■ 2004年01月19日 ■ <まんが>山本鈴美香『エースをねらえ!』

子供達がTVドラマをもっと楽しめるように、原作を買ってきました。文庫本の最初から二冊。だって、テレビドラマはそのあたりまでしかやらないだろうなあ、という予測。関東大会ペア決勝くらいかしら。それとも選抜ジュニアの選考のところかしら。そして、ずいぶん久しぶりにエースをねらえ!を再読しました。たぶん、十五年ぶりか二十年ぶりくらい。

読んで思ったんですが、このマンガは10週連載くらいのつもりが、思わぬ人気がでたために、どんどん延びていった作品のようでした。最初のほうは、デビューから『キッスにご用心』くらいまでの、ロマコメの雰囲気が残ってる。途中から長編のスタンスになっていって、精神論みたいなものがでてくるわけですね。
初めの頃の、いかにもなセリフまわしは、今となっては恥ずかしい。子供の頃は、楽しく読んでいたはずなのに。そして、昔は「ほー」とか「なるほど」とか思ったスポーツで精神を高めるみたいな話は、「それはちょっと変じゃないですか?」などとつっこんでしまう。・・・毎週毎週、『ベルばら』と一緒に、すごく楽しみに読んでいたんだけれど。今は昔。原作を読むと、TVドラマがとても上手に作ってあることがよくわかる。子供達はTVのほうが、気に入ったようだ。「なんでハムテルがでてるの?」とか言うんだけれど。

↓ 以前、山本さんの漫画について書いたものを再録しておきます。

<山本鈴美香について>
昔あんなに好きだったのに、あんなに人気があったのに、今あまり語られることのないのはなぜだろう。やはり宗教に走ってしまったのが、まずかったんだろか。昔からエスパーおスミとか自分でいってたから、片鱗はあったのかな。デビュー作はマーガレットの増刊号。「その一言がいえなくて」新人さんなのにその雑誌の中のどの作品よりもおもしろかった。実際、アンケートも一位だったって、後年のエッセイにご自分で書いてた。「バッカスを探せ」とか「キッスにご用心」とか「初恋み〜つけた」。初期の短編や短い連載はどれもが好きだった。タイトルを書いただけで小学生の頃の、自分の部屋から見える近所の風景とか、夏休みや冬休みを思い出してしまう。マーガレットを一日早く買える、タバコ屋さんへ楽しみに買いにいった。和風趣味もあれば、西洋趣味もあり、学園祭を描くのが上手とか、ちょっとエロティックなところもあるのは、後年の作品に全て見られる特徴。他のどの漫画家さんにも似ていないけど、紛れもなく少女漫画家。思えば、最初からずっと、独自の絵柄と話の人だった。今回書くにあたり、作品リストその他探してみたけれど、やはり何もみつからない。

「エースをねらえ!」
最初は10週くらいの予定の連載だったのじゃないかしら。高校の部活でいじめられつつも、やがて認められる岡ひろみ、くらいの話。それが全国版の話になり、やがては世界へはばたく話になっちゃった。私はテニスをしようなんてこれっぽっちも思わなかったけれど、当時楽しみに読んでいた。何がそんなに読者の心をつかんだのかしら。今、思い返しても、何も残っていない。(読み返せばいいんだけど、手元に本がない)確か、それまでのスポーツものにはない、哲学(?)があったのが受けたんだろうか。
宗方仁語録。
「女の成長を妨げるような愛しかたをするな。」
「女であることを超えろ。」
藤堂さんはカッコよくて、尾崎さんも千葉ちゃんも好きだった。大人の宗方コーチは厳しいながらも、ひろみのことを大事にしているところがそれまであまり無いパターンだった。私は山本さんの漫画のロマンティックな部分が好きだった。だから初期短編も好きだった。本筋のテニスももちろんおもしろかったが、今印象に残っているのはひろみをかばって、前に立った藤堂さんのシャツの白さだの、学園祭の時に渡された、優勝メダルだの、手編みのマフラー渡した時の「うれしいよ、ほんとうに」だの、雨の中で、抱き合ってる時の見開きのページだの(お蝶婦人の「雨」「涙?」のシーン)だったりする。
書いてるうちに思い出してきたぞ。だから、妙な精神論で高尚になりすぎてみんなで岡ひろみを育てようなんて話は好きじゃなかった。そうだ、女は男が支えなければならない。という考え方にいたっては、あれれなんじゃこりゃ、と思った。だから、岡ひろみは全然魅力がない。ひろみに自分を重ねて、いろんな格好のいい男の人が支えてくれる状態がうらやましい、という読者心理が当時あったかもしれないが。昔ははっきりわからなかったけど、あの作品の中で一番魅力的なのはお蝶夫人だったかもしれない。父親の支えがあるとはいえ、彼女は自分の足で立っているようにみえる。岡ひろみは一体なんだろう。自分の意志があるんだろうか?周りの力でサポートされて伸びていく素材以上の何かがあったけ?なのになぜ、みんなが岡ひろみに惹かれるのか。、、、謎。

