■ 2005年01月24日 ■ <本>木原音瀬『コールド・フィーバー』

なるほどーこれが本領か・・・・と少々絶句いたしました。第一作と第二作は第三作を書くためにあったわけですね。だから周辺の人物描写が薄いし、6年間の透が有り得ないくらいピュア。ネタばれになるので下に書きます。

第二作ラストが甘々なのは、どん底に突き落とすために持ち上げてるんですね。愛と憎しみの間の振幅というのは、わかるんだけれど肝心のそのつなぎの部分が薄い。第一作を読んだ時に感じた上手さというのは、全編を通してあるのだけれど、心理描写に時々納得いかない所があるかなあ。書いてる人は信じていない幸せを混ぜてるからかしら。どっちかっていうとどろどろの方に行きたいタイプ?本来の透の方が身近な人なのかな・・・それは見ていると結構しんどいかもって、思っちゃいました。

交通事故で記憶喪失になった透が、何もないところから藤島との暮らしを始め、幸せに暮らした6年が過ぎたある朝、彼は以前の記憶を取り戻し、6年間の記憶を無くしてしまう。透の義理の兄であり、徹に負い目のある藤島は、できるかぎり透の援助をしようとするが、過去の確執から生まれた透の不信感は消えない。憎しみの過去と幸せな6年間に翻弄されて、記憶を取り戻したあとのふたりは壮絶な日々を過ごすが・・・

第三巻の始まり部分は読んでいて、すごくどきどきしました。このへんがね、すごく上手い。でもそのあとはDV。救いようのないDV。描写は控えめにしたということですが・・・6年間の透がいなくなってしまったのが悲しい。ふたりの透が全く別人のごとく扱われているのがね。できれば統合してほしかったけれど。『EDGE』も、過去と現在をどうつなぐかという話ですが、これほど断絶はないだろうな。
第三巻のために第二巻の過去話があって、あまり比重を重くせず表面的に書かれているんだろうけれど、透の根本があそこでゆがめられたとしたら、もっと丁寧に書いてほしかったと思う。母親の性格、母によってゆがめられた高島の性格、透の性格。そういうところに納得できたら、もっと読みやすかっただろうと思う。暴力の一線を越えた人間が、こちら側に帰ってくるにはすごいエネルギーがいると思うんだけれど、そして弱い人間が強くなるためにもすごいエネルギーがいると思うけれど、そのへんが案外さらっとしているかなと思う。

投稿者 SOKE : 2005年01月24日 12:56
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