十二国記の世界
さあ台輔、戻りましょう
首都/王宮 王(名) 麒麟(字) 宝重


慶東国 瑛州堯天/金波宮 景王(中嶋陽子) 景麒 水禺刀・碧双珠
奏南国    隆洽/清漢宮 宗王(櫨先新) 宗麟(昭彰)
範西国 氾王(呉藍條) 氾麟(梨雪) 蠱蛻衫・鴻溶鏡
柳北国    芝草/芬華宮 劉王(助露峰) 劉麒


雁州国 靖州関弓/玄英宮 延王(小松尚隆) 延麒(馬鹿/名:六太)
巧州国 喜州傲霜/翠篁宮 塙王不在 蓬山に塙果あり
才州国 節州揖寧/長閑宮 采王(中瑾(黄姑)) 采麟(揺籃) 華胥華朶
恭州国 緯州連檣/霜楓宮 供王(珠晶) 供麒


戴極国 瑞州鴻基/白圭宮 泰王(乍驍宗) 泰麒(蒿里)
舜極国 徇王(?)
漣極国    重嶺/雨潦宮 廉王(鴨世卓) 廉麟 呉剛環蛇
芳極国    蒲蘇/鷹隼宮 峯王不在
アニメ十二国記の流れ「月の影 影の海」
あらすじ

一章  1
中嶋陽子の高二の春は憂鬱に始まった。元から赤い髪が染めているのではないかと疑われ、推薦されるがままに委員長となり、クラスで仲間外れになっていた杉本優香に声を掛けては迷惑がられ、幼なじみの浅野郁也にも距離を感じる。
           2 いわれのない噂で放課後の教室に残された陽子。そこへ突然現れた景麒と名乗る金髪の青年が忠誠を誓うと陽子の前に跪く。此処は危険だという景麒により屋上へと向かった陽子を奇怪な巨鳥”蠱雕(コチョウ)”が襲う。
「・・・見つけた。・・・あなただ」「御前を離れず忠誠を誓うと誓約する」「命が惜しくないのですか!?許すとおっしゃい!」
           3 半ば強引に”あちらの世界”に誘われる陽子。興味本位に陽子と行動を共にする杉本と浅野。何かの儀式のように手渡された”水禺刀”で陽子は蠱雕を斬る。既に景麒によって選ばれた陽子らは嵐に紛れて虚海を渡る。
     「もうよろしいか?」「もう出発してもよろしいか、とお訊きした」
二章  1 景麒らと散り散りになった陽子は辿り着いた村で海客と呼ばれ、捕らわれていた杉本に自分の姿が変化していること、日本語だと思っていた村人の言葉が異世界の言葉だと知らされる。
           2 景麒の使令班渠と異世界の森に着いた浅野。奇怪な声を探りに行った班渠に残され、暗く怪しい森に怯える浅野の前に景麒が現れる。これより先は危険だと景麒が告げたとき、頭上から傷ついた班渠が降ってきた。
     「何故こちらへ!?」
           3 浅野が巨大な怪鳥に傷つけられた班渠に目を奪われた間に、景麒は麒麟へと姿を変えていた。力尽きたかのように伏せる麒麟の元へ、もう一頭の麒麟が現れる。二頭の麒麟が角を触れ合わせる様子を見て、浅野はその場を逃げ出した。
三章  1 海客として巧国の県庁に連行される途中、妖魔に襲われた陽子らは当てもなく森の中を彷徨い、一軒の家に辿り着く。疲れと空腹からなりふり構わず他人の家を物色する陽子らの前に、家の主である達姐が帰ってきた。
           2 家を荒らしていた陽子らを見た達姐は咎めるどころか優しく声を掛け、食事と衣服を与えてくれた。こちらに来て初めて優しさに触れた陽子は盗みに入ったことを後悔し、三人に仕事を紹介してくれるという達姐の母親がいる街へと旅立つ。
           3 達姐の母親がいる街に向かう途中、立ち寄った街で慶国の凋落を題材にした芝居を見る陽子。芝居が終わって外に出た陽子は日本にいた頃度々夢に現れた蒼猿の姿を見る。蒼猿は陽子の心の裏側を暴くかのように一人芝居を始めた。
四章  1 誰もが仮面を被っている。周りの人々も、そして陽子自身も。人は陽子が期待するような善人ばかりではない。蒼猿の見せる意味深な幻で不安を抱いたまま、陽子は杉本や浅野と達姐の母親のいる街へと向かう。
