■ 2005年01月20日 ■ <本>谷崎泉『君が好きなのさ』本編全10巻

10冊まとめて読了しました。読んでいてとても気持ちのいい作品でした。谷崎さんはたぶん、作中の言葉を借りれば、「リアリストでペシミスト」な目を持った「ロマンティストでオプティミスト」なんだろうと思います。どんなことがあっても前向きで逃げない主人公が最後には幸せになる、そんな話でした。
この話もやっぱり最初は押し倒すことから始まっています。もうこれはお約束なんですかね。そうやって体の関係から始まるお話であるにもかかわらず、10冊という紙数と時間をかけて、ゆっくりと「人を好きになるということはどういうことだろう」と、主人公が考えていく話でした。谷崎さんの作品の主人公は本作のつぐみ(男の子です)も、『幸せにできる』の雪彦も、「好き」という言葉が相手に言えない。周りの人から関係を聞かれても、自分で納得できるまでは言葉にできない。一見、優柔不断で流されているように見えるタイプです。でも見方を変えれば、自分に正直で誠実であるということができるかもしれません。ことばにできないいろいろな感情や、ふたりでつみかさねる時間や、重ねた肌のぬくもりをひとつひとつ丹念に描いて、そうしてやっと彼らは言葉を口にする。簡単に言葉にしないからこそ、その時々の感情の豊かさが伝わってくるように思いました。そうやって思いがいっぱいになって、自分の気持ちに確信が持てたあとは、もう彼らは迷いません。家族にも友人にも自分達のことを隠さずに話し、お互いの仕事のために一緒にいられないことにも耐えられるようになる。その時々のできごとに心を揺らしながらも、後悔はしないと言い切る強さを持つようになります。ただ、いつも書評なんかで言われるのは、谷崎作品の主人公がどうしてそう周囲に好かれるのかわからない、ってことなんですね。これもBLのお約束って言ってしまえばそれまでなんですが・・・・まず最初に相手(攻め)の無条件の愛と執着ありきって感じで、そのへんをもう少しうまくやってくれると安心して読めるんだけれどなあ。後になればなるほど、主人公の良さは出てくるんだけれども。
この作品でも脇を固める登場人物が楽しくて、長編でありながら飽きさせないのは、いろんな人が出てくるから。派手なのや、かわいいのや、怖いのや、厳しいの。でも、みんな優しいかな。一番うらやましいのは、家事全般OKで気配りのできるみんなの相談役、スーパーアシスタントの観月くんだろうなあ。いいなあ、一家にひとり欲しいなあ。
さてこれから番外編二冊読んで終わりです。

投稿者 SOKE : 2005年01月20日 19:26
コメント
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?