優しくてシビアで、ぎりぎりの距離を保った不思議な番組だった。最初、いったい何をしたい番組なのかわからなかったが、最後にはやっと「時間」をテーマにしていることに気がついた。いや、もちろん「30年ぶりのフォーク同窓会」とサブタイトルについていたくらいだから、最初からそれは明らかだったのだけれど。ありきたりの展開にならず、上っつらの言葉をつかわず、それぞれが妥協しないまま、お互いを認め合って同窓会は終わった。ラストに陽水が夕暮れの沖縄の海をバックに「ゼンマイじかけのカブトムシ」を弾き語りで歌う。この画面はそれだけで、心にしみるような映像だが、番組の最後としては出来すぎだった。
30年前、陽水が一緒にツアーをしたフォーク歌手の四人、高田渡、加川良、三上寛、友部正人と、小室等を迎え、沖縄の洒落たリゾートホテルで一日を過ごす。それぞれが陽水のリクエストに応え一曲ずつ歌い、間に一人一人のインタビューとみんなで談笑する場面と陽水のコメントが入る。陽水の歌はスタジオで撮影した曲とホテルで撮った曲、合計5曲が途中にはさまれていた。
出演している陽水の友人の五人は、小室さんを除いてお名前は知っていたものの、歌は聞いたことがなかった。72年当時、私は小学生で五歳年上の姉がいたので、当時のフォークソングをわりと聞いていた方だが、姉が好きなのはガロとかそのへんだった。反戦フォークや生活に密着したような歌はあまり耳に入らなかった。今回彼らの歌を聞いて、それぞれが骨のある個性的な人たちだということがわかった。それでも自分との接点はあまりない。当時の彼らがどういう評価を受けていたのか、現在何をしているのか、そういうことが全然わからない。私が目にするメディアに彼らが登場することはこれまであまりなかったので。
陽水の出発点はフォークソングといわれている。彼らの中で過ごした時期が確かにあった。しかし小室さんが番組の中でおっしゃっていたように、陽水の歌は最初からフォークソングではなかった。今回の番組では陽水はあまり語らない。歌でさえ最後の一曲以外は途中で映像や音声がかぶり不完全な形だった。その分、ゲストの歌はしっかり放送されていた。三十年の間、表舞台で活躍し続けた陽水と、かつてのフォークソングの仲間の同窓会は、いったいどんなものになるのか、はらはらしながら番組を見ていた。冒頭に書いたとおり、最後にはゆっくりと時間の流れを見るような視線が印象に残った。そして陽水が年齢相応に年をとって見えた。友人達を見る表情は、最初の頃のLPのジャケットに映っているサングラスをかけてない優しい青年の表情と重なった。
無口な友部正人さんの言葉が心に残る。日本とNYを往復している彼は言う。「リアリティは人それぞれ。工場で働いているからリアルなわけじゃない。陽水の一見ちゃらんぽらんな歌詞にリアリティを感じる人もいる。そしてそれを伝えるのは言葉」「アメリカは保守化している。日本も世界もその影響を受ける。ぼくたちは幻のような自由な雰囲気の中で2,30年を過ごしてきたけれど、それが一挙に冷えてしまう可能性がある。あっというまに30年前に逆戻り。何か言ったほうがいいかもとちょっと思う。」
最近の私は、本を読むことに没頭していたので、他のことにあまり気がまわらない状態だ。実は、放送時間にスタンバイしていながらうたたねしてしまい、冒頭30分を録画しそこねた。パソコンに予備の録画予約をしておいたので、それを見てこれを書いている。陽水の歌や言葉は、私が他によそ見をしていても、引き戻す。そういう力がある。番組中歌われた「クレイジーラブ」は昨年のコンサートで披露されたジャズバージョンで、まだCDに入っていない。押さえて歌う「クレイジーラブ」はとても素敵なのでよかったら見てくださいね。ハイビジョンは今日放送予定。再放送は9月はじめです。
★陽水の歌
1.かんかん照り 2.傘がない 3.夏星屑 4.クレイジーラブ 5.ゼンマイじかけのカブトムシ
☆ゲストの歌
1.生活の柄(高田渡) 2・夢は夜ひらく(三上寛) 3.教訓(加川良)
4.雨が空から降れば(小室等) 5.一本道(友部正人)
<演奏順 ★1.★2.☆1.☆2.★3.☆4.☆5.★4.★5.>
投稿者 SOKE : 2004年08月06日 06:02見た〜。でも、あのおっさんたちを温かく見守れるとこまでは、愛がないので、寝ちゃった〜。熱く語ってたよね〜。リゾートより、居酒屋のが似合いそうだった・・(ケーブルの居酒屋紀行が好きなの)
でも、うたたねのはざまで、ちらっと脳裏に残るものがある。朝のテーブルの席の取り方とか、リラックス度とか?陽水は子どもみたいで、友部さんが見守ってるような?そんな人だっけ。不思議だった。
で、最後のインタビュー、さらに30年後というのを聞いて、このわけの分からんおっさんどもが、まとまった感じ。同窓生だもんね。肉体的に衰えつつあるこれからの30年。穏やかに枯れていくか、壮絶にのたれ死ぬか。見本市みたいな人たちだ。陽水の歌が、最高に艶があるのは、今が、そんなぎりぎの時であることを知って、大切に、愛しんでうたってるからじゃないかなあと思う。
歌は、屋外なので、最初は、声が拡散して、物足りなく思ったけど、だんだん世界に引きずり込まれる。クレイジーラブは、ほんとに最高でした。
と、半分寝てたので、ピントはずれかもしれないけど、とりあえず感想。・・11時って、眠すぎる〜。
私も最初はちょっと入れなかったんだけれど、おとといからもう三回・・・四回くらい見てるんだけれど、見ればみるほど味わい深い。やっぱりそれぞれ「お城」を持っている人たちだから。(お城←陽水の言葉。個性ってことだろう)
あの朝食の席、陽水が反射的に席の上下を見てるんだよね。一番下座に取るんだから、やっぱりちゃんとした人なんだなあって思った。そして、よっちゃんの言うとおり、あんなぼーっとしてる陽水って初めてみたんだよ。いつものガードを外していた。
友部さんが話始めると、そこに目がいっちゃうのは、やっぱり詩人だからかも。時間に流されない人だと思った。
もう家族に「やめてください」って言われるほどカーステレオで陽水をかけてるんだけれど、さすがにもういいかな、と思う頃にライブを聞いちゃったり、こんなふうにテレビで新しい音源を聞いたりすると、また戻っちゃう。声の状態がよくなくても、心をこめて歌うのを見ると、こっちも居住まいを正してしまうというか。
今回の番組は、さすがにファン以外の人に強力におすすめするのは無理かな、と思っていましたが、見てくれてありがとう。うれしいわ。