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スッポンスッポン |
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6月22日 日曜日 この日覚子は午前中に美容院に行く予定で、澪音の面倒を俺がみる約束やってん。覚子は洗濯も一通り終って、トイレから出てくるなり「水が流れへん。どないしよ」トイレを見てみると水が便器から溢れそうや。 「何か変なもの流したか」 「ううん、なにも」 「おむつの浸け置きの水を流すときライナーが入ってたんとちがう」 「ううん、おむつは一枚づつ搾って洗濯機に入れるから確認してるもん」 何が詰まってるかは分からへんけど、このままやったらトイレにも行かれへんからとりあえず水道屋さんに電話してん。でも水道屋さんは「今日は日曜日ですからね、行ける職人がいないんですよ。明日には行けると思いますけど。とりあえずあたってみますわ」「お願いします」とは言ったものの、おいおい明日までトイレに行かれへんやんか。そんな心境や。 覚子はこんな状況やのに「あたしこのまま美容院行ってもいいかな」やて。 この言葉に少し腹が立ったので「行ってもいいけど、もうちょっと待っときや」と言い返してん。 澪音も泣き出して、また俺もこんな時にかぎってトイレに行きたくなるもんや。 「トイレ行きたいから実家に行ってくるわ」 「1階のトイレがあるやん」 そやそや、マンションの1階のエントランスロビーにトイレがあったんや。それは名案や。1階のトイレでほっと一息。部屋に戻って、「水道屋から電話あったか」 「ううん、まだない。TO-TOのメンテナンスサービスに電話したらラバーカップで吸出してみてわ?っていわれたけど」 「ラバーカップ? スッポンスッポンするやつやな。でも無いもんな」 「1階のトイレの用具入れの中にないかな」 「あるかもしれんな。トイレ以外でも排水がつまったら必要やもんな。多分あるわ。もしなかったらそのまま買いに走るわ。もうすぐ10時になるから市場もスーパーも開くやろ」 ところが1階のトイレの用具入れにはスッポンスッポンは見当たれへん。高い管理費取ってんのに、スッポンスッポンの一つも置いてへんのか。そう心で叫びながら自転車にまたがって市場に向かってん。荒物屋さんのおばさんに「トイレが詰まってん、ゴムで出来たスッポンスッポンするやつ置いてる」と聞くと、店のおばさんは「あるよ、こっちが普通の、それでこっちが洋式便所用」 見比べてみるとゴムのところの形が違う。値段も普通のは600円やのに洋式用は1200円や。うちとこのトイレは洋式やし、値段が高い分よく吸い付きそうやもんな。そういうことで1200円の方を買ってまた自転車で我が家に急いで向かってん。 家に着くと覚子が「水道屋さんやっぱり来られへんて、電話掛かってきたわ」 そうか自分で何とかせなあかんか。早速スッポンスッポンを手に持って水詰まりと格闘するがどうにもうまくいかへん。なにしろ便器の排水口は三角に近い丸やのに、スッポンスッポンの方は真ん丸やから、ピタッと吸い付けへん。しかし悪戦苦闘のうちにスッポンスッポンの極意を見抜いてん。 まず便器の手前側からスッポンスッポンを押し当てて、そのまま奥底方へゆっくりと滑らせながら目一杯突っ込むねん。そして、ほんの少しだけ速く引っぱるねん。あんまり引っぱりすぎると水が飛び散ってしまってトイレがビチョビチョになってしまうねん。 この極意を身につけて、洗面器できれいな水を流してはスッポンスッポン。また洗面器できれいな水を流してはスッポンスッポン。この作業を20分ほど繰り返していると水の流れも良くなってきて、水もきれいになってきてん。でもまだ完全に開通してない感じやって、ふっと便器底の排水口をみると何か白いものが見えてきてん。さっきまで何もなかったのに、何やろう。少しためらったものの便器に手を突っ込んでそれを引っぱり出してみると、なんと澪音の布おむつやんか。 「覚子!おむつ流してるやんか。そらこんなん流してたら詰まりもするわ」 「えー、何でやろう。ちゃんと一枚づつ洗濯機にいれて確認してから流したのに」 「うちとこだけで詰まってたからからよかったものの、これが本管で詰まってたら大変なことになってたで」 シャワーで汗を流しながら、毎日毎日何十枚ものおむつを洗ってたらこんなこともあるかなって思いつつ、あかんあかんこんなことは今日一日で十分や今度から気を付けてもらわな。 結局この日覚子はこの騒動がおさまってから美容院に出かけていき、パーマをあててカットしてその上髪の毛を染めて帰ってきた。でも俺に気を使ってくれて、お寿司とロング缶のビールを2本買ってきてくれた。 皆さんもおむつの浸け置きの水を捨てるときには気を付けてや。 |
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