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対策情報 アスベスト対策情報

アスベスト対策情報 No.27
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(2000年2月1日発行)






38年間の石綿作業で中皮腫
労災認定の取り組み

村田 卓
全建総連神奈川土建大和支部

石掛さんのことがありまして、石綿に関心を持つようになりまして、たまたまこちらに顔を出したということで、今日報告をしろというのはこの場に来てから言われました。石掛さんに関する資料も書面であります。これは私の報告よりも良いものですので、お読みになって下さい。

昨(1998)年の9月くらいから、お腹が張るということは聞いていたんですけれども、今(1999)年の2月くらいに、どんどん膨らんできて、食欲もなくなってきたということで、検査入院をされてたんですけれども、全く原因がわからなくて、たまたま大和支部の近くの桜ヶ丘中央病院というところの先生が、昔アスベストによるこんな症状を持っていた人がいたな、ということを言われたのが発端です。

それによって、石掛さん本人が労災を申請したいということで支部の方に来まして、石掛さんは、発病当時大和支部の副委員長やってらっしゃって、とても活躍されていた方なんです。

石掛さんは熱絶縁工といいまして、アスベストを扱う仕事をやってこられた方です。それで、桜ヶ丘中央病院から北里大学病院に転院しまして、それから私たちも10回くらいですね、監督署交渉をやりました。

桜ヶ丘中央病院の医師も北里大学病院の医師も悪性中皮腫と診断していましたし、芝病院の海老原医師に書いていただいた、アスベストの曝露により発病という診断書も監督署に提出しました。組合では署名活動を行い、1万2千近い署名を短期間に集めたということもあります。あと、建設業の方って契約書を交わさなくて仕事を受けてしまったりする人もいるんですけど、石掛さんは、非常にきめ細やかな方で、すべての仕事に関するものをファイルしておりまして、その中に使っている材料などを完璧に網羅していましたので、この石掛資料というのは、早期認定に大きく貢献したんのではないかと思います。

入院中も細やかな人で、一つひとつの治療、薬についても全部チェックされておりまして、余談ですけど、お医者さんにとってはちょっとやりにくい患者さんだったんじゃないかと思います。

もうひとつ大きなポイントになったのは、家族になかなか同意していただけなかったんですけれども、最終的に、やはりこれから石掛さんみたいな人たちを出さない、そして救うためにもお医者さんに解剖してもらう方がいいということで了解を得まして、芝病院の海老原先生に執刀していただきました。これで多くの資料もできましたので、今後のこういう活動に生かしていけるのではないかと思っています。以上です。



石掛茂征さん(大和支部)の労災認定について

(1) 38年間アスベストを扱う作業で発病

石掛茂征さんは、昭和35年から横浜市内でアスベストなどを扱う会社に入社し、熱絶縁工(または、保温工)として、平成10年12月まで約38年間にわたり、造船所や火力発電所、製薬会社、食品工場、酒蔵会社、ワイン工場、自動車工場、清掃工場、ゴミ焼却場、小学校、中学校、高校、大学、ホテルやスーパーなどでの保温、冷温工事作業などに従事し、ほとんどの現場で発がん物質とされている、アスベストが含まれた断熱材を使用した作業に従事。今(1999)年のはじめに悪性中皮腫を発病、労災申請していましたが、本年11 月15日、つい先程方災認定されました。

(2) 防じんマスクもない、無防備の中で石掛茂征氏は、労働安全衛生法や特定化学物質等障害予防規則などが制定される以前から従事していたため、毎日使用している断熱材にアスベストが含まれているとか、発がん物質であるなどの教育、指導も受けていませんでした。そのため、現場では防じんマスクや防護衣などアスベスト粉じんの防護対策は無防備での作業でした。むしろ、熱に強く、溶けない、錆びないなど素晴らしい断熱材と認識していたようです。

安全対策は、労働安全衛生法が制定され、特定化学物質等障害予防規則などが制定された後に、現場で防じんマスクを着けての作業や、作業衣は家庭に持ち帰らないなどに注意していたようです。

(3) 今年2月に診察受け、半年後に亡くなる

石掛さんは、昨年末頃、少し太ったかななどと家族と話し、家族も中年太りかななどと会話していました。しかし、2月頃から体調を崩し、自宅近くの桜ケ丘中央病院で診察を受けて、数回の検査をしましたが、はじめのうちは原因がわかりませんでした。たまたま、医肺の一人が「ずうっと前に、この病気はアスベストを吸ったためになる病気ではないか」と話して、アスベストを吸ったことによる発病であることがわかってきました。その後、入院して検査をしたところ「腹膜胸膜炎」と診断され、その後北里大学病院に転医し療養しました。しかし、医師団の治療や家族の手厚い看護を受け療養しながらも、労災の準備を進めていましたが、労災認定の結果を聞けないまま、7月8日の夜に亡くなられました。