           2 信じていた達姐は陽子らを宿に売り飛ばそうとしていた。杉本の方が正しかったという複雑な想い、信じた者に裏切られた怒りから達姐に剣を向ける陽子。そのとき、街を襲った巨大な妖魔が陽子の目の前で達姐を殺してしまう。
           3 街を襲った妖魔を退治した陽子は達姐の呼んだ追っ手から逃れるため川へと逃げる。逃亡の手引きをしてくれたのは数十年前に日本から来た海客松山誠三だった。立場を同じくする松山は頼りになると思われたが、またしても陽子らは痛烈な裏切りに遭うことになる。
五章  1 度重なる裏切りを嘆くだけの陽子に苛立つ杉本の前に金髪の女性が現れる。その女性の言葉に、やはり自分が選ばれし者なのだと舞い上がった杉本は、陽子・浅野の前から姿を消す。
     「貴方を必要としている御方がおられます」
           2 杉本と別れ、あてどなく彷徨う陽子と浅野。空腹に耐えかねて食料を奪おうと襲った旅芸人の親子に掛けられた情けも信用できないほど陽子の心は荒んでいた。襲いくる妖魔の群れに怒りをぶつける陽子はついに力尽きてしまう。
           3 妖魔を討ち、意識を失った陽子が目覚めると、倒れた妖魔の傍らに金髪の人影があった。漸く景麒と出会えたと思う陽子だったが、そこに杉本が現れる。人影を塙麟と呼ぶ杉本は突然陽子に襲いかかってきた。
六章  1 杉本と戦うことが出来ずに傷つき、気を失った陽子はネズミの半獣楽俊に助けられ、介抱される。その夜、またも現れた蒼猿が「また裏切られるぞ」と陽子の不安をあおるが、陽子はもう誰も信じないと心を閉ざしていた。
     「いっそ死んでれば楽だったのに・・・」
     2 誰も信じることが出来なくなった陽子をいたずらに刺激する事無く、楽俊はこれまで陽子が経験してきたことを解き明かし、こちらの世界のことを説明してくれる。しかし心を閉ざしてしまった陽子は楽俊に気を許せずにいた。
     「八方ふさがりだよなぁ」
           3 陽子は楽俊に海客や半獣も差別されない雁の国へ行くよう勧められる。楽俊は何も分からない陽子を雁まで送ってくれるが、陽子はまだ楽俊の親切を信じることが出来ない。なかなか通じ合えないままの二人を突如妖魔が襲う。
七章  1 混乱する心に任せ力を奮い、妖魔を倒した陽子。その心中に傷ついた楽俊にとどめを刺し、追っ手から逃れろという蒼猿の言葉がよぎる。信じるという言葉の意味に気付いた陽子は蒼猿を斬る。蒼猿の正体は水禺刀の鞘だった。
     「どこが違う?誰もお前のことなんか分かっちゃいない」「私のことは私が決める」
     2 陽子は楽俊の生存を確認しに戻るが、楽俊の行方は分からない。途方に暮れる陽子は以前河原で出会った微真・玉葉親子と出会い、仲間の旅芸人一行と行動を共にすることになる。陽気な朱旌達と過ごす内に陽子は明るくなっていった。
     3 旅芸人の仲間として溶け込む内に陽子は自らの心中にある蟠りを告白する気になる。自分の中にある醜さを認めたそのとき、微真に顔つきが変わったと言われる陽子。雁に向かう船の出る港に着いた陽子は改めて楽俊に感謝する。
     「知ってた?あなた、あの時と顔が違うわ」
八章  1 旅芸人の一座の中で最も陽子に厳しく当たり続けていた黄鉄だったが、港に着くと陽子のために雁に向かう船の手配をしてくれた。これまでの礼を述べ、黄鉄が陽子に手渡した朱旌の証は黄鉄の亡くなった妹の物だった。
           2 微真らと別れ、雁に向かう船に乗り込んだ陽子は乗客に難癖付けられている半獣に出会う。半獣を庇って出た戦士を制し、陽子は朱旌の芸で機転を利かせて場を収めた。今の陽子はかつての臆病だった陽子ではない。
