■ 2005年01月 4日 ■ <本>谷崎泉『しあわせにできる』第一巻~第六巻

最新刊まで一気に6冊読みました。面白かったです。最初やけに真面目に始まったので、わからなかったけれど、滅茶苦茶コメディなお話でした。話がすすむにつれて、調子がでてくるタイプなので、何冊かまとめて読まれることをおすすめします。あらすじは以下。

主人公は本田雪彦君。28歳の美貌の商社マン。銀座のママだった母親が会社社長と結婚したにもかかわらず、父親の籍に入らず生活費をアルバイトで稼ぎ、そのくせ母に恥をかかせないように成績優秀、品行方正で学生時代を通し、一流企業の商社に勤めてからは、仕事に専念して優秀な社員として周囲の信頼も厚いできる男と見られています。そんな彼の生活が一変したのは、アメリカ帰りのエリート社員、久遠寺皇(くおんじみこと)と組んで仕事を始めてから。久遠寺は傲岸不遜のマイペース人間で、ばりばり仕事をとってくるので、彼と組んで長続きした人間はいない。本田は、初めて対等に渡り合えるパートナーとして久遠寺に認められたのでした。あるとき久遠寺の取ってきた仕事が、談合疑惑でマスコミに追われていることを知り、本田は久遠寺に話を通さないまま、彼の上司を通じて仕事をつぶしてしまいます。信頼を裏切られたと思い込んだ久遠寺は深夜の誰もいないオフィスで本田を乱暴したのでした。傷ついた本田は相棒を降りると宣言します。久遠寺の相手は本田以外には務まらず、あわてる周囲は慰留につとめるのですが、本田の意思は固い。そして久遠寺は本田が一緒に仕事をしないなら会社をやめるといい出し、それを聞いた本田が仏心をおこしたのが運のつき。仕事だけのつきあいに限定したいという本田の隣の部屋に引っ越してきた久遠寺は、いつのまにか本田の部屋に住み着いてしまったのでした。

・・・・というふうに、いささか強引な始まり方をした話は、本田と久遠寺の関係がだんだん変化していくのを軸に、周囲の人間達と本田の関わりを描く、ドタバタ劇に発展していきます。本田君もてもて。だれもかれもが、本田君を好きになる。久遠寺には兄が二人いて、隙があれば本田にちょっかいを出そうとする。それを防御しようとする三男坊は本田に向かってこういいます。「おまえは人が良すぎる」・・・そのセリフをあんたが言うのかい。と本田君は心の中でつっこんだに違いない。
本田君はまじめな人です。母親ゆずりの美貌と、高級クラブのバイトで身についてしまった水商売の艶っぽさで、周囲から浮いていますが、仕事をこなす喜びを糧に日々送っているまじめなサラリーマンです。それなのに、無理矢理久遠寺が関係を迫るは、同僚は彼をアイドル扱いして私生活を詮索するわ、そんなヒマに仕事をさせてくれ!と叫びながら、ごたごたにまきこまれていく。クールビューティのくせにお人よしで、人の善意を無視することができず、情にほだされ、自分が無理をする。会社の同僚達はそれを知っているので、本田君のことが大好きです。
この作者の文章はしっかりしていて、きちんきちんとお話を構成していきながら、ユーモアもある。そしてふんだんにあるラブシーンも、ものすごく濃厚でありながら客観的。自分の文章に溺れることがないので、読みやすい。リーマンものかと思ったら、ヤクザな社長もでてくるし、水商売の人たちもでてくるし、脳天気なOLたちもでてくるし、それぞれ個性豊かで面白い。
本田と久遠寺の関係も一筋縄ではいかない感じ。最初は本田君が押し倒されてしまうわけですが、久遠寺も強引なだけではなくて、その後は彼なりに本田を大事にしているらしい。本田は体の関係から始まった久遠寺との関わりをどうしても肯定できず、6巻終わったところでも、まだ一度も好きだといえないのですが、だんだん心が変化していく。その移り変わりをゆっくりと書いてあるので読み応えがあります。おもしろかったので、続編を楽しみに待ちたいと思います。(お正月の拉致事件とかマンション探しの話は、やりすぎだけどねー)
最初に押し倒すとか、攻めが大金持ちで強引ってのはお約束?それにしても、この話はドラマCDを聞いた時に思ったとおり、フジミとの共通点がたくさんあります。これで置鮎さんが本田君をやったら、そのまんま悠季になってしまったかも。

投稿者 SOKE : 2005年01月04日 14:38
コメント
■ Posted by: よ : 2005年01月25日 07:52

はあ〜、すごい長かったんですけど。とにかく、遅い!本田さん、悩むのは1巻くらいにして。久遠寺さん、もっと押せ〜。久遠寺さんてさ、強引なくせに、押しが弱いよね。心まで踏み込んでこない。奪おうとしない。相手の心が、わずかに傾いてくるのを嬉しく思いつつ、抱くだけ抱いて、どっか行っちゃう。好きと言わない。アプローチしない。本田さんに、悩む隙を与えるな。さっぱり進展しないじゃないか。・・それでも、6巻読み終わってみると、読後感はいい。やっと、少し、心が触れ合って。古い日本家屋で、2人、桜を眺めてるとことか。
私は、谷崎さんの話は、静かに日常生活が流れていく場面が好き。まゆりや、静香の厳しい人生を生き抜いてここにあるみたいな淡々とした生活の場面。文章が、ウエットなんじゃないだろうか。ユーモアたっぷりの場面も、フジミと違って、はじけてない気がする。微笑ましかったり、ペーソス漂ってたり。がははと笑うような感じにならない。久遠寺の祖父との場面とか、しんみり語り合う場面に、あったかいものが通うようで好き。久遠寺も、強烈な兄2人に押されて、究極、自信がない人なんだろうか。だんだん、素の表情を見せるようになってきましたが、もっと、もっと可愛げなとこを見せて、本田さんの心を、とっとと掴むんだ。今後に、乞うご期待中。

■ Posted by: SOKE : 2005年01月25日 08:15

谷崎さんの長編を二作読んで思ったことは、言葉で表現してしまう前に、その言葉の背後にあるものをゆっくりじっくり積み上げていく人だなということでした。果物が熟成していくように、時間をかけて待ってから、一番良いタイミングに言葉が落ちてくる。私はそれがとても美味しいと思う。最初に即物的に押し倒すくせに、「好き」というまでに時間をかける作風(笑)

谷崎さんは多分、秋月さんのフジミのファンだと思う。かなり読み込んでいることがわかる。どっぷり谷崎さんにひたってる間は、こちらの方が丁寧だし、若いだけに本気で書いているし、こっちよりになってたんですけれど、谷崎作品は読み返すのは三回くらいまでだったな・・・フジミはやっぱり何か違うんだよね。なかなか言葉で表せないけれど。

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