石掛さんは闘病中のベットの上でも、自分の病気が労災認定されるか心配していました。

(4) 石掛さんの遺志を守り精密検査を行う

ご家挨の皆さんは、石掛さんが闘病中、「いつ、労災認定になるんだ」と、労災認定の行く末を心配しながら病と闘ったお父さんの遺志を受け、石掛さんの病気を労災認定させるために、悩み、葛藤しながら、亡くなられた翌日、「石掛さんの遺体を精密検査」しました。検査を担当された芝病院の海老原医師は、明らかにアスベストの曝露による病気と診断されました。

(5) 私たちの運動で、報告集会に認定される

桜ケ丘中央病院の医師は「腹膜中皮腫」と診断、この疾病はアスベストを吸ったことによる病気と説明し、北里大学病院の医師も「悪性中皮腫」と診断していました。芝病院の海老原医師の検査でも、アスベストの曝露により発病と意見書を書いて監督署に提出しました。故石掛茂征さんの疾病は業務上による疾病として、組合では署名運動を行ない、一万筆以上の署名簿を5回出して来ました。監督署への早期認定を求める要請行動は10回を超え、神奈川労働基準局への要請行動を行なってきました。また、9月28日には、監督暑の署長に会って、「早期に認定するよう昔促、10月15日には報告集会を開催しますので、報告集会に間に合うよう」要請してきたところです。

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厚木労基署への自己意見書

はじめに
私は、昭和16年10月大分県豊後高田市に生れ、小学校、中学校は健康そのもので、高校入学後も元気 に過ごし、昭和35年3月に高田高校を卒業、神奈川県横浜市旭区の正和(せいわ)石綿工業株式会社(代表者、石掛範夫(遠い親戚にあたる))に入社しました。当時の従事者数は、役員、事務員、現場従業員含め、約15〜16名の会社でした。

正和工業石綿株式会社に勤務していた当時、私は主に下記に記載した仕事をしていました。

なお、私が加入している神奈川土建では、アスベスト(石綿)に詳しい専門家の先生方をお呼びして、「アスベスト曝露した場合どんな病気になるか、仕事との因果関係などについての勉強会を開いたり、国保組合が協定している医療機関で健康診断を案施した際、健康診断時に撮影した胸部レントゲンフィルムを再度、医師に読影してもらっています。私の場合は、個人的にかかりつけ医である近くの桜ケ丘中央病院で健康診断を最近受けていました。この間、病院に行って診察を受け医師から指摘されたのは、風邪をひいて風邪薬や喉の薬を貰ったことと血圧が少し高いと言われて血圧の薬をもらっていました。その後は平成7年4月に尿管結石で4日間ほど入院した程度で、その他は、毎年の健康診断では異常無しと言われていました。

1. 石掛茂征の家族構成

本人 石掛茂征 昭和16年10月23日生 57歳 事業主(自営)
妻 石掛M子 昭和16年2月11日生 58歳 石掛保温工業事務作業
長男 石掛Y 昭和42年1月11日生 32歳 独立し**市に居住
二男 石掛M 昭和45年5月5日生 29歳 石掛保温工業勤務同居
三男 石掛Y 昭和47年7月3日生 27歳 **市の消防署に勤務

2. 石掛保温工業の従業貫について

@ 石掛茂征 同上
A 石掛M子 同上
B 石掛M 同上 29歳 平成3年石掛保温工業入社 経験年数7年
C S村H 昭和30年3月11日生 44歳 昭和46年 〃 経験年数27年
D K上N 昭和27年12月16日生 46歳 昭和45年 〃 経験年数28年
E N野M 昭和7年9月22日生 66歳 昭和55年 〃 経験年数18年

3. 喫煙の有無について

過去も現在も喫煙していません。

4. 飲酒について

仕事から帰った後に、ビールの中瓶を1本飲んでから、1.5合ほどの日本酒をお燗して飲む程度です。

5. 正和石綿工業株式会社での作業について

大手建設会社(ゼネコン)の下請会社、第1次、第2次、第3次、第4次の下で、空調設備や保温・保冷・耐火などの工事を受注した会社(正和石綿工業株式会社)の人たちと一緒に、図面や施工図を見て、作業に必要な「建材の拾い出しや建材メーカーに材料の発注作業」をして、材料が入荷次第車輌に積み込んで現場に搬入し、現場で取り付ける作業を行なって来ました。

6. 各現場での作業内容

[1] 工場などプラント作業の場合(昭和36年〜現在も同様の作業が継続しています)

発注先と大手建設会社(ゼネコン)第1次、第2次の下請として、各種機械設備やプラント設備などの工事を受注した会社(正和石綿工業株式会社及び石掛保温工業所)が設計図、施工図を確認しながら、作業に必要な各種熱絶縁の材料を施工順序に従い、拾い出しや建材メーカーに材料の発注をして入荷順にトラックに積み込んで現場に搬入し、現場で取り付ける作業を行なって来ました。

(1) 現場で使用していた主な使用材

@ 石綿系…クリソタイル石綿繊維等…80%〜100%の使用度
A 石綿布…トムレックス吹き付け耐火被覆工事及び防熱布団制作取り付け
B 石綿パッキング C 石綿リボン
D 石綿板 E 石綿紙
F 石綿系各種 G シリカライトカバー及びボード
H 防熱布団各種…アモサイト・クリソタイル

