『封神演義』〜ほうしんえんぎ〜

発行:講談社
訳:安能 務

●中国三大怪奇小説が一、中国三大演義が一。 お隣中国では、非常にポピュラーな演義小説なのだが……。
 にも関わらず、日本では某少年漫画誌において、これを踏み台としたシリーズの連載が行われるまで、まったくのマイナーだったのは、不幸としか言いようがないだろう。
 なにせ・・・孔子に睨まれてしまったからな…・・・。

●舞台は商周易姓革命。崑崙山の道士、姜子牙が周の軍師となり、商朝に引導をわたす!と言えば聞こえはいいが・・・・・・。
 商は引導を渡すまでもなく腐りきっており、話が始まった時点で既に時間の問題だったりしている。
 時間の問題だった割には、滅ぶまで時間がかかっているがな・・・・・・。

●因みに……話が始まってから、主人公たる姜子牙が登場するまで、15回かかるんだな、これが……。
 その間に観客にはじっくりと、当時の商の状況、および、姜子牙を取り巻く環境を理解いただく、と言うわけだ。
 (※演義とは元々、舞台の為の脚本であるから、一区切りを「回」と呼ぶ)
 『西遊記』でもおなじみのナタク(変換すると文字化けするのだ…)は姜子牙より先に登場する……。

●釣り好きを太公望と呼ぶことはご存知だろう。
 これは元々、姜子牙の別称である。
 西伯姫昌の父、『大公』がその存在を待ち『望んで』いたから、『太公望』……。実に判りやすい。
 これが釣り好きにかけられる理由は、『姫昌、霊台で飛熊を夢に見る』『姫昌、渭水の辺りで車を曳く』を読んでいただければ判りやすいであろう。

●易姓革命の功績者、世界で最初の兵法家、と聞けば近づきにくい感もしないわけではないのだが、この男、なかなか人間くさい。
 嫁に背中を叩かれて、無理にでも働かされるあたりが憐憫を誘うものがある。
 まぁ、この妻の馬氏は先見の明はなかったようで、結局首を吊る羽目になるのだが……。
 覆水盆に帰らず、の故事はここに由来する。

●最近は、あちこちで翻訳本が出ているようだ。
 読みやすい、と思う物を手に取るがよかろう。
 因みに、本書は全3巻だ。
2001/8/5