■ 2004年06月25日 ■ 『広告批評』1992年3月号

以前入手してざっと読んだきり放ってあった『広告批評』の陽水特集号を再読しました。荒木経惟が撮影した表紙の写真の陽水が着ている服が『curve』のコンサートの時と同じ服だったので。チェックの赤いシャツ。ちょうどこのビデオと同じ年に出た雑誌でした。三本の対談のうち、一番面白かったのは、武満徹さんとの「言葉について」という対談でした。

陽水のインタビューを見ると、いつも年長者には敬意を持って接しています。特に小室さんや武満さん相手だとできるだけ誠実に答えようとしているようです。でもこの問題に深入りするのやだな、という話題の時は、いつものようにはぐらかそうとする。さすがにこのお二方はそういうポイントを逃がしたりしない。はっきりともう一回聞き直す。そうすると、陽水は答えざるをえなくなります。だからとても面白い対談になります。反対に同じ程度に相手の懐に入っていく質問が陽水から返ってくるんですけれどね。まあそれはお互いさま。内容を要約しようと思って、もう一回読み直してみたんですが、ちょっと簡単にまとめるのは難しい。それでも少し書いてみます。
武満さんは、陽水の言葉は歌詞を読むだけでは不完全で、陽水の口から出た歌になることによって、完璧になる、と言います。武満さんが音楽を作るのは、言葉ではとらえきれないものを表現するためで、音楽というのは曖昧さこそが正確さなんだけれど、意味を限定する言葉も、陽水の使い方だとその意味が曖昧になる。その曖昧さが多くの人の心に触れるのではないか?
対談はそういう話から始まって、作曲家が頭脳労働者だったら、シンガーソングライターは肉体労働者で、前者は言行不一致だけど、後者は言行一致でうらやましいという話や、何のために歌を歌うのか、という話まで話はいろんな方向に飛んでいきます。
「大衆のために歌っている」とか「セールスのために歌っている」とか適当なことを言っている陽水に、最後には自分のために歌をうたっている、と言わせているんだから、武満さんはやはりたいした人なのでした。
陽水が自分のために歌っているとしても、彼の歌は聞く人一人一人が自分のために歌ってくれていると思う。陽水のうたをそれぞれが自分の歌として変えていく。陽水は卑弥呼のようなメディアではないのか。それは素晴らしいことだ。・・・そして、他人のために作った歌は名曲が多い。人のために作る方がより自由なのではないか。
そう問いかける武満さんに、じつは曲を作るにとどまらず、生きていく上でも人のために何かをすることが必要じゃないかと思い始めている。と陽水が答えて対談は終わっています。
「自分のために歌う」というのは自分が満足できるような音楽を作るということかもしれません。初期の作品はそういう意味で完成度も高く、無駄なものがない張り詰めたものでした。それが少しづつ変わっていったのが、この頃でしょうか。今でも陽水は歌に対してはとても真剣です。それでも以前にくらべてずいぶん柔らかく優しくなりました。「人のために」というのはそういう変化のきざしを捉えた言葉のように思えました。
昨年のツアーやテレビの番組を見ていると、テーマソングのように歌われていたのが「LOVE」という曲でした。やっと「愛」という言葉に抵抗がなくなって、と陽水は笑います。かなり本気で言っているんだろうと、私なんかは思っています。かつてどこまでも伸びていった美しい高音はそのうち出なくなるかもしれない。それでも、失ったもののかわりに加わっていくものもあって、最近の陽水の歌はとても懐が深く聞いていて心地良い。それは一朝一夕にそうなったのではなくて、溯って行くとずっと続いているように思えます。過去のどの時点で切り取っても楽しめるし、この先どこまで行くのかずっと見て行く楽しみもあるという、やっぱり稀有な存在なのでした。

メモ
『武満徹・音楽創造の旅』(1992年6月「文學界」で連載スタート)
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/~ctakasi/cheztachibana/rensai/bungaku.html
いろいろ検索していたら、こんなところに立花さんが。