7. アスベスト建材の取り付け作業について

@ 作業場までの持ち運び
アスベスト建材の材料のほとんどは、運送屋さんが現場事務所や材料置場に搬入された断熱材(ダンボール箱に梱包されている(重さ約40キロ、大きさタテ1メートル、ヨコ50センチ)をトラックなどに一人か二人で積み込んで作業している現場に運びます。

A ダンボール箱の梱包を解く作業
断熱材を取り出すため、ダンボール箱の梱包を手で開いて材料を取り出します。この時、断熱材は包装されていませんから、この時も断熱材のアスベストが飛び散ります。なお、ダンボール箱を畳む時、断熱材の埃がたくさん出ますからこの時も吸っていたことになります。

B ダンボール箱から取り出した、断熱材を配管に取り付ける箇所まで、素手で持ち運びしていました。

C 断熱材の取り付け箇所の高さは、ほとんどの現場が地面や床から2メートル以上の高さまで持ち上げることになり、アスベストが飛散します。

D 断熱材の取り付けは、配管されている箇所への取り付けとなるため、配管のエルボ(曲り管)と溶接部分や継手部分を寸法に合わせ、大きなノコギリや小さなノコギリを使用して切断したり、削り取る作業を行ないます。この作業の時にアスベストが一番多く飛び散る作業となり、咳き込んだり、息苦しくなります。

E 断熱材の切断や削り取る箇所は、長さ1メートルあたり1箇所から、2箇所を寸法に合わせて切断し削り取る作業を行なってから、断熱材を取り付ける作業になります。

F 作業は、最低5名〜6名、多い時は、15名〜20名の作業員が同じ作業を行っており、アスベストの飛散する量は、ものすごく多くなり、屋内作業の場合は、チリ状になって作業場全体に広がっていました。

[2] 火力発電所や清掃工場などでの作業について(昭和36年〜現在も同様の作業を継続中)

(1) 火力発電所での作業について(主に東京電力が発注先)
発注先と大手建設会社と第1次、第2次の下請として、各種機械設備、発電設備、冷却設備等の工事を受注した会社(正和石綿工業株式会社及び石掛保温工業所)が設計図、施工図を確認しながら、作業に必要な各種熱絶縁の材料を施工順序に従い、拾い出しや建材メーカーに材料の発注を行う作業をして入荷順に車輌に積み込んで現場に搬入し、現場で順次取り付ける作業を行なって来ました。

1. 主な使用材

@ 石綿系…防熱布団各種(アモサイト・クリソタイル)
A 岩綿系… B アモサイト系
C クリソタイル系 D 高熱コンパウンド(粉状のものを水で混合して塗る工事)
E 耐熱コンパウンド

[3] 清掃工場「ゴミ焼却場」での作業について(昭和36年〜現在も同様の作業を継続中)

発注先(主に市役所など自治体)と大手鉄鋼メーカー(主に日本鋼管梶jの第1次、第2次の下請として、焼却炉の本体及び付属設備(ダクト・配管・タービン・発電機)の工事を受注した会社(石掛保温工業所)が設計図、施工図を確認しながら、作業に必要な各種熱絶縁の材料を施工順序に従い、拾い出しや断熱材メーカーに材料の発注を行う作業をして入荷順に車輌に積み込んで現場に搬入し、現場で順次取り付ける作業を行なって来ました。

1. 主な使用材

@ 石綿系…防熱布団各種(アモサイト・クリソタイル)
A 岩綿系… B アモサイト系
C クリソタイル系 D 高熱コンパウンド(粉状のものを水で混合して塗る工事)
E 耐熱コンパウンド

[4] 造船所での作業ついて(昭和45年〜現在も同様の作業を継続中)

発注先は(主に日本鋼管梶jの第1次、第2次の下請として「タンカー、自動車運搬船、旅客船」の船内の機械回り及び内壁、天井壁(居住区)の防音工事・防熱を受注した会社(石掛保温工業所)が設計図、施工図を確認しながら、作業に必要な各種熱絶縁の材料を施工順序に従い、拾い出しや建材メーカーに材料の発注を行う作業をして入荷順に車柄に積み込んで現場に搬入し、造船所のクレーンで船内に搬入し現場で順次取り付ける作業を行なって来ました。

1. 主な使用材

@ 石綿板 A 石綿紙(ダクト関係仕上げ用)
B 石綿布 C 石綿糸
D 石綿糸防熱布団及ぴ火傷防止用 E 石綿系
F 防熱布団=アモサイト・クリソタイル
G ハードセッチィングセメント

8. これまでの現場での仕事

現場によって違いますが、新築現場などでは長い時は5か月〜6か月間同じ現場で働いていました。また、空調設備(ダクト及び配管)などが錆びたり、腐食するなど劣化しますので、現場によっては3年〜4年に一度改修工事をありますので、この場合は短期間の作業で終わる場合もあります。改修工事の場合は、以前取り付けた「アスベストが含まれている、断熱材を取り外し、新しい断熱材を取り付ける作業となり、今になって思えばアスベストが含んだ古い断熱材と新しい断熱材の両方のアスベストを吸っていたことになります。

