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アスベスト対策情報 No.27
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(2000年2月1日発行)



「現場報告」開会あいさつ

富山洋子
石綿対策全国連絡会議代表・日本消費者連盟運営委員長

こんにちは。ご紹介いただきました富山洋子と申します。
アスベストの問題というのは「静かな時限爆弾」と言われて久しいのですけれども、先ほどもご報告にもありましたように、厚生省でさえも、学校などにおける吹き付けアスベストの問題が一応解決した段階で、私たちの日常生活にはほとんど関係がないものとして捉えられている、ということが非常に残念です。

厚生省との交渉のやりとりのところで、「クリソタイルというタイルにはアスベストが含まれているのですか」と発言した役人がいるということです。私たちでさえもクロシドライトとかアモサイトとかクリソタイルとかというのは、消費者運動に取り組んでいる者でもわりにすらすら言えるもので、それがどういうものであるかは認識しているんですけれども、厚生省の役人でさえもこういう認識である。ということはいかにこの問題が行政の中でもなおざりにされているかがうかがえます。

消費者運動の中でも、いま緊急の課題になっているのがダイオキシンの問題です。消費者大会でもアスベストのことを1980年代にはかなり取り上げてきたのですけれども、この間の消費者大会、この前の消費者大会―11月11-12日に開催されましたが、私はその環境の分科会を担当しましたが、その中でもアスベストの問題を入れ込むことができずに、多くの時間をダイオキシンの問題とか産業廃棄物処理の問題にさかれてしまいました。そして9月30日に起きたJCOの臨界事故、そのようなところに目が向いてしまっています。それはもう、当然のことだと思うのですけれども、私はアスベストの問題も根元的には同じことだと思うんです。危険なものに私たちが頼って暮らしてしまっている―そして、その時にやはり厚生省のやりとりの中で役人が言ったという、ハザーズとリスクの違いというのが、このごろ必ずダイオキシンの問題についても、あるいは放射能の問題についても必ずしたり顔の学者によって言われています。

私は命を大事にする視点から言えば、危険だと言われているものは、少なくともそういう指摘されているものは、やはり私たちの身の回りから排除していかなければならない。疑いのあるものでも、私たちはそれを排除していかなければならない。では、代わりはあるのか? というふうに必ず問われるわけですけれども、アスベストの問題についていえばもう代わりはある。それが安全だとは言い切れないにしても、クリソタイルよりも相対的には安全性が確認されている。そのような状況の中で私たちはクリソタイルも追放していかなければならない。そのためには一部の人たち、働く現場の人たちだけの運動にしていては決していけない。日本消費者連盟もがんばってやっていこうと決意はしているんですけれども、取り組む問題が課題があまりにも多く、今年は残念ながら省庁交渉にも参加することができませんでした。

しかし今日の集会の報告、そしてその後もできるだけ多くの機会を捉えてアスベストの問題を伝えていきたいと思っています。そしてそのひとつとして日本消費者連盟が企画して緑風出版から出る本の予定がございます。これは、『安全な暮らしのために』という仮題なんですけれども、私たちの暮らしを取り巻く危険なものの話、その中でアスベストの問題も取り上げ、ここで司会をしてらっしゃる、永倉さんに執筆していただいております。来年早々には出ることになっております。で、私ども月3回発行している『消費者リポート』という機関誌などもますます活用して、アスベストを私たちの身の回りからすべて根絶していくよう皆様方とともに進んでいきたいと思います。ありがとうございました。



米海軍横須賀基地退職者の労災裁判、損賠請求

西田隆重/落合博文/荒井春雄
(社)神奈川労災職業病センター /米海軍横須賀基地アスベスト・じん肺労災裁判原告(写真左)
/第2次損害賠償集団請求団当該(写真右)

[西田隆重さん]

すでにご存じかと思いますけれども、今(1999)年の7月7日に、米海軍横須賀基地の元従業員16名の方たちが国を相手としてじん肺裁判を提訴しました。おそらく基地のじん肺裁判としては初めてであり、かつ国を直接相手としたじん肺裁判としても初めてではないかと思っています。

16名の原告は、いずれも米海軍横須賀基地の艦船修理廠で働いて、粉じんに曝露し、退職後、じん肺、あるいはその他のアスベスト疾患に罹患した方たちです。とくに朝鮮戦争やあるいはベトナム戦争のとき、揚陸用舟艇の突貫工事に従事し、マスクもしないままアスベストに曝露されたという経過があります。残念ながら、米軍の基地では1980年代後半になるまできちっとしたアスベスト対策がとられていなかった。その結果、退職後に多くの被害が出た。それが裁判につながったわけです。

