■ 2005年01月15日 ■ <本>谷崎泉『もう一度好きになる』

これは2004年に書き下ろしされたノベルズ。主人公はフリーターのひなた。ひなたと同棲中の恋人匡(たすく)は製薬会社に勤めるサラリーマン。このごろ仕事が忙しく、ひなたがレンタルビデオのアルバイトを終えて帰る深夜にも、残業で帰っていないことが多い。匡の不在をさびしく思うひなたのところに昔つきあっていた康生がやってきて・・・
現在連載中の作品とは違って、できるだけ派手な要素を取り除いた作品。主人公はフリーター、恋人は一生懸命仕事をしているのになかなか目が出ない製薬会社のサラリーマン。美形とか金持ちは出てこない。押し倒したりもしないし、もう出来上がっているカップル。まるでおままごとのようなラブラブな二人が揺れるのは、残業で早く帰ってこないとか、休みの日のお出かけの約束が仕事でドタキャンになるとか、ささいな日常の行き違い。それでも最後まで面白く読めるのは、ひなたを取り巻く人々がしっかり描かれているから。バイト先のビデオ屋は、オーナーの気まぐれでやってる店で、とってもまじめな50代の店長と、他に仕事を持っているらしい派手なお姉さまとひなたの茶飲み話の場所になっている。ひなたの顔を見ただけで、「何かあったの?」と声をかけて相談に乗ってくれる。そしてフリーターのひなたには東大から財務省に入ったエリートの兄の霙(みぞれ)がいる。顔がそっくりなのに、出来が違う兄だが、実はひなたと同じでつきあうのは男ばかり。しかも飽きたらすぐ捨てるので、後始末をするのはいつもひなただ。主役のカップルは本当に地味で、実のところこのふたりの話よりも周辺が面白いというのはどうかしらとは思うけれど、谷崎さんの手堅さを感じる作品でした。

投稿者 SOKE : 2005年01月15日 12:23
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