9. 保護具について

アスベスト曝露による「人体への危険性の認識」はありませんでしたので、正和石綿工業株式会社に入社した頃は、保護具は使用していませんでした。昭和50年頃になって、アスベス曝露による「人体への危険性」が報道されたりした頃から、防じんマスクを着用したり作業者も現場の事務所で着替えて、自宅には作業着を持ち込まないように注意するようにしています。

10. 勤務時間について

午前6時頃に自宅を出て、8時頃から現場で作業がはじめられるようにしています。5時には終ります。

11. 健康診断について

大和市が実施している「老人保健法による成人病検診」を桜ケ丘病院で最近は、毎年受けています。

12. 石掛保温工業所での従業員の件

@ 同職種労働者の人数は石掛茂征を含め男性が4名です。
A 石綿肺などの異常所見の有無は、現在のところありません。

13. 家族の健康状態について

@ 本人と同居の家族について
本人以外に、特段の病気がある家族はいません。

A 直系家族の生死の状態について
石掛茂征は、父親と母親の間では一人っ子で、父親は、昭和19年8月に戦死しています。
その後、母親は、再婚し、現在の父との間に、3名の子供がいます。なお、母親は、82歳で健在です。

14. 自覚症状、現症の発現について

@ 1998年12月中旬に腹が大きくなったような気がすると妻と話したが、中年太りかと言って気にしなかった。
A 1999年1月28日頃、風邪気味で、桜ケ丘病院に行き診察を受けたが、医師は風邪と診断し薬を貰った。
B 1999年2月5日に、腰が痛いと訴え、ものを食べるとお腹が張ると訴えていました。
C 1999年2月7日の深夜、1時30分頃、トイレに行って、お腹が重苦しい、お腹が痛いと訴えた。
そのため、深夜の2時頃に、桜ケ丘病院に行き診察を受けた際、医師から「腹水が溜まっている」と言われて詳しく検査をしないとわからないと言われました。
D 1999年2月9日に、桜ケ丘病院に行き診察を受けた際、人院して検査を受けるよう言われ、入院しました。
その後、3月15日までの期間、桜ケ丘病院に入院していました。

15. アスベストによる現場では

屋内作業で、建材を大量に使用した日は「ノコギリで切断したり、削り取る作業の多い日」は、クシャミが多くなり、鼻をかんだ時グレー色の鼻が出ます。また、喉がいがらっぽくなり、痰がたまって出てくる時が多くなりました。咳も苦しい時もありました。

16. アスベストの「危険性」について

私が神奈川県横浜市の正和石綿工業株式会社に入社した頃は60年安保問題で騒然としていた時代であり、また、社会党の浅沼委員長が日比谷公園で殺された時代でした。一方、私たち建設職人の組合では全建総連が誕生した年で石屋さんたちのじん肺問題が発生し、よろけ病と言われたじん肺職業病の法律を作る運動が行われた時代でした。

このように、60年安保問題で世相は騒然とした時代であり、労働安全についても、建設労働者の中で石工の仲間が国に対して運動を進めていた時代のため、「私が従事した、多くの現場でアスベスが含まれた建材の使用について、会社の人や現場の誰からも、危険で人体に有害な物質と指摘されたり、注意もされていませんでしたから、私の健康を害する断熱材との認識も知識もありませんでした。アスベスを吸ったことにより、人体に悪い影響があることを知ったのは、昭和55年頃にメーカーから危険性を知らされるまで知りませんでした。

17. 業務上の疾病として、早期に労災認定を

私は、昭和35年4月から、平成10年12月末までの約38年間にわたり、数多くの現場で「アスベストが含まれた断熱材を使用」して、工場の保温工事や保冷工事、解体作業の中でアスベスト曝露による人体への危険性などの知識もなく安全対策もほとんど講じられていない現場で働いたことにより、私の病気が発病したことは明らかと思います。私の容体もはかばかしくないようですが、精神的にも肉体的にも発病前と同じように元気に働けるように頑張りたいと思います。そのためにも一日も早く労災認定をして下さるようよろしくお願いします。

平成11年6月19日


故石掛茂征殿の剖検所見に付いて
特に業務起因性に関わる所見を中心として。

(財)労働科学研究所・海老原勇

悪性腹膜中皮腫にて死亡された石掛茂征殿について、家族等の依頼を受けて剖検を実施しました。
剖検時の肉眼所見について、特に業務との関わりを中心に報告致します。

1. 腹腔内の所見

腹腔内には軽度に血性を帯びた腹水が約1500ccほど貯留しており、大網、小網および胃、小腸、大腸を覆う腹膜さらに腹壁面の腹膜に至るまで腹腔内の腹膜は、栂指頭大から小指頭大の腫瘤が極めて高密度に分布し、正常の腹膜構造を認めることは出来ない。
しかし、胃から小腸、大腸、直腸に至るまで、消化管内腔を慎重に検討するも、原発性の腫瘍は認めることは出来なかった。また、膵臓、胆嚢にも原発巣は認められなかった。肝右葉の被膜面に径30mmないし85mm の腫瘤が3個ほど認められるが、これは腹膜からの転移性腫瘍と考えられる。
後腹膜臓器である腎臓、副腎、尿管等にも原発巣は認められなかった。
以上の所見および腹膜全体に認められる腫瘍の性状などから、悪性腹膜中皮腫として問題ないと考えられた。

