ザンベジ川を泳いで渡り始めた「象」 対岸に渡りきった「象」(右端の高い木の右下)

ザンベジ川クルージングでビクトリア大瀑布へ向かっているとき、川岸の密林から一頭の「象」が出てきて川をしばらく見ていた。最初は川岸で水浴びをするのかと思っていた。そんな光景は時々見かける。ところが、突然川に入り泳ぎ始めた。どうやら川を渡ろうとしている。
川幅は広く、水量も多く、流れも瀑布に向かって速い。

大抵の場合、象はファミリーの集合体の群で行動している。 しかしこの象はたった一頭で、大きな川を泳いで渡ろうとしている。 一体この象に何があったのだろうか。

 
群からはぐれ、必死に追いつこうとしているのだろうか。 それとも、群から遠く離れようとしているのだろうか。
いずれにしろ、危険を冒して象は川の中央まで泳ぎだした。 もはや、何としても、川を泳いで渡り切らねばならない。

あんな巨体で良く泳げるものだ。 頭がちょこっと水面に出ているだけ。
皆、心配そうに船から固唾をのんで見つめている。
クルージングの船長は船を止めた。渡りきるのを見届けようと言うのだ。

象は必死で泳いだ。皆、無事に渡りきるよう祈るような思いで見つめていた。
少しづつ象は対岸に近づいていった。
突然象が流された。 疲れて川の勢いに流され始めた。危ない。溺れてしまう。誰もがそう思った。船が動き始めた。
その時、象は再び必死に泳ぎ始めた。 がんばれ、がんばれ。皆、応援した。
岸辺に近づくにつれ、流れがゆるくなった。象はようやく危険を脱したようだ。
少しして象は対岸にたどり着いた。

象はしばらくあたりを見渡していたが、やがて密林の中へ消えていった

クルージングボートは本来のクルージングに戻った。
次話へ