THE LONGEST DAY 第三部      


  
覚子が手術室に入って行ったあと看護婦詰所横の待合室でまつことにした。ここに
いれば産まれた子供を見せてくれるらしい。
覚子をおくりだして、ほっとしたのか喉が乾いていたことに気付き自動販売機で、
飲み物を買った。義母にもすすめるが義母はノドに通らないと遠慮した。
時計を見ると11時50分、覚子が手術室に入っていってからまだ5分しかたって
いない。なんやまだ5分しかたってないんか。5分が倍の10分のような気がする
わ。もう15分ほどたったやろうと思って時計を見ると、まだ11時52分。
あまりにも俺が時計をちらちらみるもんやから、義母も「今日は時間がたつのが、
遅いでしょう?」と聞いてくる。ほんまになんか1分が10分のようなきがするわ。
また義母が「みーちゃんの名前もう決めてるんでしょう。そろそろ教えてくれても
いいんじゃない」と尋ねてくる。母も「覚子ちゃんも洋文もぜんぜん教えてくれな
いのよ。」と今すぐ発表しなさいとばかりにきいてくる。
でもあかん覚子と二人で決めた名前やから俺だけが先に言うわけにわいかへん。
「赤ちゃんと覚子が帰ってきたら教えてあげます。」とその場は逃げた。
その後も長い時間が過ぎていった。
12時30分頃、覚子が手術室に入っていってから45分たったとき、待合室の外
から「扇舍さんのご家族のいらっしゃいますか」と声が聞こえた。
3人が3人とも「はい」と言って立ち上がり、外に出ようとしたとき、緑色の手術
服を着て、両手で毛布やら紙の様なものにくるまれた赤ちゃんを抱い看護婦さんが
入って来た。「元気な女の子ですよ。」そう聞いたとき、「えっ、女の子!そうか
みーちゃんは女の子やったんや」それが正直な感想やった。
元気であれば本当にどっちでもよかった。でも覚子や義母が男の子のような気がす
る。と言い続けていたから、俺もてっきり男の子なんやろうなって思ってた。
看護婦さんが「だっこしますか」って聞いてくれたから、間髪をいれずに「はいっ」
って答えた。だって俺の子やもんな、俺が一番に抱いてあげな。
おそるおそる看護婦さんの手からみーちゃんを抱きとった。
難かしげな表情をしながら眠っているみーちゃんの顔を初めてみた。
俺が想像してたんと違っていた。自分の産まれた直後の写真を見ていたから、きっと
しわくちゃなお猿さんの様な顔やろなって思っていたのに、しわもなくきれいな顔や。
かっわいいな、こんなんが覚子の中に入ってたんか。そう思いながら、腫物に触るよ
うな感じでみーちゃんを抱いていた。でも重要な事を思い出した。ビデオを撮らなあ
かんねや。ビデオで成長記録を撮るのも一つの理由やけど、手術後動けない覚子に、
みーちゃんの姿を見せてやりたかったからや。慌てて義母にみーちゃんをそーっと、
そーっと手渡す。ビデオカメラのファインダー越しに、みーちゃんを見つめる。
そうや、俺も覚子もこの時を待ってたんや。
2〜3分した頃だろうか、看護婦さんが再びやってきて、「赤ちゃんを洗ってきます
ので、渡して頂けますか。」と言う。義母も承知してみーちゃんを手渡す。
「きれいになったら、また持って来ますからね」と言い残して、消えていった。
え、覚子はどうしてるん。無事やと思うけど、ほんまに無事なんやろか。肝心な事を
聞きそびれてしまった。今度みーちゃんを持って来てくれた時に聞かなあかんわ。
義母もそれを心配らしく「覚子は元気やろか」とつぶやく。



覚子と澪音は18日に退院予定


 
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