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省庁交渉 省庁交渉の記録
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2002年度

 ⇒文部科学省の回答と質疑はこちら(PDFファイル)

文部科学省
2003年7月23日(水)

アスベストの全面禁止の実現及び抜本的な既存アスベスト・健康影響対策の確立に向けた要請



文部科学省要請事項

旧文部省においては、学校の吹き付けアスベストの問題が社会問題化した1987〜1989年当時に、以下のような通知等を発して、対策や注意喚起を促しました。

1987.5.11 文部省教育助成局施設助成課技術係長「公立学校建築仕上調査について」
1987.9.24 文部省初等中等教育局幼稚園課振興係「私立幼稚園園舎仕上調査について」
1987.11.11 文部大臣官房文教施設部指導課長(国施指第4号)「アスベスト(石綿)による大気汚染の未然防止等について」
1988.7.9 文部省大臣官房文教施設部指導課長「吹付けアスベスト(石綿)粉じん飛散防止処理技術等に関する参考資料の送付について」
1989.5.31 文部大臣裁定(文高助第63号)「私立学校施設整備費補助金(私立高等学校等緊急建物環境整備費)交付要綱」(1989〜1992年度の時限措置)

これらによって、幼稚園、小中高等学校、大学等の教育関連施設のアスベスト使用状況についての確認が行なわれたものと承知しています。しかし、当時の調査は、調査の指示自体が、@昭和51年度以前に建設された建物、A天井の仕上げのうち吹き付け石綿が使用されているもの、に限定されていました(1987.5.11事務連絡)。

吹き付け石綿の商標の例としては、トムレックス、ブロベスト、コーベックスの2商品のみがあげられ、「次の製品は吹き付け石綿でないので注意すること」として15商品が示されました。しかし、広く参考書として利用されている(財)日本建築センター『既存建築物の吹付けアスベスト粉じん飛散防止処理技術指針・同解説』(1988)では、吹き付けアスベストの商品名は8つあげられ、上述の「吹き付け石綿でない」としてあげられた15商品のうち、オパベストは吹き付けアスベストの商品名として、他の10商品は「アスベストを含有する吹き付けロックウールの商品名」としてあげられているのです。しかも、同書の商品名リストが不完全なものであるという石綿対策全国連絡会議の指摘を受けて、1992年の改訂版から、「例示」であることを明記したうえ、吹き付けアスベスト1商品、アスベスト含有ロックウール4商品の名称が追加されて、以降の環境省や東京都のマニュアル等で踏襲されるようになりました。アスベストを含有する吹き付けひる石(バーミキュライト)、パーライト吹き付け、発泡けい酸ソーダ吹き付け石綿等もあること、吹き付け石綿が使用されなくなったとされる昭和51年以降も昭和55年以前の施工では吹き付けロックウールにアスベストが含有されている場合があること、も明記されるようになっています。
また、当時の調査指示では、吹き付け石綿工法では「石膏ボード等による天井は張っていない」とわざわざことわり書きしてありますが、現実には天井が張られている事例は多々あり、天井裏の確認が不可欠です。別添の「『アスベスト除去に関する緊急アンケート』調査及び聞き取り調査結果」にあるように、そのような場合、天井裏の吹き付け石綿除去の前の天井に取り付けられた照明器具等や天井板等の撤去時のアスベスト飛散防止対策が問題となります。

当時の実態調査は、吹き付けアスベストに限った使用実態調査としても、不十分なものであったと指摘せざるを得ません。
さらに、例えば1998年に川崎市の保育園で鉄製のひさし屋根に張られたアスベスト・フェルト材が問題となり、同市では、1987年当時の実態調査は吹き付けしか対象としていなかったことから、あらためて市の関連施設のアスベスト使用実態調査を実施したうえで、「川崎市アスベスト(石綿)対策推進方針」を策定し直しました。その後、横浜市、神奈川県でも同様の実態調査の見直しが行なわれるなど、吹き付け以外のアスベスト含有建材の実態調査・対策を見直す動きも見られますが、全国的にひろがっているとは言えない状況です。

行政が建築工事を発注する場合の手引きとして用いられている国土交通省の「建築改修工事共通仕様書」の平成14年版では、「9章 環境配慮(グリーン工事)」という章を新たに立てて、法規制の不十分なアスベスト成形板等の「非飛散性アスベスト含有建材」の処理工事においても、吹き付けアスベスト除去工事と同様の対策をとるべきことが明示されました。
アスベストに対する法規制自体も1987年当時と比べると様変わりしているといえ、なかでも1992年の廃棄物処理及び清掃に関する法律の改正、1995年の労働安全衛生法令の改正、1996年の大気汚染防止法令の改正などは、教育施設のアスベスト管理にも大いに関連するものであったと考えられます。

一方で、教育関連施設からアスベストがなくなったわけではないうえに、アスベストの存在の確認不十分、対策(対処方針)の未確立・未周知、アスベストの存在や対策(対処方針)の関係者への未周知、さらには、関係法令や自治体条例等に違反した不法工事がまかり通るといった事態さえ、決して稀とは言えない状況が続いています。その一端は、2000年に東京都文京区さしがや保育園で起きたアスベスト飛散事件にあらわれていますし、この事件に関連して昨年、NHKが東京都23区に調査を行なった結果、自治体でのアスベスト対策にきわめてバラツキが見られると報じられました。

残念ながら、法令等を遵守すべきことを一般的に確認するだけでは、児童・生徒等関係者の発がん物質・アスベストの曝露を予防するうえで不十分と言わざるを得ないと考えています。とくに幼年・若年時にアスベストの存在する環境で過ごすことや、違法工事等による曝露を受けることによる、児童・生徒等の健康に与える長期的リスクは、それ自体一層の解明を必要とする課題であるとともに、成人の場合以上にリスクを高める可能性があることから、予防対策の確保を厳重のうえにも厳重に確保すべきです。

厚生労働省がアスベストの使用等の原則全面禁止を実行しようとしている今こそ、全国の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学等の教育関連施設におけるアスベスト対策をもう一度見直す絶好の機会なのではないかと考え、以下のとおり要請する次第です。

@ 1987年当時の吹き付けアスベストに係る実態調査で確認された吹き付けアスベストのその後の処理状況のフォローアップ、及び1990年以降の旧文部省・文部科学省の教育関連施設のアスベスト対策に係る施策について示(資料・文書は提供)していただきたい。

A 吹き付けアスベスト以外のアスベスト含有建材を含めた、教育関連施設におけるアスベストの使用実態調査をあらためて実施されたい。

B 法令の改正等も踏まえた、現時点における、教育関連施設におけるアスベストの対処方針の原則、及び、改修・解体・除去等工事、廃棄物処理に係る対策を示していただきたい。

C アスベスト飛散の可能性のある改修・解体・除去等工事は、夏休み等の児童・生徒その他の者が施設に立ち入らない状況のもとで行なうという原則を確立するとともに、施設の再利用(児童・生徒その他の者の再入場)を許可する基準を策定していただきたい。

D 教育関連施設に存在するアスベストに関する情報を、児童・生徒及び父兄、教職員等に公表し、対策(対処方針)の策定及びフォローアップに参加させることを含めた、適切かつ十分なリスクコミュニケーションをはかる方針を確立していただきたい。



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