「七つの黄金郷」
エルドラドは3部まであって、未完です。中央公論社から再版されたときに、続きを描くという作者のあとがきがありましたがその後なしのつぶて。いったいロレンツォと紅蜥蜴はどうなってしまったのでしょう。「エースをねらえ!」と同じ言い方をすれば、なぜ、みんなオリビエに惹かれるのか、謎。オリビエは名門のお姫様で、美貌の天使で、背中にエルドラドの刺青がある。岡ひろみよりは派手でわかりやすいけれど。
山本作品の人間関係はひとつのパターンの繰り返し。絶対的な父。娘。父公認のボーイフレンド。ボーイフレンドをサポートする友人。しかし、ここでは宗方仁は二人に分裂して、父(権威)としてのオーリの父親と、激情の部分としてのロレンツォになっている。自分の気持ちだけで動いているロレンツォは、だから、この中で一番魅力的。それにからんでくる紅蜥蜴も、おもしろかった。オーリのボーイフレンドのアーサーは、藤堂さんよりもっとヒモつきの感じで残念ながら、全然かっこよくありません。話はけっこうおもしろかった。続きを読みたい向きには、河惣さんの「サラディナーサ」がおすすめです。パターンとしては似ています。

当時はわからなかったけれど、山本作品の中の、ファザコン的な部分はこれ以後少しずつ明らかになっていきます。エースにもその片鱗はあったけれど、あれはストイックだった。あくまでも、精神的なものみたいなカオをしていた。だんだん父と娘が、精神はもちろん、肉体的にも結ばれることをのぞんでいるような、そんな感じになっていきます。父親からおスミつきをもらいながら手を出せないアーサーって、かわいそう。作者がそれをのぞんでいないんだわ、きっと。
このあとの「ひっくり返ったおもちゃ箱」「H2O前代見聞」では、血はつながっていないけれども、法律上の親子関係にある二人が最後には恋人関係になって終わるという、、あからさまな結末。
「愛の黄金率」は、才能を活かすために、ひろみのような主人公が藤堂さんのような先輩に抱かれなければならない、って、宗方コーチみたいな画家の先生が言うんだ。でも、未完。

それが作者にとってどういう意味があるのかは、私にはわからない。
ましてや、新興宗教の教祖さまになってしまうことも理解の外でした。
(2000年3月29日記す)

■ 追 記 ■ 山本鈴美香のホームページ

文庫の見返しに、2004年からHPが開設されるという告知が載っているんだけれど、まだ何もできていないようです。一応、URL

http://www.cosmo.ne.jp/~sumihime/

■ 追 記 ■ 内田樹教授のエースの話
(http://www.geocities.co.jp/Berkeley/3949/)

内田せんせいは『エースをねらえ!』のファンだそうだ。先生の日記の過去ログを山本鈴美香で検索すると、三件ヒットする。そのうち上からふたつの話がとてもおもしろいのでおすすめ。
The days of pains and regrets: from 1 Jan 200012月15日付け日記
幻のエース第三部の原稿の話(http://village.infoweb.ne.jp/~fwgh5997/diary//tohoho/th0012.html)
もう一個の話は、「学園界」「道場界」「家庭界」にまつわる話。(http://village.infoweb.ne.jp/~fwgh5997/diary//yogiri/yg0106.html)
このページを山本で検索して、読んでみてください。

投稿者 SOKE : 2004年01月19日 20:59
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