     3 陽子の乗った船に居合わせた杉本は巧国の刺客として陽子を襲う。杉本の剣を受け止める陽子の胸中には元の世界に帰ってやり直したいという希望が芽生え始めていた。二人の争う最中、船は巨大な妖魔の襲撃に見舞われる。
     「一度は帰りたいと思った。でも今は違う」
九章  1 巧国から出向した陽子の乗った船が雁国に到着。誰一人知るものの居ないはずの港で陽子の名を呼ぶ声が聞こえる。振り返る陽子の目に映る懐かしい楽俊の姿に、漸く陽子は素直に感謝の気持ちを伝えることが出来たのだった。
     「名前で呼んでくれるのか。嬉しいなぁ」「あとな、陽子。ちょっとは慎みを持て。問題だぞ」
     2 陽子より雁国まで先回りしていた楽俊は陽子のために色々と準備をしてくれていた。戸籍を取るために役所に向かった陽子は雁国と日本の関わりに希望を持つ。同じ頃杉本も雁国入りし、六太と会っていた。
     「天気は天の具合だ。祈ってどうにかなるもんじゃねえ」
     3 街で陽子が見つけた学校では壁落人という陽子より前に流れ着いた海客が居た。陽子が今まで自分の身に起こったことを話すと、言葉に不自由しないのは仙人か妖だと言われるが、楽俊は陽子に衝撃的な事実を告げる。
     「慶東国王 景。・・・陽子は、遠い人だったんだな」「・・・おいらには三歩だ」
十章  1 自分が景王だと知らされ、心乱れる陽子を再び妖魔が襲う。苦戦を強いられる陽子を助けに入った大きな男が凄まじい戦闘力で妖魔を倒す。闘いの最中、男は小松尚隆と名乗り、自らを延王と呼ぶ。陽子は尚隆の泊まる宿屋に行き、話を聞くことにした。
     「小松尚隆。称号で言うと延、延王だ」
           2 延王は陽子の持つ剣を水禺刀だと言い、それを使いこなす陽子は景王に違いないと語る。景王を追ってくる妖魔を街に寄せぬため、陽子を王宮に誘う。陽子に同行を求められた楽俊は遠慮するが、陽子の真意を知り共に関弓山へと向かう。
           3 玄英宮に辿り着くと、尚隆と雁国麒麟六太が陽子に慶国の状況を説明する。陽子は景麒が捕らわれていると聞き、景麒が自分を助けに来てくれなかった理由を知る。更に陽子は国と王と麒麟の関係について明かされ大きな衝撃を受ける。
      十一章 1 王になることを迷う陽子に楊朱衡は延王と延麒の過去を語る。延麒は麒麟の卵果として蝕により戦乱に明け暮れる中性の京都に渡り、権力が生む貧しさを体験した。そのため王を選ぶことに疑問を持ち、麒麟としての役目を果たせずにいた。
     「偉い人は俺達を助けてくれるんじゃないのか・・・?」
           2 王の必要性に悩み、自らの嘆きが起こした砂塵の中へ姿を消した延麒は、瀬戸内海の小国の若き領主小松尚隆の元で目を覚ます。悲劇に見舞われながら明るく優しい小松尚隆に延麒は今までの王とは違った何かを感じ始めていた。
     3 国を滅ぼされ家臣と領民を失った尚隆の前で、尚隆こそが雁の王に相応しいと感じた延麒は額づいて忠誠を誓う。胎果であっても雁国を我が国と感じられる延王と延麒の話を聞き、陽子は今後のことを真剣に考えるのだった。
     「お前に国をやる。・・・天命を以て主上にお迎えする。許すと言え」
十二章 1 延王の元にこれまで妖魔が陽子を襲ったのは塙王によるものだという報せが届いた。自分の行く末に悩む陽子は愚かな人の中で考えたいと街に降りる。壁落人の学校にいた杉本は自分を認めない壁落人を刺し、続いて現れた陽子も手に掛けようとする。
     「あなたのことはずっと嫌いだった」
           2 陽子を刺そうと杉本が手にした水禺刀が輝き、塙王の悪意を映し出す。自分が選ばれた者ではないと思い知らされた杉本は、帰りたいと泣き崩れる。自らの手で陽子を刺そうとした塙王は塙麟に背かれて天命を失った。
