嗤う伊右衛門

著者:京極 夏彦
発行:中央公論新社

●世は江戸、話は『四谷怪談』『四谷雑談集』を原典としつつも、そこはそれ。
静かに背を這い上がる「怖さ」は京極夏彦の世界である。
登場する人物こそ前述の2書に名があり、また生業も同じでありながら性質は違う。

●この作品は著者が「第25回泉鏡花文学賞」を受賞した作品である。
管理人はこの作品を手にする以前に「京極堂シリーズ」「巷説百物語」を読んでいるのだが…”京極夏彦の作品”の姿、成していたものかと。

●管理人はあまり現代作家の作品を好まない。特に”ホラー”という分野において。
実に単純な理由―『静かな恐怖』を表す傑作は古典と言われるものにこそ多々見受けられるものの現代の作家には少ない―からであるのだが、彼の作品は何気なく文字の羅列を追っているだけでは気づかない、だが確実にそこに「ある」静かな、それが『生きた人間』だからこその怖さ。
それに気がついたとき、背筋をゆっくりと這い上がってくるモノ…

●先にこの作品は『四谷怪談』が原典である、と述べたが話の流れは違う
伊右衛門は最初から岩の夫ではないし、岩の顔は最初から崩れている。崩れているが美しい。
物悲しさと、そしてそこはかとない怖さ。
その二つを兼ね備えた、すばらしい作品である。

2004/9/27