著書紹介

 著書名 :「しつけ」という名の幼・童・青 教育 − 一緒に生きて少し教えてあげたこと −

 著者   :田中 庸二郎 

 紹介   :

  子供を産み、育てることは、種の継続からも、生物の義務と言えます。

が、現在の日本では、その当然の義務をはたすことが、なんと大変なことでしょう。

きっと文化や社会の歪んだ発達の結末が原因となって、子供を産み、育てることが容易いことではなくなっているのだ

と思います。

「少子化問題」 或いは 「子育て中の母親のノイローゼ事件」 「子供好き故に子供を作らない夫婦の存在」 「幼児虐待」

「十代の凶行」等々が連日新聞テレビで報道されています。

 しかし、ちょっと歴史を振り返ってみても、長く続いた戦国時代から 争いの平定された徳川政権、それが倒幕されて生まれた

明治政府、数々の戦勝後、最後の敗戦から50年以上経っても自らを否定し続けている現代へと、安心安全な時代は、何年も

ないことが分かります。

その中で先人の築いた文明、文化を享受し、ねじ曲げないで次の世代へ引き継いでいくことが、生まれてきた人間の役目なの

ではないでしょうか。 

そうは言っても、親子間の殺人が、長い年月の葛藤の揚げ句ではなくて、「切れた」 結末の虐待死であったり、いじめ遊びの延

長のリンチ殺人が連日報道されると、そういう社会に取り囲まれた環境での 「親」 という役割は大変迷いの多い仕事だと思い

ます。 この本が、少しでも 「その問題をどのように捉えて、 どう判断するか」 の参考になれば幸いです。

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  プロローグ

   目次

   1.五百円玉

   2.子供嫌い

   3.わっしょい

   4.鬼ごっこゴッコ

   5.冷蔵庫

   6.お茶の水女子小学校

   7.性教育

   8.サンタからの手紙

   9.やじ

  10.水泳教室

  11.ある範囲の覚悟

  12.時間がかさなっているだけ

  13.辰巳中学

  14.バレーボール

  15.もう1人の友達を創ること

  16.短期外国留学

  17.再び茶髪

  18.足の裏

  19.推薦

  20.高校受験

  21.悩み

  22.公民

  23.「戦争論」と「おじいちゃん戦争のことを教えて」とおじいちゃん

  エピローグ

 

 プロローグ

 娘は現在中学三年生−高校受験の真っ盛り。

 夏休みだというのに、毎日学習塾に通っている。

「分かるまで帰さないスタイル」らしく一日12時間位缶詰状態になって勉強している。

自分で行きたくて行っているのだから、誰に文句を言えるでもなく、黙々と与えられた課題を消化している様が目に浮かぶ。

髪を少し染めているのが原因で、短期外国留学の選抜に漏れた。本人は大変不満で 「ようく分かったよ。」 と言ってすごんで

せた。

暇があると、テレビの前で踊っている。 わたしは45歳で娘は15歳 −30の時の子供だ。

きっともう何年か経つと、今までの出来事が時の流れの波間に漂う泡のように、何もなかったこととして記憶の彼方に葬り去られて

まうだろう。 それでいい。 正しい姿だ。

終わったことなんて、いつまでもみじめったらしくジクジク思い出すべきじゃない。良い事も そうでない事も。

でも今は、はっきりと憶えている。頭の中、目の裏側、手の平、胸の内側にそのまま残っている。

「きっと紙にアウトプットして見せてやったら、今悩んでいる人喜ぶだろうな」 と思って筆を執った。

幼児虐待が流行る昨今、育児に悩んでいる方の応援となれば幸いである。

できれば娘には読ませたくない。  

 

