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省庁交渉 省庁交渉の記録


2002年度

 ⇒厚生労働省の質問と質疑はこちら(PDFファイル)

厚生労働省

2003 年10 月24 日(金)13:00 〜15:00

                                     2003 年9 月19 日

厚生労働大臣 坂口 力 殿
                    石綿対策全国連絡会議
                    代表委員加藤忠由(全建総連委員長)
                    竹花恭二(自治労副委員長)
                    富山洋子(日本消費者連盟運営委員長)
                    広瀬弘忠(東京女子大学教授)

                    〒136- 0071 東京都江東区亀戸7- 10- 1 Z ビル5 階
                    PHONE (03 )3636- 3882 FAX (03 )3636- 3881
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                    Email : banjan@nifty.com



アスベストの全面禁止の早期実現及び総合的・抜本的な
健康被害・既存アスベスト対策の確立に向けた要請


日頃の貴職のご活躍に敬意を表します。
昨年6 月28 日の貴職の閣議後記者会見における「原則使用禁止」の方針表明以降、「石綿及び同含
有製品の代替化等調査」、「石綿の代替化等検討委員会」による検討を経て、現在市場に流通してい
るすべてのアスベスト含有建材及びアスベストを含有する摩擦材・接着剤製品の使用等を禁止する労
働安全衛生法改正を行い、来年1 0 月1 日より施行するという決定をされたことを歓迎します。

しかし、パブリックコメント手続において私たちが提出した「労働安全衛生法の一部を改正する政令案
に対する意見」(16 項目にわたる提案)は、「製品によって禁止の実施時期に差を設けずに、遅くとも2005
年1 月1 日までに禁止を実施すること」という点を除き、明示的には採用されていません。文字通りのアス
ベストの全面禁止の早期実現に向けて、貴省が具体的な手順を示すことが求められています。

同時に、今こそ、将来の健康被害対策と既存アスベスト対策を二本柱とし、アスベストの新規使用等
禁止という新たな局面を踏まえた総合的・抜本的な対策を確立することが強く求められています。アスベ
スト禁止の導入は「最初の一歩」であるということを銘記すべきです。

これらの点と関連して、貴省が、「石綿による疾病の認定基準」を改正し、作業環境測定に係る「管理
濃度」をすべての種類のアスベストについて0.15f/cm 3 に引き下げる方向で作業を進められていること
も、歓迎しています。

しかし、その内容自体を吟味する必要があることもさることながら、必要とされる総合的・抜本的対策
は、上記の点だけにとどまるものではありません。上記作業はいずれも、労働者の健康確保という観点
からの労働基準局の所管事項ですが、現段階はまさに「流行」の始まりであり、今後増加が確実視され
ているアスベスト関連疾患対策は、国民の健康、医療、福祉といった観点も含めて、厚生労働省の全
省をあげて取り組まれるべき課題であると考えられます。(わが国における男性の悪性胸膜中皮腫死
亡だけで、今後40 年間に10 万人以上、過去10 年間の約50 倍にのぼる可能性があるという将来予測
の研究成果も発表されています)。

また、既存アスベスト対策についても、労働者の健康防護という観点からばかりではなく、市民の健
康や環境の防護の観点も含めて、すでに建築物等に使用されてしまっている既存アスベストの把握、
管理から改修、解体、除去、廃棄に至るまでの一貫した対策と取り組みが不可欠です。
さらに、国内で禁止されたアスベストの製造・使用等が開発途上国等に移転することを阻止し、地球
規模でのアスベストの全面禁止を促進することが、わが国の責務であると考えます。

これらの課題に対処していくためには、貴省の総力をあげた取り組みが必要であるばかりでなく、関
係省庁を含めた政府全体の取り組み、さらには私たちのようなNGO を含む民間を巻き込んだ広範な取
り組みが必要と思料されます。
すでに、国土交通省では、船舶へのアスベストの新規使用を禁止する船舶安全法関連の規則・規程

の改正が昨年先行して行なわれ、アスベスト含有建材が例示された建築基準法関連施行令・告示の見
直しを行なうことが予定されています。環境省においても、大気汚染防止法、廃棄物処理法の見直しも
含めた検討作業が進められています(私たちは規制対象が吹き付けアスベストのみに事実上限定され
ている両法の大幅な見直しを要求していますが、このことは労働安全衛生法の見直しにも連動する課
題です)。さらに政府自身が発注者となって行なう建築工事については、すでにだいぶ前からアスベス
ト含有建材は使用しないものとされてきましたし、現在、改修・解体工事についても、労働安全衛生法、
大気汚染防止法、廃棄物処理法等による現行の規制を上回るアスベスト対策が推進、検討されていま
す。貴省によるアスベスト使用禁止の動きが、こうした他省の取り組みを促進したものと歓迎しています
が、これらの取り組みがバラバラに整合性なく進められたのではその効果が減退することは明らかであ
り、首尾一貫した総合アスベスト対策という観点が貫かれる必要があります。

他方では、文部科学省のように、1987- 88 年に教育施設の吹き付けアスベストの除去が社会問題化
した「学校パニック」当時に行なった不十分な対策をもって、「アスベスト問題は終わった」かのように認
識したまま、当時アスベストの存在が見過ごされ、あるいは当時確認されていたにも関わらず適切なフォ
ローアップがなされていない事例等が今また各地の学校等で問題になっているにも関わらず、いまだ事
態を深刻に認識しないなど、言わば省庁間における認識の格差も問題となっています。

国際的には、例えば、有害廃棄物の国境を越える移動を規制するバーゼル条約は、アスベスト廃棄
物を規制対象としていますが、老朽船舶の廃棄物としての輸出入に関して、船舶に据え付けられたアス
ベスト含有断熱材等の取り扱いが議論の的になっています。この点で日本政府が、当該アスベストも
バーゼル条約の対象となるとする積極的、先進的な立場をとっていることは評価できます。

国際貿易における一定の有害化学物質等の「事前の情報に基づく同意(PIC )」手続を定めたロッテ
ルダム条約においても、アスベストを規制対象とすべく作業が進められているところです。

いまアスベスト禁止の導入が国際的な潮流になりつつある中で、地球規模でのアスベスト全面禁止
導入の必要性とともに、日本国内の課題と同様、健康被害・既存アスベスト対策を中心とした対策を促
進するための国際協力の必要性も叫ばれています。(もっとも直近では、さる9 月3- 6 日、ドイツ・ドレス
デンにおいて、欧州委員会やEU 上級労働監督官会議(SLIC )等が主催し、EU 加盟国と候補国、EU
以外の諸国(日本、タイ、ブラジル)、ILO (国際労働機関)等から160 名をこす政労使、科学者等が参
加した「欧州アスベスト会議2003 」の「宣言」(http://www.hvbg.de/d/asbest/d/declarat.pdf )が、同様の
問題意識を表明しているところです。)

このような状況認識のもとに、貴省が、貴省においてできることのすべてを省の全力をあげて行なう
とともに、リーダーシップを発揮されることを強く期待しつつ、以下の要請をさせていただく次第です。




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