同人誌をこんなに読み返したのは初めてかもしれない。何回か読むと、とても巧妙に原作の設定を反映していることがわかるし、独特の雰囲気がある。耽美小説風の文章に時々ほころびがあるものの、それを差し引いてもかなり上手い人だと思う。ダブルパロディっていうのかな?フジミのキャラを使って、『鉄仮面』の話になっている。私は鉄仮面は子供向けの本しか読んでいないので、原作がどの程度反映しているのかはわからないけれど、独立したロマンス小説としても十分読めるんじゃないかな。以下ねたばれのあらすじと、フジミの設定の反映について。
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おそらくフランスの中世くらいの設定のどことはわからない国。主人公は悠季と圭(名前はこのまま)。悠季は孤児で、修道院で育てられ、世俗のことは一切知らないまま、北の果ての岬の牢獄に、司祭として赴いた。幾重もの扉に閉ざされた塔の天辺に、豪華にしつらえた部屋があり、銀の仮面をつけた背の高い青年が住んでいる。囚人は彼一人。豪華で堅牢なこの牢獄のルールはただひとつ。塔の御方の秘密を守ること。囚われの身でありながら君臨する彼は、新任の若い司祭に、立場を超えて友情を結びたいと言う。悠季は快くこれに応じ、囚人と司祭の交流が始まる。彼は言う。「きみは神の囚人で私は王の囚人だ。」
悠季は朝と夕の勤めの間の時間を、塔の上で彼の話相手として過ごす。あるとき悠季が外から入手した一冊の本を見て、彼が皮肉に笑う。これはあなたには理解できないだろう、と。悠季は本を読んでみる。それは叔父に父王を殺された王子の話で、「尼寺へ行け」というセリフの頁に金の透かし彫りの栞があった。塔の彼がはさんだものだった。蝋燭の光をすかして、金の栞は王国の紋章を床に映し出す。次の日に、悠季は塔に上がり彼に聞いた。「あなたは」「誰ですか?」この獄舎で最大にして唯一の禁忌の質問に、彼は笑ってこう答える。「知りたい?」「ええ、私はあなたが知りたい」答えた悠季にそっと口付けをして、彼は仮面を外した。
それは国中の誰もが知っている顔。硬貨に刻まれた横顔。この国の最高権力者。驚く悠季に彼は言う。「このまま秘密を封印して忘れてしまいなさい。」悠季は思わぬ強さを見せ付けて彼に言った。「あなたが知りたいと申し上げたではありませんか。」「私か、神か、あなたはどちらを選ばれる?」「あなたを選びましょう」言い終わらないうちに抱きしめられた悠季は、この思いが恋だと自覚する。
かつて国王だった彼には双子の兄弟がいた。出産の際に母の命を奪った子供たちを、父王は一人を跡継ぎに、一人を罪人として幽閉することで精神のバランスを保った。ある夏の離宮への行幸の際に、この二人を入れ替えようとしたのは、若く有能な王をうとましく思った宰相たちだった。王は囚われの身となることを受け入れる。彼は王位に未練はなく、弟への恨みもなく、それまで誰とも親しく交わったことがなかったのだ。そして牢獄で悠季と出会い、彼は生まれて初めて至上の喜びを手に入れた。そしてこれまで誰も呼ばなかった名前で自分を呼ぶように悠季に言う。自分の名前は圭である、と。
牢獄である塔の部屋はふたりにとっては楽園だった。彼らはお互いを確かめ合い、幸せな時を過ごす。豪華な鳥篭の中の恋。しかし、外の世界は彼らを放っておかなかった。悠季のもとに、正統の国王を解放しようという家臣たちの連絡役が訪れる。悠季は彼らの手引きをする。それは圭を解放すると同時に、自由になった圭が自分を選ぶのかどうか知ることになる。そしてある夜に、囚人を移送する命令書を持った騎士たちが訪れて、囚人を牢獄から連れ出した。別れの時に圭が自分の名前を呼んだ瞬間に、悠季はその瞬間が永遠に勝ることを知った。その後何が起ころうと、かまわないと。