     3 全ての事情を知りながら陽子はまだ王になってこの世界に残ることに踏み切れない。「どちらにいても絶対片方が懐かしい」そう悩む陽子に楽俊は「どっちを選んでも良いが、分からないときは自分のやるべき方を選んでおくんだ」と優しく諭す。
     振り向くなよ・・・今、ちょっと障りがあるからな」
終章  1 延王の力を借りて慶を解放した陽子は偽王に捕らわれていた景麒と再会する。封印を解かれた景麒は改めて陽子に言う。「御前を離れず、詔命に背かず、忠誠を誓うと申し上げる」決断を迫られていることを理解する陽子は只一言「許す」と口にした。
     「天命をもって主上にお迎えする」
      2 景王として偽王を討伐した陽子は一人玉座について自らの責任の重さを噛み締める。戦いで失った幾つもの命は自分に繋がっている。元の世界に帰らないことを決意した陽子の悲しみを杉本は理解し、自分は元の世界に帰ることを決める。
     「これが、玉座だって・・・」
     3 自らの物語を始めるべく元の世界に戻った杉本は陽子の母に陽子の消息を告げる。自分が十二国の世界に渡っていた頃、神隠しにあった少年が居るという噂を聞いた杉本はその少年高里要に会う。絵を描いていた高里のそのキャンバスには十二国の地図が描かれていた。
十二国記の世界
<十二国記>
陽子が迷い込んだ世界と倭国(日本)の間には虚海が広がり、蝕と呼ばれる現象でのみ繋がっている。その世界は天帝によって作られ、十二の国があり、古代中国を思わせる文化が存在する。人々は聞き覚えのない言葉で話し、古代中国の伝説に登場する生き物と同じ名前を持つ妖魔が存在する。
<海客>
日本から蝕に巻き込まれて虚海を渡った人間のことで、言葉は通じない。巧国では海客が現れると県正に届けられ、良い海客か悪い海客かを分けられる。悪い海客と判断されると凶事の前触れとされ、幽閉あるいは死刑に処される。雁国は王・麒麟共に胎果で、海客は差別されるどころか技術や知識をもたらすため優遇されている。
<蝕>
十二国の世界と異世界が一時的に通じ合う現象。何かが虚海を渡ると必ず起こるとされ、特に王が渡ると大きな蝕が起き、双方が嵐に見舞われる。蝕のために卵果が異世界へ流れ、胎果となることがある。
<麒麟>
古代中国の伝説の霊獣。天意に従って王を選び、その王以外には決して従わない。人間の姿を取ることが出来、王が道を外れ民意に背くと失道という病にかかる。自らの意志で蝕を起こすことが出来、それを鳴蝕と呼ぶ。
<卵果・胎果>
十二国の世界では生物(動植物)は卵果から生まれる。人間や家畜、穀物は里木、獣や植物は野木に実る。蝕によって異世界へ流された卵果は胎果と呼ばれ、女の腹に辿り着き、父母に似た姿で生まれるが、十二国の世界に還ると元の姿になる。
<水禺刀・碧双珠>
慶国秘蔵の宝重。水禺刀は景王しか扱えず、他の者では鞘から抜くことも出来ない。妖魔を断つ剣としても優れているが、その刃は水鏡となり、持ち主の心を映す幻見せる。
碧双珠は水禺刀の鞘についている珠で、傷を癒す力を持っている。
<女怪・女仙>
女怪は麒麟の生まれる蓬山で同じように生まれる。人と妖魔との間に位置する人妖の女。麒麟の母親代わりのような存在で身命を賭して麒麟を守る。
女仙は、麒麟が成獣になるまで育てられる蓬廬宮で麒麟の世話をする。
<使令>
麒麟の支配下にある妖魔。概ね人語を操り知能も高い。麒麟とその王の身を守ることを使令とし、その意味は召使を指す。
景麒の使令 塙麟の使令
芥瑚(カイコ) 景麒を育て守る女怪 尹灑(イサイ) 塙麟を育て守る女怪
冗祐(ジョウユウ) 液状妖魔。種族名は賓満(ヒンマン) 長右(チョウユウ) 猿型妖魔。芳陵の街で陽子を襲った