若干その経過を説明しておきますと、いきなり裁判というかたちをとったわけではありません。そのちょうど1年前に、普通の民間企業では、労災保険給付は最低限の補償であり、その上に上積み補償という制度を設けてあります。在日米軍基地の場合には、そういうものはありません。ただし、アメリカと日本政府の間で取り結んだ日米地位協定のなかで、米軍あるいは米軍人が何らかの事故等を起こした場合に、その損害を補償する制度があります。

日米地位協定18条6項にそれが書かれているわけですが、実は、私ども調べましたら、すでに過去3名のじん肺の方、あるいは肺がんの方の損害賠償が補償されているということがわかりました。それならば、じん肺の被害はその3名の方たちにとどまらないではないか。現に私ども、神奈川労災職業病センターに相談にきている方たちの中で、退職者でかつじん肺の被害に遭った方は非常に大勢おられます。そうした方たちも、当然日米地位協定にしたがって補償されるべきだ、ということで1年前の4月に損害賠償の請求をいたしました。

ところが何と半年経って、請求した20名全員を棄却すると。しかもその理由が、時効であると。在職中にじん肺の管理区分というものを受けますけれども、それから3年経ったから時効なんだ、という理屈にならない理屈で全員を棄却しました。じん肺の患者さんにとって時効はありません。じん肺に被災をすれば、日々症状は進行して、それは退職後も続き、死ぬまで続くわけです。このこともマスコミ等で報道されましたけれども、じん肺に時効はないということで、非常に原告たちは怒りました。ただ、いずれの原告たちも高齢ということで、果たして裁判を闘えるかということを悩みながら、紆余曲折がありまして、晴れて7月7日に提訴したわけです。

この裁判のひとつの課題は、じん肺に時効はないということを裁判で争うということがあります。それから、もうひとつは、米軍はやはり安全配慮義務を怠ったのではないか、あるいは粉じん対策を怠ったのではないか、ということを裁判で主張していかなければならないと思っています。

一方で、日米地位協定に基づく損害賠償を請求して、時効で門前払いされた後でも、第2次の請求ということを行っております。じん肺の管理区分決定を受けてから3年以内に請求すれば、受理するのか、ということでですね。今(1999)年の1月と3月に7名の方が第2次の日米地位協定に基づく請求をしております。

しかし、第1次の20名の方たちは、やはり裁判でなければ争えない。残念ながらその制度の中に不服申立制度というものがありませんから、これは裁判に訴えて、その時効の壁を突破しなければなりません。そういう意味で、現在裁判をやりながら、同時に日米地位協定に基づく損害賠償請求もやっております。

今日その裁判の14名の原告のうちのひとりの落合さんと、それから日米地位協定に基づく第2陣の請求の荒井さんがみえておりますので、おふたりからご挨拶していただきたいと思います。

[落合博文さん]

私は、横須賀じん肺被災者の会の落合博文と申します。詳しいことは、先ほど西田事務局長からいろいろ説明があったと思いますので。まあ、わたしは口べたで上手なことはしゃべれませんけれども、私なりにひとことと思いましてこの場にまいりました。

私は、米海軍横須賀基地退職者で、在職中、じん肺管理区分2の診断を受けておりました。退職後2年ほど経って、専門医に横須賀中央診療所で診察を受けたところ、続発性気管支炎の診断を受け、現在、労災認定を受け療養しております。そして、西田さんから言われたように、昨(1998)年4月、横須賀じん肺被災者の会員、全駐労横須賀支部、その他多数の支援団体のご協力を得まして、損害賠償の請求を横浜防衛施設局にいたしました。基地退職者のじん肺被災者20名が申請しました。ところが、防衛施設局は昨年 9月4日、全員時効という一方的な却下をしました。

じん肺患者には時効はない、発達した今の医学のなかでも進行性の病で、悪くなっても良くはならない、と言われております。私たちじん肺被災者は、聞く耳を持たない一方的な却下に対し、腹の底から憤懣を込め原告団を結成し、遺族を含め16名が、7月7日横浜地方裁判所横須賀支部に提訴しました。

私は、原告のひとりとして願うことは、今まで何十年という粉じん職場で働いてきた皆さん、じん肺療養中で苦しんでいる皆さん、またこれから先、新しいじん肺患者が出てくるでありましょう。その人たちのためにも、なんとしても被告・国に非を認めさせ、一日も早く勝利して、じん肺根絶を願ってやみません。

どうか皆さん、私たちの裁判に絶大なるご支援とご協力の程をお願いいたし、はなはだ未熟ですが、私のご挨拶とさせていただきます。


[荒井春雄さん]

私は、時効による門前払いは不当と、時効3年の枠内で日米地位協定に基づく第2次の損害賠償請求を行っている荒井春雄と申します。

これからも、皆さん、じん肺で苦しんでいる人たちを少しでも、じん肺というものは悪くなれど良くなることはないということをさらに認識いただきまして、これからも私たちを何とかご支援いただきたいと思いまして。よろしくお願いします。


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