2. 肺の所見

左右の肺ともに、肺の線維化は認められず、臓側胸膜にも特記すべき所見は認められなかった。

3. 壁側胸膜の所見

左右の背部、第7胸椎の高さに径20×25×15mm大の硝子化した胸膜の肥厚斑が2ないし3個認められ、両側の横隔膜のテント部には径100mmに及ぶ大型の典型的な胸膜肥厚斑が認められた。

まとめ

故石掛茂征殿の死亡は悪性腹膜中皮腫であり、横隔膜を中心として、石綿曝露と関連する典型的な胸膜肥厚斑を認めることから、石綿曝露に関連する疾患であることは明確であると判断された。

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粉じん・石綿対策から職場改善まで
労働組合との共同の取り組み

外山尚紀
東京労働安全衛生センター

必ずしも石綿だけに関連するものではないんですけれども、包括的な安全衛生のアプローチということで若干お話をしたいと思います。全建総連東京都連さんとの共同の企画ということで、アスベスト・粉じんに曝露している建築労働者の安全と健康を守ろうという取り組みです。

まず第一に、「粉じん・アスベスト対策」ということで、健康診断時の胸部レントゲンフィルムの再読影です。健保組合の方で健康診断を毎年やっているんですけれども、その時にレントゲンの撮影をしてを読影するということは今までもやっていました。しかし、じん肺に関しての読影をしているわけではなく、それは結核だとか肺がんの読影をしているということで、従来の小さい間接フィルムではじん肺の影は見えないので、大きな直接撮影に変えて、なおかつそれをこちらの提携している医療機関であるひらの亀戸ひまわり診療所の方で再読影をする、ということをやってきました。1994年から始めて、今年は6,000枚くらいになるのではないかと思っています。

通常じん肺というのは、所見ありとされる管理2だとレントゲンの像は1/0以上なんですけれども、それよりも厳しく見て、0/1以上の人、あるいは胸膜に病変がある方を有所見者ということで数えました。なおかつ、粒状影、不整形いずれかが0/1以上の方々に、ひまわり診療所に再受診して下さいということを呼びかけました。

昨年の、建設に従事していた男性の方で、全体の有所見率―何らかのじん肺の所見のある方、胸膜の所見のある方が15.5%なのですけれども、これを見ていただくと年齢によってきれいに有所見率が上がっています。有所見者が、20代ですと2%ト以下ですけ



粉じん・石綿対策から職場改善まで
労働組合との共同の取り組み

外山尚紀
東京労働安全衛生センター

必ずしも石綿だけに関連するものではないんですけれども、包括的な安全衛生のアプローチということで若干お話をしたいと思います。全建総連東京都連さんとの共同の企画ということで、アスベスト・粉じんに曝露している建築労働者の安全と健康を守ろうという取り組みです。

まず第一に、「粉じん・アスベスト対策」ということで、健康診断時の胸部レントゲンフィルムの再読影です。健保組合の方で健康診断を毎年やっているんですけれども、その時にレントゲンの撮影をしてを読影するということは今までもやっていました。しかし、じん肺に関しての読影をしているわけではなく、それは結核だとか肺がんの読影をしているということで、従来の小さい間接フィルムではじん肺の影は見えないので、大きな直接撮影に変えて、なおかつそれをこちらの提携している医療機関であるひらの亀戸ひまわり診療所の方で再読影をする、ということをやってきました。1994年から始めて、今年は6,000枚くらいになるのではないかと思っています。

通常じん肺というのは、所見ありとされる管理2だとレントゲンの像は1/0以上なんですけれども、それよりも厳しく見て、0/1以上の人、あるいは胸膜に病変がある方を有所見者ということで数えました。なおかつ、粒状影、不整形いずれかが0/1以上の方々に、ひまわり診療所に再受診して下さいということを呼びかけました。

昨年の、建設に従事していた男性の方で、全体の有所見率―何らかのじん肺の所見のある方、胸膜の所見のある方が15.5%なのですけれども、これを見ていただくと年齢によってきれいに有所見率が上がっています。有所見者が、20代ですと2%ト以下ですけれど、30代、40代でどんどん増えていって、60代では30%弱の方が何らかの所見があるということです。

アスベストに関係があるのは不整形陰影ですが、不整形の有所見者の方もやはりどんどん年齢によって増えていって、60代以上では20%以上の方が―5人に1人の方が何らかのかたちでアスベストの影響を受けているということになるだろうと思います。