投稿者 SOKE : 2004年06月25日 01:39
コメント
■ Posted by: あさがお♪ : 2004年06月27日 09:12

sokeさん、近頃次々と陽水さんの話題を更新されていて読んでいるだけでも嬉しいのですが、やはり何かコメントを・・と、思うとこれが結構難しいんですね(笑)。あ、義務感ではなく、もちろん自発的にコメントを書きたいと思っているのですが、なかなか追いつかない状態なのです。などと言い訳をしながら・・・(笑)、

ジェーンバーキンさんとのデュエットは、私も初めて聴いたときはCDの中でカナリアだけを抜き出して聞いたのですが、かなり違和感がありました。でも、再度今度はアルバム全体を聞くとアルバムの中に納まっている感じがしたんですね。それと、このカナリアの中の陽水さんのセリフ(カナリアの日本語歌詞)が、とても素敵だと思ったんですよ。桜三月散歩道って、かなり好きな曲で、ファンの方々にも人気がある曲だと思うのですが、こういうセリフモノが今でも・・・いえ、今のほうがさらに素敵なんじゃないかと思ったり・・・。とは言え、やはり離れた場所で録音して合わせるのは無理のような・・。陽水さんもあまりいい方法だとおもわなかったのでは?!(完璧を望む方だと思いますので)

持田香織さんとのデュエット、素敵でしたね。私、持田さんって、歌が上手いとか、思ってなかったんですよ。もともとタレントで、歌手じゃなくても良かったって、ラジオかTVで発言されているのを聞いたことがあったりしたものですから・・・・。でも、声がいいですよね。それに、きちんと曲を捉えて自分の声を生かしながら歌っているなぁ。と、思いました。
さて、さらに・・・
陽水さんの曲って、名曲がまだまだ埋もれているという話ですが、私もそう思います。で、殆どが名曲だと思うんですよ。私は初期のころの曲も今の陽水さんにすべてセルフカバーをしていただきたいとかねてから思っていまして(ずうずうしいですね・汗)、空想ハイウェイでは、知られざる名曲を取り上げるとのことですから、今後も楽しみにしているのです(喜)。

さて、ここまできて広告批評の話ですが(笑)、
私、広告批評はつい最近バックナンバーで注文して買ったんです。多分、今でも買えると思います。この雑誌、見かけは薄くて小さいのですが、中身は濃くて、これは陽水ファンは是非読むべきですよね!それはいいとして・・・
今回、sokeさんが書かれていることを再度思い出すために一度だけしか読んでなかったこの雑誌をまた引っ張り出して読んでみました(笑)。
武満さんとの対談は私もかなり興味深く読みました。で、コメントとなると、sokeさんの感想は的をついているなぁ。って、思いました(感心)。とはいえ、この雑誌に出てくる天野さんや所さんとの対談もかなりイイ線行ってると思うし、陽水さんのことを語っている人々はどの人も傑作な事を一つは述べていると思うんです。そうなってくると、やはりこの雑誌そのものが完璧かなぁ。って、思ったりして・・・。何しろ「ぜんぶ陽水」ですから。完璧じゃないことはありえないのかも知れませんけど(笑)。

では、ながながと失礼いたしました。また楽しい日記を楽しみにしています♪

■ Posted by: soke : 2004年06月27日 09:59

時々発作的に長々とラブレターを書くことがあって(笑)それは陽水に限らず、あと何人かいますです。コメントありがとうございます。
・・・そうですね、私がファンサイトに、書き込みをするのを躊躇するのは何故かというと、これは他の分野でもそうなんですけれど、いろいろと思ったことを書きたいので、その中には、ほめるばかりでない言葉も入ってしまうんですね。私は陽水が好きですが、(この「好き」は、いつもにくらべると実は常軌を逸してるレベルですが。)それでも、やっぱり自分の言葉で語りたいみたいな。それでこんなところで一人で語ってるんですが、今回あさがおさんがこちらに書いてくださって、とてもうれしく思います。それでも誰かとお話したいですから。(笑)