圭が去った後、時間をおかずに、悠季は王宮に連行される。罪人が通る門から入り、通された部屋にやってきたのは、そっくりの声にそっくりの顔をした別の男。悠季のよく知っている男が老成ささえ感じさせたのにひきかえ、王宮の男はどこか子供っぽさを残していた。そして聞く。牢獄から逃がすかわりに、彼は悠季に何を約束したのか?聖職者としての地位と権力か?それなら自分が与えよう、と。悠季は何も約束していない、自分を処分してください、と答える。それを聞いて王は笑い出す。「忠実で忠義心深い司祭殿。あなたのような方がそばにいれば、どんなに心強いことか」
彼は悠季の戒めを解き、部屋を用意し、人目につく場所を連れ歩いた。そして、彼のために盛大な仮面舞踏会を催すという。「なんのために?」と聞く悠季に、「兄上をお呼びするためにきまっているではありませんか」と彼は言う。「こんな見え透いた罠に来るものなどおりませんよ」との言葉には、「恋するものはどんな塀をも乗り越え、毒さえもあおるのですよ」とうそぶく。王は言う。自分と兄は一枚のコインの裏と表。たとえ交わることはなくても、彼のことはわかるのだ、と。そして仮面舞踏会が開かれた。
・・・・あらすじはここまで。このあとのシーンがものすごく好きなんですよ。だから書かない(笑)ここでは省略しましたが、こまやかなラブシーンがそこらじゅうにあって、むしろそっちがメインのお話なんですが、原作よりも上品ですので、BLが苦手な方にもおすすめできます。音楽がないのに、原作の骨組みをかなり忠実に再現しているのに驚きます。圭の母親が産褥で亡くなったということや、塔のてっぺんの豪華な部屋に住んでいる孤独な青年って、ペンシルマンションの反映だし。無口な典獄は伊沢さんだし。仮面はポーカーフェイスってことですよね。そして何よりも、孤独な魂が伴侶を得るという話ですから。もうひとりの王様が小夜子さんてのはあまりにかわいそうなので、どちらも幸せになって欲しいとおもいます。主役ふたりはラブラブなので、もう、ほっといても大丈夫(笑)
投稿者 SOKE : 2004年12月26日 00:58フジミは全く読んでいないけれど、JUNE版『奇岩城』として面白そうです。
こんなあらすじで雰囲気が伝わるかしら?
フジミはフジミで楽しい世界ですので、そのうち気が向いたらどうぞ。音声資料が山ほど(笑)
この話を書いた人は樋口都さんという人で、『樋口屋』というサークルで書いておられます。HPもある。遥と指輪とM&Cとバッテリー(笑)ハリポタもあり。
手持ちの本もCDもなく、心静かになったところで、思い入れの1冊を読みました。
少し黄味がかった上質紙も、インクの色も、字体も、間にはさんだ薄紙も、全てが、この1冊を、とても大事に作ったのだという雰囲気が伝わってくるようです。鉄仮面の話は、簡単にしか知らないのだけど、思っていたような、手に汗握るようなことはなく、とても静かだ。無彩色の世界に、ただ2人の交わりの熱さや、銀の仮面、白百合、クロス、僧衣といったものが、彩りを添えていく。鉄仮面のモチーフを踏まえながら、高潔で、思いやりに満ち、おそらく神に愛されているのであろうところは悠季で、孤独で、才能にあふれ、自分の信念を貫く毅然とした立ち居ふるまいは圭で、これは、明らかに、2人の物語だ。そして、その中に織り込まれた小さな断片、例えば、百夜思うとか、仮面舞踏会の黒衣とかは、同じものを大切にしてきた人なのかと思う。特に、仮面舞踏会で、徐々に、悠季に近づいてくるさまといったら、まるで、指揮をするがごとく、印象的な場面だった。さらに、気づかなかったけれど、双子、仮面、塔といったフジミを模した謎かけ。緻密に、大切に作られた、静かで、熱い作品だと思った。
いいでしょ、いいでしょ?!
こんな素敵なものが、出てくるところが
フジミの奥の深さですね。
何回読み返しても、塔の上の風の音とか、波の音とか空の青さが
よみがえる作品です。