何らかの所見がある方は、60歳以上で30.1%になっています。かなりの有所見率です。建築で、20年、 30年働いてきた方にとって、じん肺だとか胸膜の病気というのは高血圧以上に一番深刻な病気なんだということが、これでわかっていただけると思います。

それから、職種ごとの調査も一緒にやっておりまして、職種をコンピュータに入力して分析していきます。 2年続けてやっているんですが、なかなかどの職種が危ないというのが特定できなくて。まだ今までのやり方では整理しきれなくて―たとえば大工さんでも木造の一軒家を建てる方もいらっしゃいますし、マンションに入って中で作業する方もいますから、粉じんやアスベストに曝露される状況が、同じ大工さんでも違ってくるんだろうと思います。今年からはもう少しこれを明らかにしたいということで、具体的な作業、たとえば電動工具をどれぐらい使いますかとかアスベストの近くで作業したことがありますかとか、というような質問も入れて、今年からはもう少し詳細なデータを出していきたいと思っています。

次は、レセプトチェックです。こちらの方は、ひまわり診療所の医師が健保組合に請求のあったレセプトを労災の可能性があるもの―肺がんですとか、肺繊維症とかの病名のついている方を、チェックをして見つけだしていくということです。その成果として、肺がんの労災認定が1件、じん肺の管理区分申請が数件ということでありました。

3番目は、粉じんの濃度測定ということを、今年初めてやりました。建設現場での粉じんの濃度測定ということは実際にはほとんどやられていなくて、たぶん数件ぐらいしかまだ報告がないと思うんですけど、それでは実態がわからないということで独自に粉じんの濃度測定をやりました。

ひとつは、石膏ボードを切ってもらって、まわりで粉じんの濃度を測るということをやりました。この粉じん濃度測定の目的は、対策をするかしないか、というところを見たいというわけで、電動ノコギリでボードを切るんですけど、対策をしてあって―ホースで強制的に掃除機で吸い込むんですね。これは対策「あり」です。「なし」の方は、ただ袋の集じん装置が付いているだけのものです。こういうかたちで比較をしてみたところ、当たり前といえば当たり前なんですけれども、かなりの差が出てくるんです。最も緩い管理濃度が2.9mg/m 3で、対策を何もしていないと簡単に超えてしまって、10を超えてしまうくらいのすごく高い濃度まで上がります。きちんと集じん装置で吸っていれば、管理濃度を超えることもなく、そんなに高い濃度にもならずに作業ができるということですね(前頁図、粉じん濃度が低くなっている下の方が「対策あり」)。

それから、こちらはコンクリートを切断したんですが、作業をしたのは最初の2分間だけなんですけれども、これで一気に30以上にまで上がってしまいます。それでだんだん下がってくるのですが。ここで言いたいことは、こちらの青い方の線は粉じん作業をした後に、きれいに床を掃除しているんです。40分経過後に、5、 6人でで作業場を歩いたんです。すると掃除をしてある方は濃度が上がらない。掃除をしていない方は簡単に管理濃度を超えてしまうのですね(上図参照)。だから、掃除というのは粉じん対策の中でも非常に有効な手段だと言えるだろうと思います。

まだ、あまり多くの測定をしていないので危険な作業の特定はできないんですけれども、少なくとも天井裏などでの狭い場所での作業については、マスク等の安全対策が必要だろうと思います。

また、粉じん作業の周辺作業でも、同じように粉じん曝露してしまうということなんですね。そこで集じん装置というのは非常に有効だということ。それから、コンクリートだとか切るときには湿式の工具を使って下さいということ。また、掃除をまめにして下さい。それもブロアという吹き飛ばすタイプのものではものすごく粉じんが飛散してしまうんで、絶対使わないで下さいって言っていいと思います。危ないと思ったときにはマスクを使って下さい。というようなことを、組合員の皆さんには報告してあります。

大きな2番目が、「職場改善への支援」ということで、建築現場では粉じん作業が多くあって危険なんですけれども、ではどうしていこうかということです。ひとつには、東京都連傘下の支部ですとか組合で安全衛生大会というのが、年に1回あるのですが、そこでもこのような話をするということで行っています。去年くらいまでは医師が行って、じん肺だとかアスベスト肺の怖さ、みたいな話しをして―ちょっと脅かして、マスクをつけましょうとかの話しをしていたんですが、そういわれても建築現場でマスクつけるっていうのは、非常に苦しいんですね。ですからそれだけではなくて、いろいろなこともやっていかないといけないだろうということで、今年からはじん肺とアスベスト肺の話をして、なおかつ今みたいな建設現場での粉じんの濃度測定をした話をして、それから工具メーカーの方に来ていただいて、先ほどお見せした集じん装置のデモンストレーションをやりました。その時に、集じん装置あり・なしで、近くにデジタル式の粉じん計を置いておけば、やはりすごい差が出るんです。それを見ていただいたりとか、あとは、マスクメーカーの方に来ていただいて、マスクの付け方だとか注意事項について説明していただく、というようなことを今年から始めています。

