■ 2004年09月27日 ■ <本>秋月こお『要人警護』『特命外交官』

最初の一冊は特に面白いとは思わなかったけれど、二冊目の二話目になったら風向きが変わりました。秋月さんの話は、最初は妙に即物的なラブシーンから始まるみたい。そこで退いてしまったらもったいないと、あとからわかります。
主人公は警視庁のSPの立花美春。政府高官や来日する要人の警護にあたるエリート。ほっそりした体つきときれいな顔立ちという外見とは裏腹に、SATの教官も勤める有能な警察官。彼の下に新人として配属されてきた西條剛志は、別れた恋人の弟だった。顔を見ると兄を思い出す立花は、剛志に冷たくするが、自信過剰の能天気男は、立花が自分の好みとばかりすっかりのぼせて追いかける始末。そんな中、アラブの青年外相が来日し、立花と西條は護衛の任務につく。
部下である西條が、立花の寝込みをおそったり、外相がSPの立花に手を出したり、「ありえねー」という状況が続くので、最初は冗談ですか?と思っていましたが、二冊目で立花と西條がアラブの国へ行く話になってから人間関係が少し複雑になってきました。立花に手を出した外相アッジールは、クーデターの際に国外にいて生き残った最後の王族で、国外で国王の名乗りをあげます。そして母国へ政権の奪還に向かうわけですが、その際に、政権奪還後の利権の確保のために各国から使者が随行することになりました。立花は特命外交官として異例の抜擢を受け、アッジールについていくわけですが、それは外交官とは名ばかりの捨石のような役目。西條は、そんな立花を守るために、自分の意思と責任でついていくことを決めました。アッジールは母国では王族としての責務を優先し、立花はいずれ終わりが来るという認識を持ってアッジールに従い、自分の職分をまっとうしようとする。そこへ立花への思いだけが全てという西條が乱入する、というご一行様が、クーデター政権下のアラブの国の中を旅します。若い西條は、百戦錬磨のアッジールを見て、自分が彼にはかなわないと思います。そうしてバカで自信過剰の脳筋男が、だんだんものを考えるようになり、人の心を推し量るようになり、自分をライバルに対抗できるように鍛えていかなければと自覚する。・・・つまりは、成長物語の様相を呈してきました。これは、王朝ロマンセもそうでしたね。面白みのない若い男が、だんだん育っていくにしたがって、人間関係が変化する。変化の中で建前と本音。嘘と本気が交錯して、複雑な心の動きが楽しめる。秋月さんの最近の作品はラブシーンよりも、そういう人間関係を描くことに重心が移ってきたような、そんな感じがしました。第三巻は今秋発売だそうです。

投稿者 SOKE : 2004年09月27日 22:46
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