〜静岡県の行政評価について考える〜

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静岡県の行財政改革の柱に、業務棚卸表の活用というものがある。

「業務棚卸表」とは、聞きなれない言葉だが、各部局の室にある係やスタッフごとに、行政目的とその目的を達成するための手段をあげ、それに見合う指標を選定し、達成度や目標値などを一覧表にまとめたものである。

この業務棚卸表を取り入れたことにより、静岡県は全国2番目に行政評価を全面導入し、行財政改革をすすめているという。

このことは本当だろうか。
県が業務棚卸表を導入したのは平成9年だが、導入後も、大型プロジェクト重視の政策は変わらず、県債残高は増加の一途をたどる一方で、地震対策などのために積み立てていた基金も大幅に減少していった。

業務棚卸表の導入によって成果重視の行政評価ができるようになり、効率のよい行政運営が可能になるという触れ込みだが、求められている効率性とは、あくまでも行政を執行し管理する側の効率性であって、県民の視点からの評価には直接は結びつかない。

このような行政評価の限界というものは、県民の目から見るとかなり深刻な気がする。

たとえば予算を担当している財政室の場合、行政目的は「健全財政の確立を図りつつ、県の施策実現のための予算の確保を図るため」となっているが、3つ目の指標である県債残高は、目標値を平成16年度2兆円程度上限と定めている。

平成12年度の県債残高は18,790億円だから、まだ余裕があるという考えだ。財政室はこれについて、仕事をしなければ借金も増えない、仕事をしているから借金が増えるのだ、自分たちは許される範囲内でできる限り仕事を進めたいという考えでこの目標値を選んでいると説明していた。

これが行政評価の中身になっているのだ。
現在の静岡県の行政評価は、行政単位ごとの自己評価をもとにしている業務棚卸表から一歩も出ることができないでいる。このような行政評価では、県政から抜け落ちている問題や視点を、評価段階で修復することは期待できない。

むしろ、行財政改革の名のもとにフラット化やトップダウン式の行政運営をすすめ、同時に、業務の執行状況を管理する行政評価を定着させることによって、知事の権限はより強化され、それにより、トップの政策決定の不適切さをより修復しにくい体制ができてしまうのではないか。

静岡県で全く対策が進まない審議会等の実態把握や会議の公開の問題は、業務棚卸表の中で取り上げられることはない。行政評価の内容に加えるためには、それを推進するという目的意識が必要だが、今はそれがないことが問題だからである。

全国2番目に行政評価を導入したというと、それで行財政改革が進んでいるかのような印象を与えるが、実態は違う。

行政評価は業務を執行させる側からみたマネージメントの観点から行われており、それは県民の視点とは大きなずれがあるのだ。

2001.7.22 (つづく)

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(参考)業務棚卸表の例

*総務部財務総室財政室 (予算)

    〈目的〉
     健全財政の確立を図りつつ、県の施策実現のための予算の確保を図るため
    〈業務概要〉
     予算の編成、執行管理、県議会・各部局との調整に関する事務
    〈管理指標〉  県債残高
      H9実績  14,961億円
      H10実績  16,959億円
      H11実績  18,225億円
      H12実績  18,790億円
    〈目標(年度)〉
     2兆円程度上限(H16) 
    〈困難度〉
     ☆☆(満足目標)


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