レジュメでは「参加型?」にクエスチョンマークがありますが、この資料を用意した段階ではまだ行っていなかったんですが、昨日、全建総連の東京都連・建設ユニオン多摩東支部というところで初めてこういう新しい取り組みをやってきました。建設ユニオンの職場改善ということで、具体的に現場の人たちが中心になって自分たちで考えて決定をして、改善をしていこうというような取り組みを始めていこうということでやってきました。

参加型というと、皆さん、あまり聞いたことがないと思うんですが。まず、安全健康快適を向上させます。それから具体的で、安価な改善をめざします、ということで、机上の空論じゃない、実現可能な改善。なおかつお金をあんまりかけずにできる改善をしていこうということです。それから、すでに実行されている改善から学びます。これは、どんな工場でも現場でも少しは改善点があって、ただ、みんなそれにあまり気づいていないだけで、外の会社だとか現場の人が見れば感心する改善点が結構あるんですね。そのようなすでに実行されているものから、応用していくわけです。それから、これが一番大事なんですけど、改善の決定・実行・評価に現場の労使が参加していきます。そして、小グループ活動を行います。これはグループ討論というやつで、10人以下くらいで顔が見える、自由に意見が言えるような小集団で、その中で討論して改善を決めていく、というようなことをします。

昨日はこういった話をしました。建設現場での改善ということでは、たとえば、こういうヒント―適切な高さの作業台を使いますということで、これは自分たちで造った作業台で、ベニヤ板を2枚切れ目を入れて組んだような作業台です(下右図)。次(省略)はどこにでも持っていけて、かつ金額が安い。マスクの話がありましたが、マスクをつけろといっても、ないとつけられないわけですから、工務店の壁とかにいつでも働く人が持っていけるように常備しようという改善です。それから電動ノコギリの歯を材料の厚さに合わせることで、粉じんの発生が全然違うということで、できたら材料の厚さぴったりにしてもらうと粉じんの濃度が下げられるということです(下左図)。また作業場の清掃を行います、とかいったいろいろ例をたくさん見せて、参加者の方にイメージを膨らませてもらってから、グループ討論に入って自分たちの改善を話し合ってもらいました。

それで、グループ討論の課題では、これまで行った改善の中でよい改善、それからこれからやってみたい改善、これを各グループ3つづつ討論して決めて、というようなことをやりました。昨日のグループ討論ではあまり具体的な話は出なかったんですけれども、おもしろかったのは5つの班に分かれたんですけど、すべての班でマスクを使いますとか、車にマスクを積みますとかいう意見が出て、それはここ2、3年私たちが一生懸命粉じんのことをやってきた成果かな、というふうに思っています。

アスベストとあまり関係のない話になってしまいましたけれども、建築現場でアスベスト使わざるを得ないという状況があって、それを何とか抑えて、できるだけ粉じん曝露しないように、安全・健康・快適に仕事ができるようなお手伝いを今続けているところです。ありがとうございました。



県立高校に大量の
アスベスト・フェルト材

藤本泰成
神奈川県高等学校教職員組合

神奈川県高等学校教職員組合で執行委員をやっております藤本と申します。

もうだいぶ前から横須賀におりました時から、横須賀の石綿じん肺訴訟を支援する会に参加させていただきまして、いまも横須賀のじん肺・アスベスト被災者救済基金の会計監査もやらせていただいているんですけれども、そういうじん肺の裁判にですね、ずっと支援する側として携わってきて、よもや私たちが勤めております県立高校でアスベストが大量に使われているということは考えもしませんでした。

それが一昨(1997)年、神奈川県にはいろいろな市民団体で作る「県民のいのちとくらしを守る共同行動委員会」というところがありますが、そこの保健医療分科会の指摘で県が調査した結果、一番最初に、設計図の中にいわゆる「フェルト材」―アスベスト・フェルト材が使われているところが、28校確認されました。ほとんどが県立の高校の体育館の屋根、ということになっています。それから、不明なところをサンプル調査しました結果、25棟。合計54棟の体育館、格技場にアスベストフェルト材が使用されている。これはニチアスという会社の「フェルトン」という材料だそうですけれども、石綿フェルト10ミリの被覆折板構造屋根というもので、85%以上が石綿です。サンプル調査の結果、全部クリソタイルということです。

私たちは高校生が体育を行う、運動を行う格技場または体育館でそういうものが使われているということを、非常に大きな問題と考えまして、県と交渉をやり、まず最初にきちんと調査をやってくれということを要請しました。これは、「県民のいのちとくらしを守る共同行動委員会」でもいつもお世話になっております神奈川労災職業病センターも一緒に要請していただいて調査をするということになりましたが、まず目視調査を行うということで、AからDの4段階にわけるということで調査を行ったんですけれども、良好だと―何が良好なのかわりませんけれども、そこにアスベストがあるのに良好なのか、という思いもあるんですが―良好だと言われたのが、23棟ですね。多少汚れがあるというふうに書かれているのが8棟。そして部分的にはがれているところが21棟。ぼそぼそはがれて、ひどい状態になっているところが―これは荏田高校というところですけれども1棟ありました。それでCとDと書かれたところの飛散調査を早急にやるということで、県は1998 年の夏に行いました。

