ノバ53S
Nova 53S
*美しく、強く、そして短命に終わったノバ53S*
-* Nova 53S *-
78年の、GCシリーズチャンオンには星野選手がなりました。彼にとっては、初めてのシリーズチャンピオンだったと思いますが、同時に、日本製マシンにとっても、はじめてのことだったと思います。
シャシー設計を担当したのは、ノバ・エンジニアリングの宮坂宏氏、ボデーを由良拓也ひきいるムーン・クラフトが担当していました。当時の日本レース界では、ムーンクラフト製のカウルでないと勝てないような雰囲気がありました。マーチのカウルはほとんど、ムーンクラフトがモディファイしたものが使われていましたし、前年には、紫電改というクローズドボデーのGCマシンのカウルも担当していました。(紫電改、美しいマシンだったけどかてなかったなー。)
当時のGCといえば、シャシーはマーチの全盛期であり、また、エンジンはロータリーエンジンが台頭し、主流を占めようとしていたときでした。この年、ロータリーエンジンは2位から5位までを占めました。そんな中、国産シャシーにBMW・M12と言う組み合わせでGCに打って出たのです。
その特徴は低いボデーとワイドトレッドにありました。フロントホイールアーチからリヤウイングにかけて伸びた一直線のウェッジラインが特徴的でした。ボデー上面にタイヤの部分がパワーバルジのようにぷっくりと膨らんでいて、シャープさと、力強さがあり、ふと、ホンダS800を連想しました(古いですね(^^;; )。フロントオーバーハングも短く、カッコよかったです。ダウンフォースが重視され、フロントにチンスポイラ―などが装着され、オーバーハングが長くなる傾向の中、短いフロントカウルは迫力がありました。フロントオーバーハングは短いほうがかっこいいですよね(そう思いの、わたしだけ?)。ボデーサイドはシャシーが露出され、そのため、F/タイヤ直後で大きく凹され、R/タイヤ直前に配置されたラジエターまでテーパーを形成していて、また、黒にペイントされラジエターを目立たせないよう、デザインされていました。白と赤と黒をペイントされたボデーはシンプルでいて、カッコよかったです。
シャシーはタイヤの性能を最大限に引き出しことを目的にデザインされたそうです。随所にフォーミュラー・カー・ライクな作りが見うけられました。トレッドは1480mmあり、ボデー全幅は1970mmもありました。重量物は中央に収められ、また、燃料タンクはシート背後に置かれ、燃料の残量による重量バランスの変化を抑えるようになっていました。 星野選手から『フォーミュラー的な感覚のマシンにしてくれ』との要求どうり、コーナーで速いマシンに仕上がっていたそうです。
ノバ53Sは、デビュー戦でいきなり優勝しました。この年、ノバに乗る星野選手は、5戦中、4回のポールポジション(うち3回がNOVA53S)、3回の優勝(うち2回がNOVA53S)で、チャンピオンとなりました。(星野選手は、初戦のみマーチで参加、優勝)
しかし、翌年、GCシリーズは単座のスポーツカーの参加が認められました。F2ベースのGCマシンが多く参加してきました。いくらフォーミュラー・カー・ライクなNOVA53Sといえども、対等に戦うことは難しかったのでしょう。単座に改造した53Sで参加しましたが、NOVA53Sが活躍できたのは78年の1年のみでした。
以前、ブリジストンの開発の人の話を聞く機会があり、その時、『由良拓也さんには苦労させられました。ボデーが先にあり、このボデーに入るタイヤを開発してくれ、と、注文を付けられました。』と、話されてました。きっと、NOVA53Sのことを言ってるのかな、と思ったものでした。
-* Nova 53S *-
ホイールベース | 2400mm |
トレッド(フロント) | 1480mm |
トレッド(リヤ) | 1480mm |
全長 | 4260mm |
全幅 | 1970mm |
全高 | 940mm |
総重量 | 600kg |
ホイール(フロント) | 10J−13 |
ホイール(リヤ) | 15J−13 |
タイヤ(フロント) | 9.0/20.0−13 |
タイヤ(リヤ) | 12.0/25.0−13 |
エンジン | ケン松浦チューンドBMW・M12/7 |
エンジン型式 | 直列4気筒 |
バルブ型式 | DOHC 4バルブ |
総排気量 | 1991cc |
ボアxストローク | 89 x 80mm |
圧縮比 | 11.0 |
ギヤボックス | ヒューランドFGA |
ブレーキ | ロッキード |
'78富士グランドチャンピオンシリーズ
ドライバー | マシン | チーム | 第1戦 | 第2戦 | 第3戦 | 第4戦 | 第5戦 | 総得点 | |
1 | 星野一義 | マーチ74S/BMW ノバ53S/BMW | ヒーローズ | 1位 | 1位 | NC | 1位 | R | 27 |
2 | 片山義美 | マーチ75S/RE13B | カタヤマ・レーシング | NC | 4位 | 2位 | 2位 | 1位 | 24 |
3 | 従野孝司 | マーチ76S/RE13B | 木ノ実レーシング | 6位 | 10位 | 1位 | R | 2位 | 16 |
4 | 寺田陽次郎 | シェブロンB36/RE13B | マツダオート東京 | 3位 | 3位 | 3位 | R | 3位 | 16 |
5 | 高原敬武 | 紫電改/RE13B マーチ/RE13B | タカハラレーシング | NC | 5位 | 5位 | 3位 | 4位 | 11 |
6 | 藤田直広 | シェブロンB36/BMW | ニッコーレーシング | 2位 | R | 6位 | 9位 | 5位 | 9 |
7 | 鮒子田寛 | シェブロンB36/BMW | デサントレーシング | 10位 | 2位 | 9位 | 7位 | R | 6 |
7 | 桑島正美 | マーチ74S/BMW | サカイレーシング | 4位 | 6位 | NC | 5位 | 8位 | 6 |
9 | 生沢徹 | GRD・S74/BMW | TETSU INTERNATIONAL | 14位 | R | 7位 | 4位 | ― | 3 |
9 | 長谷見昌弘 | アルピーヌA441/ルノーV6 | ハラダレーシング | NC | NC | 4位 | 10位 | 10位 | 3 |
11 | 佐藤文康 | マーチ74S/BMW | ビクトリーサークルクラブ | 5位 | 9位 | NC | 12位 | 13位 | 2 |
12 | 漆原徳光 | シェブロンB36/BMW | ウルシバラレーシング | NC | 7位 | 8位 | 6位 | R | 1 |
12 | ニコ・ニコル | マーチ74S/BMW GRD・S74/BMW | ニコルレーシング | 7位 | R | NC | ― | 6位 | 1 |