自作パソコンへの誘い


1.パソコンって自作できるの?

 皆さんの中には「えっ? パソコンって自作できるの?」と驚かれる方もいるかと思います。
 普通、パソコンと言えばNECや富士通などのメーカーから発売されている物を想像されると思います。実際、パソコンショップに行くと、店頭にはこれらのメーカー製パソコンが並んでいます。でも、よく見てください。中には「ショップオリジナルパソコン」というものがあるかと思います。実は、これはショップが自作したパソコンなのです。また、ショップによっては見慣れない部品(CPUやメモリ、裸のハードディスク、むき出しの基盤)を売っているところがあると思います。これは自作用の部品なのです。
 そうなのです。パソコンは自作出来るのです。そしてパソコンの自作というものは、とても魅力あるものなのです。
 ただしここでの自作できるパソコンとは、IBM PC/AT互換機(いわゆるDOS/Vパソコン。以下、AT互換機と略。)の事になります。NECのPC-9801やAppleのMacintoshでは、自作は出来ません。(厳密に言えば出来ないこともありませんが、非常に困難であると言えます。)
 では何故、AT互換機だけが自作できるのでしょうか。
 その理由は、最初に「IBM PC/AT」を発売したIBMが、その内部仕様を公開し、互換機メーカーの存在を認めたからなのです。もちろん、特許使用料のお金を払うことなく、自由に互換機を製造できるのです。これにより世界中の数多くのハードウェアメーカーが、AT互換機のビジネス市場に参入しました。そして、AT互換機製作用の部品を安価で供給したのです。このおかげでAT互換機は世界中に広まっていきました。(まぁ実は、PC-9801やMacintoshにも互換機はあったのですが...)

 AT互換機は、規格化された工業製品なのです。だから様々なメーカーが製造したり、個人が自由に自作出来るのです。本当は大手メーカーといえども、これらの部品を集めて組立を行っているに過ぎないのです。

 ちなみに。
 私は友人にどんなパソコンを使っているのか聞かれることがたまにあるのですが、私が「自作パソコンだ」と言うと次のような会話になります。
 友人「自作? 自作ってどういうこと?」
  私「自分で作ったっていうこと」
 友人「つくったぁぁぁ?」
と言われ、怪訝な顔をされます(^^;)。
 また、自宅に遊びに来た人に「これが私が作ったパソコンだ」と言うと、その人はCRTディスプレイを指差しながら、「これをあなたが作ったの?」とか言ったりします(^^;)。

2.自作のメリット

 では、自作のメリットをあげてみましょう。

(1)自分好みのパソコンに出来る
 「あのメーカーのパソコンは外観は格好いいけど、性能がイマイチ」とか「あのパソコンは性能が良くて値段も安いけど、外観がダサイ」と思うことがあると思います。メーカー製のパソコンを購入しようと思っても、外観や性能などを自由に決める事が出来ません。メーカーが用意したものをそのまま受け入れるしかないのです。
 しかし自作であれば、ケース、キーボード、マウス、CPU、メモリ、HDD、CDROMドライブ、ビデオカード、サウンドカードなど自分の好みのものにすることが出来ます。予算と相談しながら、自分の要求に合ったパソコンを手に入れることが出来ます。世界で1台だけ、あなただけのパソコンが出来るのです。

(2)アップグレードが容易である
 技術革新のサイクルが非常に速いのがパソコンです。最高性能の機種を購入しても3ヶ月すれば、旧機種になってしまいます。数年前のパソコンとなると、もう快適に使うことは出来なくなってしまいます。しかし、パソコンは数十万円もする非常に高価なものですから、簡単には新規購入出来ません。
 そこで性能向上のためにパソコンをアップグレードすることになるわけですが、メーカー製パソコンでは様々な制限があります。
 アップグレードの一般的な手段としては、CPUの交換、メモリやHDDの増設、ビデオカードの交換などがありますが、メーカー製パソコンの中にはこれらの交換や増設が出来ないものがあります。また、アップグレードしても期待の性能が得られないこともあります。しかし自作であれば、アップグレードの可能性は無限大となります。

