2005年1月
新年を迎えて「自然災害と、それを誘発・拡大する人間災害」
昨年は自然災害の年でした。日本縦断した台風災害、それも繰り返したこと、台風は夏から秋のものだったのが12月にまで日本近くに襲来したこと、そして中越地震。余震が今でも続いています。最後にはクリスマス休暇中のスマトラ沖地震―tunami(津波)。インド洋沿岸には津波の襲来が予測されていなかったこともあり、日本語由来のtunamiが世界的に有名になりました。
そんな年が暮れる大晦日に雪が降りました。暖冬と言われていたのに最後の日は雪でした。また雪景色の元旦は21年ぶりとのことです。
そこで皆さんに質問します。
21年前というと精神科医療ではなにを連想するのか?それは「事件」と呼ばれるものです。最近は思い出されなくいなった事件です。忘却の封印がなされているのでしょう。雪景色と21年ぶりという刺激語でその封印が解き放されました。
ヒントとしては、雪景色の病棟(これは当事者しか分からないでしょう)?また、精神病院のスキャンダル事件、患者への暴力―致死事件が話題になった事件、その被害者の墓を暴く検証が行われた事件、大学の精神科医局との癒着が問題になった事件、医局の関係者数名がリストとして新聞に掲載された事件、マスコミが連日の報道に対象した事件、NHKがおとり捜査ならずおとり取材を行った事件、人権擁護をアピールする弁護士が活躍した事件、処遇困難例専門病棟に関する論争を加えると?そして、精神衛生法の改正のきっかけを作った事件です。
解答は報徳会宇都宮病院事件です。
これは自然災害と対極にある人災―人間災害です。「人間まみれ」になる精神医療ですから、人災の発生危険度はきわめて高いのです。この問題の詳細は皆さん個人個人が考えなくてはいけないものです。重い問題ですので、じゅっくりと考えていきましょう。
そして、2005年は自然災害とともに人災―「人間災害」が話題になると思います。特に、自然災害を誘発する人間災害(人災)がキーワードになると思います。そして、安全性が強く問われる年になりましょう。
身近な話題を挙げます。東京においては、湾岸地帯の埋立地や工場跡地(廉価な土地でしょう)に最新鋭の高価な高層のオフィスビルやマンションが作られています。廉価な土地と高価な建物が経済的にトレードオフになり合理的な価格になったのでしょう。都心回帰というキャッチフレーズで利便性に訴えての販売攻勢が続き、商業主義一辺倒のブームになっています。これはバブル時期の不動産取引活性化現象と同じようです。しかし、その安全性はどうか?汐留のビル群が海風をさえぎり内陸の都心部の温度を上げたという指摘もあり、自然環境への影響も大きいようです。過密になっている都心から周辺部に、特に内陸の方にニュータウンを作っていった半世紀の動きは何であったか。過密が意味する危険性の自覚がそこにあったと思います。その危険性を軽減化する革新的な技術が開発されたのか?地震などの災害からビルの転倒、崩壊を軽減する技術は開発されているのでしょう。しかし、人間が過密に存在している状況で、一人一人を災害から救済する方法はハードウエア技術ほどには進んでいないと考えられます。人間個々に関するソフトウエア、特に安全性に関してのものを開発することが必要でしょう。精神科もその領域に関係しますので発言の機会が増えるでしょう。災害時のPTSD予防医療のことで更にお呼びがかかることも続くでしょう。
まとまりが悪くなりましたが、あらゆる危険度が高まっていく状況の中で2005年がより良い年に、安全性が高まるように努力していきましょう。