そうそう、ジェーン・バーキンさんのCDは通して聞いた方が受け入れやすかったです。面白いアレンジの曲が多かったですね。陽水は語りになると、かなり素の部分が出てくるような気がして、(インタビューとかはそうでもないのに、歌の中の語りでは)それが聞きたいような聞きたくないような・・・ちょっと複雑な気持ちです。
私も持田さんの声に初めて気がついた、というか。うちの娘がELTが好きで聞いているのに、ほとんど気にとめてなかったんだけれど、CD借りて聞こうかなという気になりました。持田さんだけで聞くと、やっぱり若い女の子の音楽でしたが、あの番組の二曲は聞かせました。うーん、陽水効果?
昨日、うちの同居人氏が初期バージョンMP3を作ってくれたんですが、ほんとに初期の初期の曲はちょっと聞いていて痛かったです。アンドレ・カンドレとか・・・・私の愛を持ってしても(笑)
『断絶』のあたりから半分くらい大丈夫になって、『氷の世界』は今聞いてもケチのつけようがない名盤ですね。『あどけない君のしぐさ』の最近の演奏がDVDに収録されてますが、オリジナルバージョンと全く同じアレンジで、ああいう歌い直しはすごく面白いと思いました。もっとやってもらいたいですね。歌い直すことによって、歌が生まれ変わるのも、聞いている楽しみのひとつですね。
『広告批評』は面白くて、同時期に出た月刊カドカワも読んでみようかなと思っています。天野さんと所さんの対談も普通の対談にくらべればすごく内容がありますよね。でも、あの中で一本取り上げるとしたら、武満さんかなと思いました。

さてさて、こんなところまで検索で見つけられたあさがおさんですから、陽水関連のネットの記事はほとんどご覧になっていると思いますが、そんなあなたにプレゼント。もうご存知だったらごめんなさい。グーグルで「フジロック 陽水」と入れると、陽水ファンではない人たちのフジロックのコンサートレポートが山のようにヒットします。昨年やった時よりも、数がしぼられてなかなか面白いです。ファンでない人の文章というところがポイント。そういう層にアピールしたということが自分のことのようにうれしくて、昨日はこんなものを読んで時間をつぶしてしまいました。放送を見逃してしまったのが痛恨の素晴らしいライブだったようです。

■ Posted by: あさがお♪ : 2004年06月28日 00:31

そういえば・・・私も自分のサイトを持ったのは自分の意見を自由に言いたいなあ。と、思ったのもキッカケの一つでした。自分の所だったら何を言ってもかまわないだろうという・・・。実際にはそれなりに節度を持って語ってるつもりですが(笑)。
それに、ある程度書くとなんとなく満足してしまったりして・・・近頃はサボりぎみですし(汗)。
こうしてsokeさんのご意見を見ていると「そうそう」と、簡単に納得してしまって、なんだか申し訳ないような気分になったりします。でも、あえて言っても、この返信の中の文章も、「そうそう。」と、思うばかりなのです。

『断絶』から『氷の世界』のアルバムへの感想もまさにその通り!私、実は「断絶」は(アルバムではなく曲です)あまり好きじゃなかったんです。むしろ、ちょっと笑っちゃったりして・・・。でも、国際フォーラムで陽水さんが弾き語りで歌った時、”こんなに素敵な曲だったなんて!!”って、正直にそう思いました。本当、今の陽水さんが歌うと違うんですよ。そんなこともあって、陽水さんに全部を歌いなおしていただきたいと思ったりもしたのです。

月刊カドカワ・・・実は持ってます。この中に書かれているアルバムの解説なんかも面白いかも・・・(実は憶えてません・汗)。それと、つかさんとの対談があるのですが、九州地方の知人に確認したところ、この中に書いてあることは本当だそうです。今の段階でこんなこと書いても変だと思うでしょうが、是非、読んでみてくださいませ(その時点でなんとなくわかっていただけると思います)。