驃騎(ヒョウキ) 豹型妖魔。種族名は鉤吾(コウゴ) 饑饑(キキ) 黒犬型妖魔。慶と巧の国境近くの森で陽子を襲った
班渠(ハンキョ) 犬型妖魔。種族名は猗即(イソク) 截忤(セツゴ) 液状妖魔。杉本に憑依し戦闘能力を高めた
重朔(ジュウサク) 狒々(ヒヒ)型妖魔。種族名は雍和(ヨウワ) 蠱雕(コチョウ) 鳥型妖魔。蓬莱と午寮で陽子を襲った
雀胡(ジャッコ) 兎型妖魔。種族名は飛鼠(ヒソ) 峨城(ガジョウ) 鸚鵡型妖魔。塙王の意志を塙麟に告げた
  合踰(ゴウユ) 猪型妖魔。虚海を渡ろうとした陽子を妨害した
  犀渠(サイキョ) 青水牛型妖魔。芳陵の街で陽子を襲った
  馬腹(バフク) 虎型妖魔。河西の里で陽子を襲った
  欽原(キンゲン) 鳥型妖魔。雁に向かう陽子らが乗った船を襲った
アニメ登場人物
中嶋陽子(景王) 夜ごと繰り返される奇妙な夢をきっかけに日常に少しずつ入り始めた亀裂。誰にも嫌われないように無難に過ごそうとしていた普通の女子高生。景麒と呼ばれる青年に誘われるままに虚海を超え、様々な人々に支えられながら自分探しの旅をする。
景麒 陽子の前に突然現れた金髪美青年。その本来の姿は角を持つ獣で十二国の一つである慶国の麒麟。天命により見出した陽子を慶国の王とすべく迎えに来たが、塙王の妨害により陽子と離ればなれになってしまう。
舒覚(予王) 先代の景王。景麒を慕うあまり、その治世は乱れ、ついには景麒を失道させかけ、自ら位を退く。
杉本優香 陽子のクラスメート。陽子と共に異世界へ渡る。元来ファンタジー好きで、その世界こそが自分が求めていたものだと思い込み、塙王の策略に取り込まれ、陽子と対立することになる。
浅野郁也 陽子のクラスメートで幼なじみ。陽子と共に異世界へ渡る。どこか頼りなく調子者で、自分のあり方に迷い続ける陽子と異世界で生き甲斐を見つけたと思いこむ杉本の間で揺れ動く。
塙麟 王命によりやむなく陽子を狙う。本意ではない任に就くその瞳はいtも悲しげである。
塙王 巧国の王で称号は塙。陽子が景王の座に就くのを妨害し、塙麟が失道したため、五十年の治世を終わらせてしまう。
蒼猿 日本においては陽子の夢に現れ、十二国世界では陽子につきまとう。陽子にしか姿は見えず、陽子の心中の不安や焦り、疑いを煽り立て苦しめる。その正体は陽子の持つ水禺刀の鞘が写し出す、陽子の心の闇の部分だった。
達姐 異世界で疲れ果てた陽子らに初めて優しく接してくれた。しかしその優しさは三人を売り飛ばすためで、陽子を人間不信にさせた。
松山誠三 第二次世界大戦中に異世界に来てしまった海客。初めは陽子らの日本語を懐かしむが、着いたばかりの陽子が異世界の言葉を分かると知ると嫉妬に狂う。
微真と玉葉 飢えのために人を襲おうとした陽子を知りながら温かく迎えてくれた旅芸人親子。
黄鉄 無骨だが根は優しい旅芸人。海客が一行に加わることに反対したが、別れ際に陽子に妹の物だった旌券を渡す。
楽俊 行き倒れた陽子を救った鼠の姿をした半獣。差別を初めとした世の中の不条理を達観し、それでも自分の意志を貫く強さを持ち合わせている。人を信じることが出来なくなった陽子を立ち直らせ、真の強さを導き出した。
壁落人 雁国で子供達に学問を教えている海客。東大安田講堂に立てこもっていた学生が異世界に渡り、新たな人生を歩んでいた。
小松尚隆(延王) 瀬戸内の小さな領地と臣民を失い、絶望の底に沈んだところを延麒に見出され、雁国王となる。新たな国を背負い、雁国を十二国中で最も豊かで自由な気風の国に育て上げた。明るく強く優しい、理想の王。
六太(延麒) 十二国と日本を自由に行き来できる雁国の麒麟。生まれる前に蝕により日本へと流された。貧農の子に育ち、権力の無意味さを痛感していたが、小松尚隆との出会いで務めに目覚める。