■ 2004年04月19日 ■ <本>『ジャック・オーブリーシリーズ』第十巻

映画原作になった巻、かつ邦訳の出ている最後の巻を読み終わりました。これでしばらく読めないと思うとさみしい。映画もDVDが出るまでおあずけだし。最初はスティーブンとジャックがおもしろくて読み進めていましたが、巻を追うごとに、いろいろなことが興味深くなってきました。航海中の描写を読んでいて、このわくわくする感じは前にも経験があるような気がすると思っていたのですが、わかりました。『十五少年漂流記(二年間の休暇)』と『ロビンソン・クルーソー』かもしれない。小学校の図書館で何回も借りて読んだ本でした。子供の頃の私は、そこから手を広げて関連図書へ行くという読み方はしなかったので、それっきりでしたが。ランサムも読んでないし。自分の手の届く範囲のものを使って、目の前の課題をクリアしていく。人よりちょっと長続きする勇気を持って(笑)そして未知の世界へ身をおいて、新しいものを発見する。ジャックとスティーブンはそれぞれ得意分野を担当してるんですね。実際の海戦や、実際の博物学の経過を踏まえて書いてあるのかどうか、そのへんの判断は私にはできませんがとても中年のおじさん達とは思えない二人の行動が楽しかったです。
そしてまた、原作四冊分を読んで、映画がいかに上手に作りこんであるのかがわかりました。この話がこういう形で生かされて、ここは見たいというシーンがあそこに出てくるんだなあと、納得。ヨナの話にしても実に上手に換骨奪胎してあるではありませんか。ますます映画をもう一度見たくなりますね。うーん。US版DVD買っちゃおうかな。日本語版は7月ですか?
10巻あとがきがおもしろかった、翻訳者の方の映画を見た興奮がそのまま伝わってきて。これを読むとタイトルの謎がちゃんと書いてありますね。それと、字幕の難しさについて触れてあるところを読んで、これはLOTRの字幕騒ぎが念頭にあって、そしてまたご自身の経験も踏まえて、予防線を張ってらっしゃるのではないかと・・・ハヤカワ文庫あとがきにネットのいろいろが反映する時代なんだなあなどと思いました。ホーンブロワーも全巻書店に揃っている間に、買っておいたほうがいいかな。
さて!マチュリン先生相変わらず。落ちるしぶつかるし。何がおもしろいって、誰もいないキャビンを見て、とたんに「ドクターだ!」と叫ばれてしまうところが最高です。無人島の山の途中で腰を降ろして、飛べないクイナを眺めて幸福感にひたる情報員なんて、珍しいのでは。

とーこさん、私はやっぱり、ジャックが船をあきらめて島に引き返すのは、ドクターへの気持ちからだと思うよ。ジャックだけじゃなくて、サプライズ号全員の気持ちのように思う。そこまで描く時間がないので、映画では初見の客には不親切かもしれない。原作に忠実であろうとすると、ああいう形にならざるをえないし、両方満足させるのは大変。指輪よりは整合性がとれてると思うけれど。ドクターのために飛び込んじゃうジャックって、どう考えても艦長として失格じゃない?先頭に立って切り込んで行くアラゴルンみたい。でも、そういう描写があるからこそ好きなんだけれど。ラストの騙し騙されも、10巻の最後で、「直前まで違う旗を掲げて、自国の旗を掲げた直後に攻撃するのは正当な攻撃だ」と、ジャックが言うのを見てなるほどと思いました。だから偽の降伏は偽の降伏で、船を取り返してもそれは正当な行為なのかしらん。
初見の客の疑問もうひとつ。ジャックはサプライズ号のことをとてもよく知っている、だから嵐の中を帆を張って進むという描写がある。だけれど悪天候のせいでマストが折れてしまう(そして一人死んでしまう)そこでとっくに任務を逸脱している、という述懐がある。あそこも、映画としてみれば、めまぐるしくて、統一感がないように思った。これも原作を読めばそれぞれがいろんなエピソードを背景に選ばれたシーンだとわかるけれど。ラストシーンと、私情と任務の問題と、この整合性の三点をクリアしていたら、映画としては完璧だったんだけどな。原作を読んでいる途中でも、ガラパゴスの名前が出てくるとチェロの音が聞こえましたです。映画になってよかった。新しい楽しみが増えたから。

投稿者 SOKE : 2004年04月19日 06:28
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