THE LONGEST DAY 第二部      


  
病室から出ていく覚子に「どこ行くんや」と尋ねると「術前の処置やから、すぐ戻
るから、部屋で待ってて。」「その点滴はなんやねん。」「血管確保やから生理食
塩水ちゃうかな」「ほんまに、部屋に戻ってくるねんな。」「戻ってくるよ」
覚子がそう言うんやから部屋で待つことにした。早足で来たせいか汗があふれてく
る。覚子の言葉通りすぐに部屋に帰ってきた。
「これ、覚子あてにきてた励ましのメールや。今、時間あんねんやったら、目を通
しときや。」とプリントアウトしたメールの入った封筒を手渡した。「いっぱいあ
るな。」うれしそうに覚子がそれに目を通しているのを見て、これでまず一つ肩の
荷が降りた気がした。
そうこうしているうちに、義母もかけつけ4人で話をするが、覚子以外はなんとな
く落ち着かない。まな板の上の鯉なのか、ただ鈍感なのか、どちらにしてもたいし
たもんや。
沈黙が不安になるので何かはなそうとする。
洋:「なんで時間早くなってんやろうな。」
覚:「病院の都合やで、きっと。」
洋:「病院の都合だけでころころ時間変えられたらたまらんな。でもみーちゃんに
   少しでも早くあえるから、まあええやんな。遅くなるよりええで。」
と言うと皆うなずく。
もし遅くなったとしても、その時はその時で「慌てて手術されるより、ゆっくり慎
重にしてもらうため、すこしぐらい遅れたほうがええで。」とか言うんやろな。
覚子が小声で「痛くなかったらいいのにな」っていうから不安がらせては、いけな
いと思い、「大丈夫や、2日前帝王切開した人もそんなに痛がってなかってんやろ
それに種村さんの奥さんも、卵巣嚢腫の手術より楽やったてメールに書いてくれて
たやん。」そう言いながらも心のなかで「気休めしか言われへんでご免な。おなか
切るのに痛くないはずないもんな、怖くないはずないもんな、でも覚子が納得して
決めた方法やし、覚子にとってもみーちゃんにとってもこれがベストなんやから、
どうにか頑張ってな」そう思うことしか出来なかった。
部屋のスピーカーから「扇舍さん診察室のほうにきてください」という声。
いよいよか、覚子と一緒に皆で診察室の方に歩いてゆき、俺と義母と母は、そば
の待合室で待つことにした。20分ぐらいしてからやろうか、覚子がでてきた、
俺一人で、覚子に近づき「これからか」「ここからストレッチゃーに乗って手術室
に行くねんて。」「もうすぐみーちゃんに会えるから頑張らなあかんで、お母さん
になるねんからな」そんな言葉しか掛けてやれない。
覚子はストレッチゃーにのって、同じ階にある中央手術室に向かった、手術室の入
り口まで付き添って、さとこに「がんばりや」としか声を掛けてあげられなかった。
手術室の扉の向こうに消えていく覚子を見送ったのは、午前11時45分であった。
   


 
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