ドクボクシリーズ番外編でシリーズ最終章の本書は、主人公橋口徹のライバル、西條東の物語です。ヤクザの親分を父に持ち複雑な生い立ちの東は、ボクシングのチャンピオンになることで自分の存在を確かなものにしてきました。しかし彼は自分を支えてきたこだわりを捨てて、新しい局面を迎えます。そこにはかつての軽薄で投げやりな若者の姿はありません。剛さんの筆は自由自在に過去と現在を行き来し、華やかなボクシングの舞台と鄙びたイギリスの冬の風景を対比させます。西條と坂本が暖房も効かない小さな部屋で木枯らしの音を聞きながら抱き合って眠る。そのシーンがあるだけでもう十分。あとは、読んでくださいというしかないなあ。心にしみる一冊。シリーズ全巻読んでからどうぞ。
ただひとつ気になるのは、ほんのわずかながら救済とか宗教色のあるシーンがでてくること。これは『はめてやるっ!』のシリーズにもちらっと出てくるんだけれど、私のアラームが少し鳴ってしまうので。そっちの世界へ進まずに俗世の中で幸せを追求してほしいと希望。
投稿者 SOKE : 2005年04月12日 23:47