いのコブラに豊満な乳房を (見たことはないが) 噛ませて、果てたことは、あまりに有名でまた哀しい運命であった。

ツタンカーメン王の黄金のマスクの額の上には、コブラとハゲワシがついている。

「コブラは毒にも神にもなる」 んだなー。

ツタンカーメン王
額の上は豪華に二つ
(左)ハゲワシ
(右)コブラ
トトメス三世
容姿端麗、理想の
王像表現
(額にコブラ)
幼少のラムセス二世
ハヤブサの姿をした神に守られている
(額にはコブラ)
ライオンの神
セクメト神像
ライオンもコブラが頼りです

葬祭殿の上部には王権を守護するコブラがズラッと並んで守っている 雨の降らない乾燥した青空の下で、永い年月がんばり続ける階段ピラミッド

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