その結果、これもまた私たちとしては解せないというか、問題のある数字のように思うんですけれども、だいたい室内で0.05f/lから全く出ないといような状態。室外でも一番大きいところで0.25、少ないところでは0.05、リットルあたりのアスベスト繊維の本数がそのような結果となりました。これについては、だいたい工業地帯、労災職業病センターの「労災職業病」の去年の11月号に工業地帯で1.16、幹線道路沿線では2.04、これは県の環境科学センターというところが測定しているんですけれども、内陸山間部で0.36。内陸山間部―山の中でも0.36なのにもかかわらず、状況としては0.05という数値しか出てこない。

県はこれについては、飛散がないというふうにみざるを得ない、ということで、今後、目視調査はやるけれど、アスベスト対策はとらないというようなことを、いま言っています。

先ほど言いました、Dとされたぼそぼそ落ちてくる―アスベスト・フェルト材というのは珪酸ソーダで固めてあるということなんで、だんだん珪酸の劣化によって、どうもぼそぼそ落ちてくるようになるらしいですね。そういう状況がわれわれの中では若干見受けられる。荏田高校においては、私たちはアスベスト対策をやれと迫ったわけですけど、県はアスベスト対策ではありませんと、天井にあるフェルト材は、防湿・防音材なんだと、これが取れてきたことによって防音防湿という初期の目的を果たせなかったということで、修理をするんだということで、そのアスベスト・フェルト材の下に新たに屋根を作ることによって被覆してしまう、というような工事を行っています。

今後も同じような対応をとるのか、ということに対しては、飛散状況がない限り、今後も目視調査を続けながら、D基準のものについては修理というかたちでやっていくんだということで、いま県はわれわれに回答を寄せているわけですけど、わたしたちは何点か問題があると思います。

ひとつは、調査結果が正しいかどうか。先ほど言いました工業地域で1リッターあたり1.16、幹線道路では2.04という数字は冬場の調査なんですね。乾燥した季候の中での調査なんですね。県立高校での調査は夏に行われた調査です。ということで、調査の季節的な問題がないのかどうか。それから分析を行った民間機関が果たして信頼が置けるかどうか。これを含めて、調査に問題がないかずっと言っているんですけれども、県はきちんとした分析であると―県の環境科学技術センターの職員がきちんとした調査であると言っているんだと、いうようなことで、冬場の調査はできないのか、また一点の調査ではなくていろいろなところで調査できないのか、また掃除してきれいな状況とか、生徒が全然動かない状況で調査するのではなくて、通常の状態で調査できないのかといろいろ言っているんですが、今のところ県はなかなか調査に動かないというような状況です。

それからもうひとつ、荏田高校で行った工事なんですけれど、これはぼそぼそと落ちてくる石綿をぜんぶはがして、きれいにして新しい屋根をはったのではなくて、そのままぼそぼそ落ちてくる状態で屋根をはってしまったということなんですね。生徒は、格技場の屋根でもバレーボールやって当てて壊したりですね、なかには掃除のモップでつついたりする生徒もいるわけですよ。だから、穴が開いたときにそういう石綿が落ちてこないのかどうかということも含めて、この工事は問題だろうと思っています。県は飛散調査の結果に基づいて、アスベスト対策ではないということを言いきっているわけで、私たちがきちっとしたアスベスト対策を講じるように、ねばり強く要求を続けていかなければいけないのではないかと考えています。

3つめとして、吹き付けアスベストが非常に大きな問題になったときに、どの県でも吹き付けアスベストについては、全部撤去というかたちで工事を行ってきたと、アスベストはあれば撤去するんだというのが基本方針ではなかったのだろうかと。そういう中で、吹き付けアスベストとは違うんだというようなそういう論理ですね。フェルト材と吹き付けアスベストは違うのだから、撤去という方針はとらないということですね。これだけアスベストが社会問題となり、すべてのアスベストを根絶するという―ヨーロッパではほとんど使われていないという、そういう中で、アスベスト対策の後退というような状況ではないか、と考えています。

何回かの交渉の中で見え隠れするのは、神奈川県の財政問題なんですね。私は一昨日と昨日と徹夜して、ちょっと寝させてもらってここに来たんですけれども、私が何で徹夜したかというと、いわゆる終期年末闘争ということで、給料あげろという闘争をずっとやってきたんですが、財政状況が非常に悪化してきている中で、今期給与も削減されるというような状況です。初めてマイナスというようなことになってしまったんですけれども。神奈川県だけではなくて、東京や千葉・埼玉といろいろなところが財政問題を抱えていましてですね、そういう中でアスベスト対策が後退していくということですね。これは決して許されないだろうと思っています。

今後も粘り強く、生徒の健康を守るという、私たちが一番重点にしている生徒の教育条件、すばらしい条件の下で教育を行わなければならないという視点に立って、継続してがんばっていこうと思っています。よろしくお願いします。





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