ロータス 78
Lotus 78
*空力の革命児・ロータス78*
-* Lotus78 開発テスト風景 *-
1977年、ロータスが送り出した革命的マシンがこの78です。76年に、テスト風景がスクープされた時には、当初、ボデーの幅が広く、フロントとリアのタイヤの間を覆っていたため、フェラーリ風の整流効果を狙ったものという見方がされていましたが、そのグランドエフェクト効果が認められるや、他のチームに、また、レース界に多大の影響を与えることになりました。その結果、F1マシンが全て同じような形になってしまいました。
このグランドエフェクト効果は、ウイング形状に整形されたボデーの下側を流れる空気のベンチュリー効果で、ダウンフォースを得ようというものです。ボデー下に流れ込んだ空気は、ウイング形状によって、路面との幅が狭くなるところで流速が速くなります。流速が速くなると、負圧が発生しダウンフォースが得られるというわけです。このアイデアは、ピーター・ライトとトニー・ラッドのアイデアだと言われています。整流板を付けたウイング形状のボデーで実験をしていたところ、剛性不足のボデーが撓み、整流板が路面に接地した途端、ダウンフォースが急増したことからグランドエフェクト効果を発見したと言われています。ボデーサイドの形状がウイング形状をしていたことから、当時はウイングカーと呼ばれていました。
ベンチュリー効果
中央部の径が細くなったところでは、流速が速くなり負圧が発生する。
グランドエフェクト効果
路面との距離が小さくなっている所では流速が速くなる。路面を鏡面と考え、反転して写すと、ベンチュリー効果と同じことが起こっていることが判る。
1970年にウイング形状ボデーで現れたマーチ701
サイドの空気がボデー下面に流れ込み、効果はほとんどなかった。
シャシーデザインにはトニー・サウスゲート、コーリン・チャップマン、ナイジェル・ベネットの3人があたったといいます。ダウンフォースを有効に発生させるため、多くの空気をボデー下面に流すため、シャシーフレームは、極端に細く設計されていました。フロントトレッドも、1650mmと77の1429mmから大きく広げられていました。フロントサスペンションは、ロッキングアームタイプのダブルウィッシュボーンで空気の流れを邪魔しないように作られていました。また、ボデーサイドの下端には空気がボデー下面に回り込まないように、ブラシで遮断していましたが、後にプレートタイプに変更されました。
リアサスペンションは、ツインキャリパーのインボードブレーキに設けられたサスペンションピックアップに取り付けられ、ラジアスロッドはアッパー一本にされています。ボデーをウイング形状に整形しているため、ロワー側のラジアスロッドの適正な取り付け位置が得られなかったためでしょう。だた、ダンパーがアウトボードであったり、リアブレーキがインボードであったり、リア周りの空気の流れに対する配慮は不十分でしたが、他車に対するアドバンテージは十分でした。
そのあたりを考慮してでしょう、シーズン途中からは、サイドボデー後端が跳ね上げられ、リアサスの前で空気を上方に逃がすように変更されています。
この年、チャンピオンになったのは、フェラーリに乗るニキ・ラウダ(3勝)でしたが、最も注目を集めたのはロータスだったと言ってもいいかもしれません。78は、マリオ・アンドレッティとグンナー・ニルソンのドライブにより、5勝を上げました。が、エンジントラブル等でのリタイアが多く、ドライバーズポイントでマリオが3位(4勝)、グンナーが8位(1勝)でした。
ロータス78は、翌年(1978年)、ロータスに帰ってきたロニー・ピーターソンがイタリアGPで、事故により他界した時に乗っていたマシンでもあります。ロニーがロータスに帰ってくる時の条件として、『マリオをチャンピオンにするため、マリオの後ろを走ること』があったそうです。『世界一速い男』と呼ばれたロニーの最後に乗ったマシンとなってしまいました。事故にあったイタリアGPは、その年の主力マシン・79がエンジンブローを起こし、スペアマシンの78で出走しました。
また、スパークプラグにはNGK製を使用したことでも話題になりました。
-* Lotus 78 *-
(with NGK)
重量 | 575kg |
全長 | 4534mm |
全高 | 920mm |
最低地上高 | 75mm |
ホイールベース | 2743mm |
トレッド(フロント) | 1650mm |
トレッド(リア) | 1620mm |
ホイール(フロント) | 13x10or13x11 |
ホイール(リア) | 13x18、19 |
タイヤ(フロント) | 9.2/20.00X13 |
タイヤ(リア) | 16.2/26.00X13 |
エンジン | フォード・コスワースDFV |
エンジン型式 | 90°V型8気筒 |
バルブ型式 | DOHC 4バルブ |
総排気量 | 2993cc |
ボアxストローク | 85.6x64.8mm |
圧縮比 | 11.1 |
点火装置 | ルーカス |
燃料供給装置 | ルーカス間接噴射 |
最高出力 | 490PS |
ギア・ボックス | ヒューランドFG400 |
ブレーキ | ロッキード・ロータス |