(3)少予算でアップグレードが可能
 アップグレードが容易であると述べましたが、これは少予算でアップグレードすることが出来るという意味でもあります。
 遅くて使いものにならないのでパソコンを買い換えるという場合を考えてください。パソコンの動作が遅くなる主原因はCPUやビデオカードが古くなったためです(もちろん他にも原因があります)。まだ使える部品があるにもかかわらず、数十万円も出して新製品を買わねばならないのです。
 自作であれば、必要な部品だけを交換できるので、少予算で高性能なパソコンを手に入れることが出来ます。

(4)自分で修理が可能
 パソコンが故障してメーカーに修理を依頼した場合、保証期間が過ぎていると高価な技術料を取られてしまいます。
 自作したパソコンなら中身がどのような構造になっているか判りますから、自分で修理も可能です。部品代のみで修理することが出来ます。

(5)モノ作りの喜びを味わえる
 モノを作るのは楽しいことです。ましてや、世界で1台だけのパソコンが出来るとなれば非常に嬉しいものです。自分で作ったパソコンなら愛着も湧きます。
 趣味という観点で考えた場合、自作は大変魅力あるものです。

(6)環境に優しい
 現在、廃棄パソコンの多さと処理方法が問題となっています。
 Windows95ブームによりパソコンの出荷台数は飛躍的に増加しました。しかし、メーカーの誇大広告に騙されてパソコンを買ったものの使いこなせなくて、結局粗大ゴミに出してしまうユーザーが増えています。また数年後には、この時に大量導入されたパソコンのリプレース時期がやってきます。ゴミ処理場には廃棄パソコンが山となって溢れる事になります。
 パソコンが簡単に焼却廃棄できればよいのですが(焼却といっても大量の二酸化炭素を排出するので本当はよくありません)、パソコンのケースは難燃性樹脂が使用されている事が多く、簡単に焼却する事が出来ません。この事が更にパソコンの廃棄処理を難しくしています。
 自作パソコンで部品を交換してアップグレードしても、ケースはそのまま使いつづける事が出来ます。また、交換した部品も売ったり譲ったりすることで第二の人生を歩ませる事も出来ます(笑)。更にパソコン一台全部に比較すれば、部品の場合は廃棄処理も容易になります。
 自作パソコンで環境に優しくなりましょう。

3.自作のデメリット

(1)知識が必要
 自作するにあたっては、当然ある程度の知識が必要になります。何の知識も無いまま自作することは出来ません。
 しかし、それほど心配する事はありません。何も電子工学の知識や電子工作の技術(半田こてなど)を必要とするわけではありません。単なる部品の組立です。必要な工具はドライバー1本のみです。プラモデル感覚で組み立てる事が出来ます。
 ただし、メーカー製のパソコンのように買ってきてすぐに使える、ということを要求する人には自作は向きません。

(2)失敗時の保証が無い
 「自作したけど動作しない」「組立中に部品を壊してしまった」というような事が発生しても、誰も保証してくれません。全てはあなたの自己責任となります。
 もちろん、個々の部品には購入店の保証がありますが、それらの部品の組み立てに失敗しても保証はありません。
 自己責任で解決出来ない人には自作は向きません。

4.自作をおすすめする理由

 以上、メリットとデメリットを述べました。初めて自作に挑戦する方には不安が色々とあるでしょう。にもかかわらず、私が自作をおすすめします。その理由は

「無限のアップグレードが可能」

だからです。
 「あぁ。この前、新製品のパソコンを買ったばかりなのに、もう新しいパソコンが出てしまった」
 「このパソコン、遅くて使いものにならないなぁ。どこも壊れていないのに」
 といったことに悩まされる事はもうありません。


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