JUNE誌に掲載された12編の短編は文庫三作に収まって、ひとまずこの本で終わり。と思ったらこのあとは文庫書き下ろしの形で続く。拉致監禁暴行と不健全きわまりない形で始まった物語は、ここにきて健全きわまりないお話に収束して、少しもの足りないくらいだ。加藤も徹も二人の関係を基盤に、他の人間との関わりを深め、人生の目的をはっきりと意識するようになる。加藤は医師としての自覚を深めて、徹はボクシングでチャンピオンを目指す。ここから先は徹のボクサーとしての成長物語になるのかも。
加藤の生い立ちとか家庭環境が、最近読んだばかりの木原さんの作品の主人公に重なる。BL作品の読了数を増やせば増やすほど、主人公の造形がいくつかのパターンに収まるような気がする。主人公たちが孤独を埋めるパートナーを得てしまったら、物語は別の形をとらざるをえない。それはテーマを微妙に変えて、成長物語とかそういうものになっていくのかな。そうやって、次の段階に進むことを潔しとしない人は、傷口をふさがずに、血を流し続けるようなものを好むのかしら。
『銀のレクイエム』を読んで、私が腹立たしく思ったのは、誰も悪くないのに悲劇が起こったみたいな、勘違いとすれ違いで意味もなく人を傷つけるような描写が続いたからだった。お話を作るときに、話のために話を作るみたいなものが見えると興ざめする。でも、巧妙に作られていて、読者をだましてくれる作品だったとしても、上手く作ってあるだけでは、感動はしない。恐らくそこに作者の本気とか愛情とかそういったものがなければ、意味なんてないんだろう。
剛さんのこのシリーズは、愛情があると思うけれども、この第三巻はちょっと話が出来すぎてるかな、と思うところがあった。・・・加藤の魅力は屈折してるところにあったのに、あんまりまともになるとつまんない。