文庫になったので買ってみた。岩井志麻子さんの第二作。『ぼっけえ、きょうてい』しか読んでいないので、読む順番としては、順当。エッセイとか読んでいないので岩井さんのキャラは知らない。小説と違うという噂だけ聞いたことがある。『ぼっけえ、きょうてい』はかなり面白かった記憶があるけれど、読んだのがずいぶん前なので細部は忘れてしまった。『岡山女』は似た路線ではあるけれど、少し明るい感じがした。明治40年代。主人公のタミエは妾をしていたが、旦那の宮一が商売の失敗で無理心中を図り、日本刀で切りつけられて左目を失った。宮一は同じ刀で喉を突いて死んだ。見えなくなった左目にこの世のものでないものが映るようになって、タミエは霊媒師のような仕事をして生活を支えるようになる。タミエの元には様々な依頼者が訪れる。死者を連れて来るものもいれば、生者の恨みをつれてくるものもいる。タミエの霊能力は確かなものではないので、依頼者の話を聞き、両親は身辺調査をし、断定を避けて、依頼者の心にそってヒントを与え、報酬を得る。宮一の影がタミエの身辺に気遣うようにただよっている。娘を生活の糧にしている両親も身勝手でありながら、娘のことは大事にしている。ほんの少しのそういう描写が扱っている題材の暗さを減らしているのかもしれない。
解説に、ホラーというとこの頃ではスプラッターが多くて、泉鏡花のようなあやかしを描く作家は少なかったが、岩井さんはその後継者ではないか?と書いてあった。漫画まで含めればその分野はとっても盛んなんだけど。雨柳堂とか百鬼とかね。
そういう漫画を描く漫画家さんの背景が同世代の私たちには想像がつくように、岩井さんの作品も今の人が書いた作品だなと思うところがある。明治を描き、岡山という地方都市にも陸蒸気やコーヒー液や西洋骨董のお店などハイカラなものが入ってきた時代を描きながらも、人の恨みつらみを描きながらも、その根は意外に浅い。ご本人は実はあんまり執着のない人じゃないか?とちょっと思った。