金枝篇

著:J.G.フレイザー
訳:吉川 信
出版:ちくま学芸文庫


○フィールドワークに重きを置くようになった人類学の世界においては「肘掛け椅子の人類学」と軽んじられるようになったJ.G.フレイザーではあるが、彼がこの「金枝篇」において後世に果たした役割は大きいだろう。
 H.P.ラブクラフト、コッポラ等に与えたといわれている影響は計り知れないものがある。

○さて本書はヨーロッパにあるネミの森に住まう「森の王」が何故殺されなければいけないのか、という主題に対し各地の神話・伝承・或いは慣習に関する文献を引用し、仮定と推測によって結論を導き出していく。
 ――所詮仮定だろう、というのは批判は出るであろう。
だが、考えても見ると良い。
既に消えてしまった習慣の、しかも文献が何も残っていないものにたいして。
嘗てどのような姿であったのかを確実に知る方法など存在するであろうか?
机と椅子から離れずして、数多の文献を引用し記述された本書ではあるが、だからといってその功績を全く否定するというのは筋違いである。

○本書は、未開と呼ばれる世界において、「神」とは何かを考えさせるものだ。
なまじ文明などと呼ばれているものに浸かっているが故に見えてこないものが見えてくる。
それが、良い影響を与えるか、はたまた悪しきものになるかは受け止める側の問題であろう。
一度、目を通しておくと何かしら得るものがあると思う。