王都妖奇譚


著者:岩崎陽子
発行:株式会社 秋田書店


●連載が始まったのは1991年ごろ。
 今から十年も前に陰陽師安倍晴明をモチーフとした作品である。
 登場する晴明は結婚前であるからおそらくは20台前半であろう。
 兎に角、若い時分の話である。賀茂忠行殿もご存命であられるし。

●コミックスであるからして、当然だが…晴明の姿は女性受けする姿で描かれている。
 実のところ、私は本人に会ったことがないから美醜の程はわからない。
 まぁ、夢枕獏殿の陰陽師シリーズでは色白の背の高い黒髪の艶やかな、唇がまるで紅を刺したように赤い美貌の男、と表記されている事からして醜くはなかったであろう。
 ……醜ければ帝の覚えも悪かろうから、当然だが重用されることなどあり得ないのだが。

●このシリーズは、主人公安倍晴明とその兄弟子橘影連との間の微妙な確執。
 確執があっても敵対していないという微妙な関係だな。
 それと、ひねくれている安倍晴明とその友人藤原将之の間にある絆。
 それらを中心として話が進んでゆく。
 陰陽師嫌いの将之と晴明との間の関係は……人と人との間には身分・職業の違いを超えた「何か」がある、と信じるものにとっては救いであろう。

●当然だが、登場するもの達はみな人間臭い。
 当たり前である。人間なのだから。
 「闇」に対する人々の畏怖。
 平安貴族たちの権力への妄執。……貴族が権力・権勢にこだわるのはどこの国も同じという事であろうか。
 人間臭さを随所に感じさせるこの作品は……結構気に入っている。 

●連載は既に終了。
 文庫版で再版されている。
 文庫版は全7巻。場所をとらないので管理人は喜んでいる。
2002/10/28