       8.サンタからの手紙   − 一部抜粋 −

  サンタクロースの存在 −存在するか否かは別として− 程、父親を悩ませるものはない。

子供が小さい時に 「クリスマスはキリスト教のお祭りで、日本は仏教か神教なのだから、他国の宗教の行事だけを真似るのは

ナンセンスであり、無意味だ。」 とばかり、クリスマスやらプレゼントの習慣を一切排除する態度は、はたしてよいのかどうか…

確かに筋は通っているが。いまだにクリスマスの時にケーキを買って、その時だけキリストの誕生を祝う習慣や感覚に疑問を持

ち続けてはいるのだが。…

「子供にはサンタクロースがいると思っていて欲しい」  −では何時まで−

       − 間 −

 そう言えば、ここ何年か「サンタさんにお手紙を書くんだ」と言って、枕元に 「ねえねえサンタさん…」で始まるサンタ宛の手紙

が置いてあったっけ。わたしは、そっと自分の部屋に持って帰り、「サンタへの手紙」をこっそり読んだものだった。

今年はサンタから返事を書いてやろう。

「サンタなどいるはずもないと思い始めている娘の心に、パンチを打ち込んでやろう」 という思いやりだか、いたずらだか分から

い気持ちを込めて、英語の辞書を引きながら簡単な英文で mr.santaclaus から dear megumi への手紙を添えてプレゼ

ントを置いた。めぐみは、サンタからの手紙を見つけると、プレゼント以上に大喜びして

「本当にサンタさんからお返事が来た。 お父さん英語なんだけど、読める? 読めるんなら読んで」と言って私に手紙を渡した。

         「   ディアめぐみ  お手紙ありがとう。

          わたしはサンタクロースです。今日もたくさんの子供達にプレゼントを配っています。

          楽しい、希望に満ちた明日でありますように。      サンタクロース        」

 

 めぐみは、サンタクロースは本当にいるんだという事実に感動して、友達に電話をかけまくっていた。

私は、素直に育った娘を見て、サンタクロースに感謝していた。

  翌日、会社から帰ると、妻が

「めぐみが、サンタさんの手紙、学校に持ってっちゃったわよ。」と言った。

「な、なんで」

「本当にサンタさんから手紙が来た証拠を友達に見せるんだって」

「おいおい。もう小学4年生だぞ。」

「そんなこと言ったって、めぐみはそう思ったんだからしょうがないでしょう」

− 何てことだ。そこまでは考えていなかった。マイッタ。

 

    −またクリスマスがやって来る−

学校の友達とサンタクロースの話しになって、1つ1つ検証していく内に、どうやら 「サンタクロースなんて嘘っぱち」 で、大方

父親がサンタ役を偽装してプレゼントを買ってくるのだという結論に達したようだ。

どうりで、プレゼントの包み紙は、フィンランドのものではなくて、大概、門前仲町のアカクラだったり、銀座の金太郎のものだし、

よく考えるとサンタの手紙もおかしいということだった。

「変だと思った。…  ウソついてたんでしょう。」

娘は信頼していた父親が自分をだまし続けた事実と、すっかりだまされていた自分の存在が我慢ならないようで、寂しそうに鋭

目をこちらに向けた。…

「ジョージ・ファーマンていうアメリカのヘビー級 −体重無制限の、要するに一番強いボクシングのチャンピオンだった人がさ、

「私はリングの中で神を見た」と言って、あっさり引退してキリスト教の牧師さんになっちゃったんだよ。」

「それで…」

「黒人の貧しい少年達に、悪いことはしてはいけないよ。とか人には親切にしてあげなさいって協会で説いていたんだ。」

「ふ−ん」

「新しい協会が必要になって、寄付だけじゃどうしても出来ないので、もう1度ボクシングを始めてさ、スポーツの世界じゃ老人扱

される45歳でまたヘビー級の世界チャンピオンになっちゃったんだ。すごい話だろ。」

「へえ−」

「試合の前になると、お前のようなヘボは殺してやると言って悪態をつくんだって。きっと人のいい牧師じゃ試合に勝てないから、

自分を野生に戻すんだと思うよ。彼と対戦した若いボクサーは、「奴は只の老人じゃない。」ってコメントしたんだ。

大人だってボクシングの試合中に 「 神 」 を見たんだ。お父さんは、本当に見たと思うよ。

サンタクロースは、セント・ニコラスという子供の守り神なんだよ。 だから めぐみ がサンタクロースは、いると思えば、絶対にい

るし、いつか見ることが出来るかもしれない。 信じなければいないんだ。」

「どっち?」

「いる−。」

「サンタクロースは、本当はいるんだよ。」 

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