で、フジロック、検索してみてやっぱり・・・。と、思ったのですが、フジロックに陽水さんがご出演した時、実はかなり探してレポを読みました。なぜかといえば、その時は、とても陽水さんへの評価が気になったのです。ファンになってしまうと本当に何でも素敵だし(本当に素敵ですが)、どんな歌もイイのです(本当にイイのですが)。そうなると、自分のあまりに偏った目や、耳があるのでは・・・と、疑ったりもしたんですね。でも、その心配は全くなく、皆、素晴らしいと連呼しているし、フジロックの映像(氷の世界と最後のニュースのみ)を見ても、確かに皆、ものすごく感動しているってわかりました。ベストアクトに選ばれてもいましたし・・。事前の情報で、陽水さん、風邪で調子が悪いってわかってたので、本当に心配してました。なのにあの熱狂振り!!実は、EZOのライブについてもかなり検索しまして・・・。で、こちらのほうが調子が良かったと思われるのですが、こちらはまた更なる狂乱だったらしく・・・。本当に嬉しいし、ホッとしました(喜)。
ただ、こうして陽水さんが出た後、それじゃぁ、次は和田アキ子でも呼んだら。っていうカキコもあって、これにはハッキリ言って全く違うと思ったんですね。こういうところが陽水ファンとそうでない人の違いなのかなぁ。って、思ったりしました。
そんな訳で、こうして陽水さんファンの方のご意見をうかがえるのはとても嬉しいです。
これからも宜しくお願いします☆

■ Posted by: soke : 2004年06月28日 01:09

やっぱりおんなじことをしてますね(笑)EZOも調べました。フジロックの方がたくさんレポがあったように思いましたが・・・月刊カドカワは実は今週中には入手予定です。アルバム解説というと、どなたかのサイトに転載されてたあれかしら。読んでみますね。

あさがおさんのサイトを拝見していると2002年からレポートがアップされていますが、初めてコンサートに行かれたのはいつ頃ですか?私は、一番最初が1988年。次が2002年で、遠くまで聞きに行き始めたのが去年からでした。自分の住んでいるところに来た時だけ聞くというふうに思い込んでいたんですね・・・それが、いつのまにか泊りがけで(笑)パソコン通信とかネット環境もずっとあったのに、コンサート情報やテレビ情報を探すということをしていなかったので、ずいぶんたくさんの穴があります。これからは大丈夫だけれど。
あ、去年の恵比寿は同じ会場にいました。これからも、時々ご一緒するかもしれませんね?どうぞよろしく・・・

■ Posted by: あさがお♪ : 2004年06月28日 01:36

早速コメント、ありがとうございます。
初めて行ったコンサートは、実は、1999年11月18日国際フォーラムなんです。そう、UNITED TOURのDVDにも一部収録されているコンサートです。カメラが入っていたからTVにでるのかな?と、思ったらやっぱり放映もされてました。でも、その時は”すごいなぁ〜”って、思ったけど、何故かそれほどのファンにはならなかったんですよ。その後の2000年12月26日(確か・・・)赤坂ブリッツのオールスタンディングのコンサートで一気にファンに傾きまして・・・(苦笑)。「満月空に満月」を読んだ後にはすっかりファンになってました(笑)。蛇足ですが、そのすぐ後に行ったコンサートが7月29日のNHKホール。こちらもTVカメラが入っていて、やっぱり放映されてDVDにも収録されてます。このコンサートも素晴らしかった・・・。これからもどんなコンサートに出会えるか楽しみです。私も本当は金沢方面のコンサートに行ってみたいのですが、どうなることか・・・(汗)。でも、こちらにもいらした際には是非お会いしたいと思います。その日を楽しみにしています。

■ Posted by: soke : 2004年06月28日 08:31

こちらこそ楽しみにしています。北陸もそうですが、関西圏、新潟もぎりぎり日帰り圏なので、そのうちきっと機会があるでしょう。それにしても、ツアーを始めてもらわないことにはねー(笑)


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